見つかった1953年の婦人像の正体

10日の木曜日、義弟夫婦と母を見舞いに訪ねた日、母から、退院の話が出ていることを聞きました。予想以上に早くビックリ。ただし、直ぐ二階で寝ることは無理ということで、応接間に母のベッドの場所を確保しなければならなくなりました。入口のすぐ右側に父の介護用ベッドがあり、真ん中のテーブルをはさんでソファと椅子二客が向い合せになって、テレビがあり、小さなサンルームにつながっています。父が座る椅子の背後は板壁とキッチンに通じる小さな扉があります。となると新たにベッドを置く場所は、ソファの後ろのスペースが物置になっているので、そこにおいてあるものを片付けてソファもどこかへやって、レンタルのベッドを南西のデッドスペースのコーナーに入れて西壁にくっつけて置く以外にありません。
ソファと壁の間に50センチほどのスペースがあり、そこに父の写真の作品や額縁などが置いてあり、義弟夫婦が帰った後、早速、父に写真を見せて、残すか処分するか判断してもらうことにしました。写真も大きなものになると結構な重さです。それにグループ展に展示したものなどはラミネート加工がしてあってズッシリと重い。

父は仕事を辞めた70歳から趣味の写真を始め、ちょうど母の俳句の先生が写真と俳句をドッキングさせた写俳の提唱者の伊丹三樹彦氏でしたので、中国やインド、ブータンやネパール、ポルトガルなど、余り観光化されていない地域の旅行に誘っていただいて夫婦で海外旅行、それも珍しいところばかりを訪れていました。その時の写真がたくさん作品として残っています。父と一枚ずつ見ながら、父の判断を仰ぎます。どの写真も、よく覚えていて、私も見た覚えのある写真ばかりです。でも、残す?と聞くと、「どうでもええ」と言われ、あまり執着はないようです。その中から、びっくりするようなものが出てきました。トップの写真(34.5x44.5cm)です。
この写真の絵が私の子供のころからお座敷の欄間の中央にかけてあった西洋婦人像です。若いころの母の写真に少し似ているので、従弟たちが来て、「あれ誰? おばちゃん?」と聞いたこともありました。私たち3姉妹も、母に似ているので父が飾っているものだと思っていました。家を建て替えたときにこの絵がどうなったのか、知らないできました。最近になって、父にあの絵のことを聞いたら、「カレンダーの絵」だったことがわかりました。その時ももちろん無くなったものと思っていました。

まさかこの絵が残してあるとは。父は知らん顔をしていましたので、引き取ってきてじっくり見てみました。父が言っていた通り折り曲げた部分を出してみると1953年の凸版印刷のカレンダーだったこともわかりました。65年前のカレンダーだったんですね。書いてあるのを読み取ってみると”マダム・ド・コーマルタン”と読めます。これが絵のタイトル。画家の名前は、フランス語読みだと”ジャン・マルク・ナティエ”です。
これで画家の素性がわかりそうです。アルファベットで検索してみると、出てきました!!

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
ナティエ
なてぃえ
Jean-Marc Nattier
(1685―1766)

フランスの画家。パリに生まれ、同地に没。父、叔父を画家にもち、早くからその才能をルイ14世に認められ、版画『マリ・ド・メディシス伝』を制作(1700〜10)、1718年にはアカデミー会員となる。とくに肖像画に優れた彼の才能は、オルレアン家、ついでルイ15世の宮廷によって寵賞(ちょうしょう)され、『フローラに扮(ふん)したアンリエット夫人』(1742)、『マリ・レシツィンスカの肖像』(1748、ともにベルサイユ宮)など王室の肖像画を多く残した。彼はしばしば神話風の扮装で女性像を描き、その華やかさや優雅さと若干の哀愁を交えた作品群は、ルイ15世時代のロココ趣味、古典趣味を典型的に示している。[中山公男]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ついでに絵のこともわかるかなとタイトルを打ち込んで検索してみると、これも出てきました。
「青春と春の女神としてのコーマルタン夫人」
複製画が売られているようです。絵の全体像もわかりました。

「Hebe(ヘベ・ヒーベ)」というのは、ギリシャ神話でZeus と Hera との娘で Hercules の妻;青春と春の女神;初めは Olympus 山で神々の酒宴の取り持ち役であった」

フランスのルイ王朝の宮廷画家で、有名な絵の一部だったのですね。この華やかな婦人像を見ると母に似ているなんて言えなくなりました。父は母に似ていたから飾っていたのではなくて、美しい婦人像のきれいな写真だったから飾っていたのだろうということも。65年前のくすんだ婦人像の実物を眺めながら姉妹3人で母に似ている・・・なんて思っていた頃がとても懐かしくなりました。(3姉妹ともどちらかというと父親似なのが残念)
そういえば、今日は母の日。昨日、私もカーネッションを母に届けてきました。