スペイン旅行(1.マドリッド−2)プラド美術館

6月22日(月)プラド美術館

ヨーロッパの三大美術館。パリのルーブル、イタリアのウフィツィ、そしてスペインはマドリードのプラド。今回プラド美術館が実現、残るはルーブルとなりました。


プラタナスの巨木の続く並木道を越えると大きな美術館の建物が見えてきました。丁度、バーゼル美術館から貸し出されたピカソの作品10点が展示してある期間に当たっていました。
プラド美術館スペイン王室の美術コレクション約300点を中心に、1819年に開館。現在では3万点以上の絵画や彫刻を所蔵するとか。日本語のパンフレットもありました。チケットの青いドレスの婦人の絵は、スペインのロマン主義に分類される画家マドラーソの「ビルチェス伯爵夫人」の一部。チケットの左下端黒い部分が切れているのは、ガイドブック付のチケットだった為。男性陣二人がチケットを求める時に、厚さ3センチ以上もある重たいガイドブック(日本語版)を買うことに決めました。このガイドブックの写真で印象に残った絵を思い出してみます。

まず、「プラド美術館の要」と言われるディエゴ・ベラスケス(1599-1660)

宮廷画家として王族の肖像画が多いのですが、それでも宗教画や神話を描いたものもあり、どれも人間的?でとても美しい。「写実主義の第一人者」と言われているそうですが、市井の人や小人の道化師たちもあり、王族を描くのと同じレベルで対象に迫っているのが分ります。
そしてあの有名な「ラス・メニーナス(女官たち)」(1656年・318x276cm)がありました。
真ん中の少女が王女マルガリータ、両側に女官たち。小人と犬を踏みつけている子どもの道化師。中央の四角い鏡の中には王女を見守る国王夫妻。逆光のシルエットになっているのは”配室長のホセ・ニエト”とか。そして、左側、大きなキャンバスの前に立ち、絵筆を握っているのがベラスケス本人。王家とそれに仕える人々が同じ画面に対等に描かれている”不思議な”絵、というより、ベラスケスのリベラルな意志を感じます。この王女マルガリータが陶器のお人形になってあちこちのお店で土産物として売られていました。

圧巻だったのが、フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)プラド美術館は、現在約150作の絵画、500作の素描、版画シリーズを収蔵し、質量ともに世界最大のゴヤ・コレクションを誇っている。因みに、ベラスケスについては、全作品約120点と言われる中50点がプラド美術館に帰属。
 
ゴヤと言えば、知っている作品は「裸のマハ」と「着衣のマハ」や、銃殺寸前の市民を描いた作品でした。これは、解説によると、「1808年5月3日の銃殺」(1814年・268x347cm)という絵です。
この絵には、もう一つセットになっている同じサイズの絵があります。1808年5月2日、エジプト人親衛隊との戦闘」という作品で、フランス軍の占領に対するマドリード市民の蜂起を描いたもので、愛国者たちが襲撃しているのはナポレオンの皇帝親衛隊に編入されたエジプト人兵士たちと竜騎兵隊である。 
ところが、5月2日の午後から夜にかけてフランス軍は、反乱に加担した多くの市民をプラド通りや町への入り口の各所で銃殺に処した。翌日の日付がタイトルになっているその絵が右上の写真の絵です。 
ゴヤの作品は、国王一家を描いた「カルロス4世の家族」(1800年・280x336cm)を始め沢山の肖像画から、晩年の「黒い絵」シリーズや「砂に埋もれる犬」に至るまで多岐にわたり、この美術館を訪ねて初めて知った事ばかりでした。
他にも、エル・グレコやムリーリョ、ラファエロからフラ・アンジェリコ(美術館ガイドの表紙)、それに、ブリューゲルルーベンス、ヴァン・ダイクらのフランドル絵画コレクションと名作が沢山あったのですが、私たち4人が圧倒されたのは何と言ってもゴヤの作品でした。
ゴヤの「黒い絵」(1821-1823年)と「砂に埋もれる犬」(1819-1823年・131x79cm)

自画像」(1815年・46x35cm)
黒い絵や犬の絵は注文があって描かれたものではないはずです。解説書によると:
狂気的で陰鬱な画風が一貫しているが、その全体を包括するテーマが存在するかどうかは不明である。」「アカデミズムから完全に脱却し、ゴヤの自由な創意のもとで描かれたこれらの作品は、強烈な感情表現と奇怪な美を持って見る者すべてに謎を投げかけ続けている」「ゴヤの作品は19世紀以降、多くの芸術家たちによって高く評価され、表現主義やシュール・レアリズムと言った前衛芸術のアーティストたちからは近代美術の起源として位置づけられている。」
なるほど、ここからミロやダリやピカソなんですね。そういえば、画学生らしき若い人から年配画家まで、キャンバスを立てて模写する人が何人も。
この中央展示ギャラリー(⇒)の真中にピカソの作品が並べられていましたが、この日の私たちにはピカソより、ベラスケス、ゴヤでした。
歩き疲れて、館内のカフェでサンドイッチにカプチーノで一息入れました。
肖像画でハプスブルグ家の治世下にあった事、歴史画の大作にコロンブス以後の歴史も知らないことが良くわかりました。
貴石象嵌のテーブルの見事な工芸技術や、出口近くで見たヴェール越しの女性の胸像の超絶技巧も忘れがたい。
マドリッドの初日からお腹(胸?)いっぱいのプラド美術館でした。