映画「万引き家族」を見て

万引き家族」、カンヌの映画祭で最高賞のパルムドール賞を受賞した是枝監督の映画。母も入院中はテレビと1日遅れの新聞が情報源。テレビでは大々的に取り上げられていたので、母も知っていて、「外国の人まで感銘を受けたって、万引き家族でいいのかね〜」と心配しています。「万引き」を良いと言っている映画じゃないからと私。夫が箕面の映画館でも8日公開だというので、土曜日に見に行くことに。丁度、暇になる午後1時35分から4時ごろまで。夜、ネットで予約しました。翌日、母に午後から「万引き家族」見に行ってくるというと、「見てきて」と。両親との午後のお茶の時間はカットです。(写真:入り口のポスターを撮りましたが上が切れてる!)

内田樹さんが清水 潔をリツイートしました
是枝監督、筋目が通っておりますね

清水 潔
@NOSUKE0607


権力ベタベタの記者たちは監督のツメの垢でも食らうといい。

是枝監督が自身のホームページ(HP)に「公権力とは潔く距離を保つ」と記して辞退を表明した。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180608-00000041-mai-pol

<林文科相>カンヌ最高賞で祝意を 是枝監督は辞退表明
毎日新聞 6/8(金) 14:53配信



 フランスで先月開かれた第71回カンヌ国際映画祭で、メガホンを取った「万引き家族」が最高賞「パルムドール」を受賞した是枝裕和監督に対し、林芳正文部科学相文科省に招いて祝意を伝える考えを示したところ、是枝監督が自身のホームページ(HP)に「公権力とは潔く距離を保つ」と記して辞退を表明した。


 林氏は7日の参院文教科学委員会で、立憲民主党の神本美恵子氏から「政府は是枝監督を祝福しないのか」と質問され、「パルムドールを受賞したことは誠に喜ばしく誇らしい。(文科省に)来てもらえるか分からないが、是枝監督への呼びかけを私からしたい」と述べた。今回の受賞を巡っては、仏紙「フィガロ」が安倍晋三首相から祝意が伝えられないことを「是枝監督が政治を批判してきたからだ」と報じていた。


 答弁を受け、是枝監督は同日、HPに「『祝意』に関して」と題した文章を掲載。今回の受賞を顕彰したいという自治体などからの申し出を全て断っていると明かした上で「映画がかつて『国益』や『国策』と一体化し、大きな不幸を招いた過去の反省に立つならば、公権力とは潔く距離を保つというのが正しい振る舞いなのではないか」とつづった。【伊澤拓也】


内田樹さんがリツイート

たつみ
‏@teadow 6月9日

是枝監督が文部省の招待を断った件、助成金貰ってるのに失礼だとか恩知らずだとかいう意見を散見してびっくりしたわパトロンからガンガン金せしめて納期やら作品内容やら素行やらフリーダムの限りを尽くしてたルネッサンスの巨匠たちを見習って欲しい


町山智浩
@TomoMachi 6月10日

政府の助成金受けたら政府を批判すべきじゃないという人はソ連に行ったほうがいいですよ。

和田浩明/Hiroaki Wada
@spearsden
助成金貰ったら政府と距離を置けないのでは、映画に助成金出す意味がなくなるんじゃないかな。多様で面白いものを作る支えでしょう。で、パルムドールとってるわけで、まさに目的を達したわけだ。


内田樹さんがリツイート

新川貴詩
@shinkawa_takash 6月10日


是枝監督は国の助成金をもらってるのに、けしからんという非難、あまりにアホらしいから黙ってたけど、一言だけいっておく。あれは、正確に言うと文化庁所管の芸術文化振興会による助成金で、この組織は独立行政法人。つまり厳密には政府の機関ではなくましてや公権力でもない。(続く)

で、芸術文化振興会の財源は芸術文化振興基金の運用益。その基金は国だけじゃなく民間企業や個人からの資金で成り立ってる。確かに税金が注がれてはいるものの、それは半世紀以上も前のことであって、しかも全額政府出資ではないよって、是枝監督への非難は、筋違いも甚だしい。

「誰も知らない」で、カンヌの最優秀男優賞を受賞した柳楽優弥さんによく似た少年が起用されています。目鼻立ちがくっきりした少年が監督好みなのですね。朝日新聞にも8日の公開に合わせて、主演の安藤サクラさんのインタビュー記事が掲載されましたし、映画の広告記事の中で「全日本おばちゃん党」の党首である谷口真由美さんと監督との対談記事も載りました。
映画は、船戸結愛ちゃんという5歳の女の子がひらがなで「ゆるしてください」という遺書?を置いて今年の3月に亡くなったという痛ましい事件(6日、父親が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕)が連日報道されるなか、公開日を迎えました。映画の中で、結愛ちゃんと同じように親から虐待を受けている女の子が「万引き家族」の一員として加わるところから始まります。丁寧に描かれる疑似家族の日常。そして、『妹』思いの『お兄ちゃん』のとっさの行動から・・・
ケイト・ブランシェットさんが授賞式で絶賛した安藤サクラさんの涙のシーン。もうこのあたりは慟哭を抑えるのに必死です。
虐待や育児放棄の被害者の子どもはまず救い出すことが先決です。親が子を虐待したりネグレクトするのは、親が普通ではない証拠であり、親が病気なのです。一刻も早く親から切り離し、子供の命を助けることが最優先。周りの大人は、ひるまず、子供を助けることを第一に考えてほしい。民生委員・児童委員として関わった経験からも、ぜひ、お願いしたいと思います。本気でその子の命を救いたいと思う大人がその子の周りにいるかどうかが命の分かれ目です。ひょっとしてと思ったら地域の児童委員(民生委員が兼ねています)さんに通報して、委員の方は役所や学校や児童相談所(大阪府は「子ども家庭センター」)が動くまで、頑張ってください。
樹木希林さんのおばあちゃん、リリーフランキーさんの「父親」、ほか俳優陣も好演。松岡茉優さん、どうしておばあちゃんと一緒に住むようになったのか、で、また別の物語が出来そうです。映画は淡々としたドキュメンタリータッチですが、急展開の後は、ただただ泣けました。同じ日、フジテレビで是枝監督の「海街diary」をやっていて、二人で見ました。私はテレビで二度目でしたが、ノーカット版で以前知らないシーンがたくさんありました。どの映画も家族がテーマ。今度の土曜日は、同じくフジテレビ系で夜9時から是枝監督の「そして父になる」です。映画館に行けない母に、お昼寝して見るようにとメモを渡しています。母も楽しみにしています。

◎新聞広告の対談の後半部分が是枝監督の伝えたいことだったということで書き移してみます:


見ぬふりされる人々に目を向けて


谷口 映画で描かれた家族のように、だれが住み、どう暮らしているのか分からないおうちは、実はいっぱいあります。それなのに、私たちは意識的か無意識的になのか、気づかないふりをしてしまっている。社会で存在していないことにされている人々は、隣にいるかもしれない、ということを突きつけられた作品だと思いました。


是枝 うれしいです。カンヌ国際映画祭の授賞式の時、審査委員長の俳優ケイト・ブランシェットさんは、今回の映画祭で「インビジブルピープル(見えない人々)」に光を当てた作品が多かったと言われました。自分が描きたかったのは、社会が見て見ぬふりをしている家族だったんだと、腑に落ちて。谷口さんの今の言葉ともリンクしました。


谷口 この映画は、私が日ごろ、学生や社会に伝えようとしている内容を2時間でまとめてくださっています。学生はもちろん、たくさんの方に見ていただきたいと思います。


是枝 見る人の想像力で補完されて、この映画はようやく完成します。そして役者さんがみんなよかったです。特に初めてご一緒した、安藤サクラさんを撮っていて、鳥肌が立つ瞬間が何度もありました。この映画は彼女の存在感でとても豊かなものになったと思っています。一人でも多くの人が劇場に足を運んでくださるとうれしいです。


◎是枝監督の最後の言葉、「見る人の想像力で補完されてこの映画は完成する」というのがよくわかります。映画はヒントと暗示を残して終わり、その先は見る人にゆだねられています。少年は、疑似家族の崩壊のきっかけを自分が作ったと最後に「父親役」だったリリーフランキーさんに伝えます。『疑似』では解決にならないと、自ら自分自身の生き方を求めた少年は、バスを追いかける「父」を拒否しつつ、黒めがちな瞳でその姿を見つめつづけます。一方、女の子は、ベランダに放置されていた家に戻されます。社会は、父親のDVを受けている母親、その母親が一番弱い女の子にはけ口を求めている実態を見過ごして、”子どもは母親のもとに戻すのが一番幸せ”という一般論で片づけてしまいます。女の子は、変わらぬ母親に抵抗を示し、一人であのベランダに出て、また、あの救いの手がやってこないか、拾ってくれる大人が来ないか・・・人待ち顔で外をうかがいます。
(映画館への行きかえりの道で見たアジサイブラックベリーの色づいた実と白い花)

ケイト・ブランシェットさんが、これから映画で役者があんな泣き方をしたら、彼女の真似をしてると思ってくださいと言った安藤サクラさんのあの抑えても抑えてもあふれる涙は何だったのか……取調官に、「それであの子たちに何と呼ばれていたの?」と聞かれたときでした。私も一瞬、そういえばなんて呼ばれてた? リリーフランキーさんは少年にまだお父さんとは呼ばれていなかったけど、はて、サクラさんはお母さんと呼ばれていたっけ?と思いました。あの涙は、悔し涙?・・・実の母親に負けない愛情で接していたけど、お母さんとは呼ばれていない……疑似ではだめだという。この後、一人で罪をかぶって収監され、リリーフランキーさんと少年を呼んでの面会で、彼女は、少年を拾った車の情報を与えて、少年に本当の親を探そうと思えば探せるよと伝えます。これが彼女の愛の結論です。だからと言って、この映画が『愛よりも血』と言っているわけではありません。少年が実の親を探し出そうとするのか、それとも『親』や『(疑似)家族』を超えた新しい生き方を自分で築き上げていくのかは未知数です。ただ、新しい一歩を決意したことは、少年のりりしい顔で分かります。


◎目黒の虐待事件の5歳の結愛(ゆあ)ちゃん、親はなんて素敵な名前を付けたのでしょう、愛を結ぶ。きっとそんな風に育てたい、育ってほしいと思ったはずですね。事件がわかった早い段階でお昼の番組のコメンテーターの男性が、母親がひどい、本来なら子どもをかばうはずの母親がなぜ見過ごしていたのだと。普通なら、そうするはずなのに、それをなぜしなかったか、なぜできなかったかが問題なんですね。父親のDV(夫婦間暴力)<家庭内暴力は、family violence>、その対象に自分がなった場合、本能的に身の危険を感じて自己防衛しますね。そして、自分を守るために、より弱いものに…と想像できないでしょうか。映画の女の子の家庭と同じです。母親なら普通にする行動がとれないほど追い詰められていたと考えられないでしょうか。母性があれば子どもをかばうのは当然だと責めたところで解決するのか…責めている自分の気が済むだけですね。お昼の報道番組が、同じような視聴者の思いのはけ口になってしまっては…と残念でした。
◎「俳愚人」さんもブログに寸評を:http://d.hatena.ne.jp/haigujin/20180609/1528544136

◎「特別な1日」さんも取り上げておられます:http://d.hatena.ne.jp/SPYBOY/20180611/1528705925