「シールズ関西」解散へ 内田樹氏「足跡残した」

◎いよいよ安保法案反対運動の先頭に立って頑張っていたSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の解散が迫ってきました。神戸新聞にシールズ関西のメンバーの記事が掲載されました。コピーしてみます。(引用元:http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201608/0009363476.shtml

2016/8/7 17:35神戸新聞NEXT
「シールズ関西」解散へ 内田樹氏「足跡残した」


 昨年5月の結成から1年3カ月。安全保障関連法の反対運動から参院選まで、社会や政治への問いかけを続けてきた大学生のグループ「SEALDs(シールズ)(自由と民主主義のための学生緊急行動)関西」が15日に解散する。路上でのデモから選挙支援へと活動の形を変え、何を感じたか。参院選から1カ月。メンバーで神戸大大学院生の塩田潤さん(25)、神戸女学院大文学部3年の山口晶子さん(20)、立命館大政策科学部3年の大澤茉実さん(22)、関西学院大神学部4年の大野至さん(24)に聞いた。写真は、右から塩田潤さん、山口晶子さん、大澤茉実さん、大野至さん=神戸市中央区東川崎町1(聞き手・木村信行、写真・宮路博志)


 −シールズとは何だったのか。


 [大野]僕らがやったのは「何か変だよね」という漠然とした政治への怒りや不安をデモという形で可視化し、多くの人の共感を引き出したこと。なぜ急いで安保法案を通すのか。憲法を変えたいのか。成果を十分に出せたわけではないが、やり切った納得感はある。

 [塩田]若者やママが学者と一緒になり、自分の言葉で政治を語るなんて、数年前にはあり得なかった。一発で政治が変わるなんて考えてない。未来への一歩にはなったと思う


 −安保法が成立した昨秋は「特定の政党に肩入れしない」と言っていた。なぜ参院選で野党を支援したか。


 [大野]選挙に関わったのはあくまで個人として。僕たちが大切と考えたのは、立憲主義の回復、個人の尊厳を守る政治の実現、安保法の廃止−の3点。特定の政党を支持したのではなく、この3点を守る政治家を応援するというスタンス。1人区の滋賀や岡山にはメンバーが何度も野党統一候補の応援に行き、複数区の兵庫、京都でも候補者と一緒に街宣をした。政党や労組は従来の選挙スタイルとの差に戸惑っていたが、選対会議に参加し、スケジュールを共有できた陣営もあった。

 [大澤]お父さんっぽいイメージの候補者には「この写真がいい」と選挙ポスターに注文を付けたり。市民と政党が一緒に選挙をする。自分たちの代表を選んでいると実感できたし、楽しかった。

 [塩田]政治は議会の内と外の両輪で成立する。安保法反対のデモで、市民の声を具体的に政治につなぐ必要性を感じた。だから選挙に踏み込んだのは必然だったと思う。


参院選投票率、私の周りは80%!


 −選挙に行こうキャンペーンとして作ったアニメーションの啓発動画は視聴回数が16万回を超えた。


 [大澤]友だちに選挙の話をするのはすごく勇気がいる。だけど就職とか、奨学金の返済とか、みんなが感じている不安と政治との関係を動画で表現できたら「こんなのあるよ」と気軽に勧められる。毎日終電すぎまで議論して完成したのは投票日の数日前。ものすごい勢いでツイッターフェイスブックで拡散された。

 [山口]私が大事だと感じたのは自分が変わること。最初、私の周りで参院選の投票日を知っている人は1人もいなかった。政治についても安倍さんの名前を知っているぐらい。だけど、関西の大学を回って投票を呼びかけるうち、活動を理解してくれる人が増えた。選挙後、ライン(無料通信アプリ)仲間100人に「選挙に行った?」って聞いたら、80人が「行ったよ」って返事をくれた。参院選投票率は54・70%だけど私の周りは80%! 遠くの誰かより身近な人を変えるのが大事だと私は思う。


 −参院選改憲勢力が3分の2を超えた。


 [大野]立憲主義とか個人の尊厳を守る政治とか。本当の意味で自分たちの言葉になっていなかったから、波及させる力もなかった。

 [塩田]社会が忙しすぎて考える時間がないと感じる。僕の友人でも朝7時から夜中の2時まで働いている。そういう人に立憲主義を訴えても無理がある。政治を考えさせない構造が社会にある。


 −いよいよ国会は改憲に向けて動き出す。なのに解散ですか。


 [大野]無責任という声もある。だけどシールズはあくまで学生による緊急行動。今後は一人一人の判断。僕たちだけではなく、政治に関心を持つ個人がどう行動するか。

 [塩田]そう。あなたがどうするかですよ。

 [大澤]サザエさんにこんな話がある。晩ご飯をカツにするかカレーにするか家族投票をした。結果は1票差でカレーの勝ち。だけどお母さんの計らいでカツカレーになった。政治ってこれだと思う。選挙に勝ったから自分の思い通りにできるとは思ってほしくない


 【シールズ関西】関西の大学生約140人が参加。昨年の安保法反対大阪デモでは最大2万人(主催者発表)を集めた。7月の参院選ではメンバー有志が野党共闘を求め選挙に関わった。


内田樹神戸女学院大名誉教授「生活実感に寄り添う言葉」



 東京と関西のシールズと交流のある内田樹神戸女学院大名誉教授が寄稿した。

          ◇          ◇          

 シールズの運動はこれまでのどのような政治組織のものとも「手触り」が違っていた。街頭で語るときも、定型句を避け、スマホの画面をスクロールしながら自分の言葉を自分の口調で読み上げた。政治的に正しい言葉よりも、自分の生活実感に寄り添う言葉を選んだ。「われわれ」ではなく、固有名を持った「私」として語った


 彼らは普通に学生として勉強し、バイトをし、友だちと遊び、デートをし、そして政治活動をしていた。どんなときも政治に「のめりこんでいる」という印象を受けたことがない。彼らはふだん通りの自分のままで政治的活動をしていた。何かを犠牲にしなければ達成できないような過重な政治課題を引き受けないというその節度が彼らの言動に独特の「穏やかさ」をもたらしていたと思う。


 シールズの解散はこのまま運動を続ければ、何かを失うことになるという直感から導かれた当然の結論だと思う。その決断もまた「穏やか」だった。彼らの運動は日本の学生運動市民運動史に大きな足跡を残したと言っていい。