『安倍支持の空気』(朝日)は『現政権が作り出したもの』(内田樹「参院選にあたって」)

◎先週5日の金曜日は7月最初のは金曜デモの日でしたが、「特別な1日」さんのブログによりますと、昨日7日の大行動を控えてお休みだったとか。でもその日のブログ記事はスルー出来ない内容でした。(またバラが咲き出しました。1番花の4分の1ほどの小さい花ですが)

朝日新聞の7月1日から3日連続で、『2019参院選「安倍支持の空気」』が掲載され、「特別な1日」さんでも、2回にわたってこの記事について取り上げておられます。私もブログの記事をたどりながら読んでみました。

1)「変わりたくない人々」と映画『新聞記者』と『旅の終わり 世界のはじまり』 - 特別な1日

2)ドラマ『いだてん』と『安倍支持の空気』 - 特別な1日

私用のメモがわりに、SPYBOYさんの記事をまとめてみます。[ ]内は(1)より引用。(写真を撮るため捨てた記事を拾いに行ったら、上中は見つかりましたが下は行方不明)

【上】変化望まない 頼みは自分 / 若者ら 政治に冷ややかな目(新聞タイトル)

 [上』では『18~39歳の男性の間で安倍内閣の支持率が高い、彼らは政治は助けてくれないのだから、現状維持で良いと考えている』というものでした。

 その年代の男性はグローバリゼーションが進行する中で『男性+正規社員』という自分たちの既得権が失われていくから尚更、変わることに対して抵抗を持っていると思う。]

 以下、SPYBOYさんのブログの(1)「変わりたくない人々」から引用。太色字by蛙。

 これだけ失策とスキャンダルがあっても安倍内閣の支持率があまり落ちないのが不思議だったのですが、やっと納得のいく答えが見つかったような気がします。

 内閣支持率があまり下がらないのは安倍政権は『日本は変わらなくても良い』というメッセージを暗に発し続けてきたからではないでしょうか。
 『日本を取り戻す』(笑)を始めとして、民間ではなく官主導の政策が目立つのも、アベノミクスで昭和のような輸出主導の日本経済を目指すのも、マスコミを使った世論誘導も『日本は今のままで大丈夫=日本は変わらなくても良い』という暗黙のメッセージです。これらのメッセージは現実とは関係なく、国民に、特にあまり物事を考えたくない国民に、なんとなく安心を提供する。
 今朝の朝日新聞に面白い記事が載っていました。安倍晋三の支持率が若い男性の間で際立って高い、という記事です。

 

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記事で取上げられている彼らの声を拾うと『今より悪くなりたくないから、現状は変わらないでほしい。だから今の内閣を支持する』というのです。

この意見には賛同はできないけど、理解は出来る。それくらい、今の状況が酷い。というか、前途に希望が見えない

 日本経済の先行きは真っ暗で仕事も厳しい、給与の面でも仕事の面でも日本社会に残っていた男性&正規社員という既得権益セットも怪しくなってきた。だから彼らは不安に駆られている

 女性の方がもっと厳しい状況に置かれているから、ちゃんちゃらおかしい甘ったれた話ではあるんですが(だから女性の安倍内閣支持率は高くない)、気持ちとしては判る。要は仕事が増えるわけないのに未だにトランプを支持しているラストベルトの白人労働者みたいなものでしょう(笑)。滅びる運命にある存在(笑)。

 そういうムードって、確かに今の日本にはあると思います。日本はどんどん落ち目になっていく。そこで『変わらなくても良い』というメッセージを発せられると確かに心地良い。TVで『日本サイコー』とか言ってるようなアホ番組がその典型です。

 しかし、そういう『変わりたくない人々』の願いはたぶんかなえられない団塊世代が揃って後期高齢者になる2025年問題(あとたった6年!日本を揺るがす「2025年問題」がやってくる)を始めとして、介護にしろ、コンビニにしろ、今や外国の人の労働力がなければ、日本人は日常生活を過ごすことも死ぬことすら、できない(笑)。

 原発も、社畜化と引き換えに企業が正社員の人生を保障する終身雇用も、『正社員の男性が非正規社員の女性を職場でも家でも安くこき使う』既得権益も、世の中の大きな流れとしては亡びる方向にあります。そういったものに支えられてきた日本の社会は変わっていかなければ生き残ることはできない。

変わりたくない人々』の昭和リバイバルにも、『9条守れ』に代表される日米安保の傘の下の(偽の)平和主義にも未来はない

 それでもごく僅かですが、日本の社会の中にも変化の種子は播かれています。自分の頭で考え、行動する人々の存在です。たぶん男ではなく女性が、年配より若い人のほうが多いでしょう我々に未来があるとしたら、そういう種子を大きく育てていくことの中にあると、ボクは思います。

【中】自分は貧困層 考えた結果 / 格差・自己責任論 入り混じる(新聞)

貧困層、生活に不満を持っている人の多くが格差を容認しており自民支持に回っている。政治を変えるより自己責任と考えている』ということが書かれていました。

 ◎記事の中にあったグラフを「特別な1日」さんのブログからコピーです:

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◎ 2つのグラフからわかることは(SPYBOYさんの記事です)

●上のグラフ:●生活に不満を持っている人の間で自民党支持率が高まってい95年9.8%⇒15年23.3%に上昇

●下のグラフ:貧困層の間でも格差拡大を肯定する人の割合が高まっている05年17.4%⇒15年23.7%に上昇

◎ここで新聞記事から少し補足です。

総務省の調査では、2018年の正規雇用は、10年前と比べて350万人ほど増えて、約2120万人、働き手に占める割合は約38%と過去最高水準。背景にはバブル崩壊後の雇用情勢の悪化と自民党が進めた規制緩和などがある。」

格差拡大や貧困問題を政治の問題と感じない意識の構造改革が起きている。

社会学者らが全国の1万人以上を対象にした10年ごとの大規模な調査で、1995~2015年にかけて、生活に不満を持つ層が自民への支持傾向を強めたことが分かった。」(就職氷河期の我が次男坊世代です…蛙の声)

「さらに早稲田の社会学橋本健二教授の分析によると、『格差が広がってもかまわない』と考える人の割合は、この10年で各所得層で増えた。しかも増加率は貧困層で最も高く、貧困層の約4人に1人は、わが身に降りかかる不利益を受け入れている。そして貧困層の4割は自己責任論を肯定する。」

◎ここで、SPYBOYさんのまとめです:

 記事(中)の『生活に不満を持っている人の間で自民党支持が高まっている』、『貧困層の間で格差拡大を肯定する人が増えている』などは正直、『バカじゃねーの』、『一生 奴隷でもやってろ』と思いますが(笑)、現実にはそういう人がいるのは間違いないし、それを生んでいるメカニズムを考えなければ問題は解決しません

【下】どっちでもきめられる方

 水曜日の『下』では『基幹労連でも支持政党のトップは今や自民党であり、自分は右でもなく左でもなく中間と考える有権者が増えている。したがって各党の政策は似通ってくるため、右左ではなく政党の実現能力や党首のリーダーシップで判断するようになった』ということが書かれていました。

 ◎同じく「特別な1日」さんのブログからコピーです:

有権者の54%が自分は右でも左でもなく『中間』と答えたそうです。

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記事(下)の大企業の労働組合の間で自民党支持が高まっているのは当然だと思います。彼らは全体の3割しかない大企業の、しかも正社員しか組合に入ってないんですから、比較的恵まれた立場です(それでも それなりに大変でしょうが)。特に原発維持の電力労連なんか自民党を支持するに決まっています。そんな連中に幻想を抱く方が間違い。

 ◎朝日の記事、上中下を読んで、いよいよSPYBOYさんのまとめです:

 ここにあるのは『政治そのものへの不信と国民の劣化』(上、中)、『野党への失望』(上、中、下)、『右/左という対立軸の希薄化』(下)です。

かねがね『安倍晋三の最大の応援団は無能な野党』と思ってましたが、国民の生活悪化やスキャンダルがこれだけ起きても安倍政権が続いているのは、野党の責任が大きいということだと思います。
 最初から失敗するのが判っていたアベノミクスに対抗する経済政策だって未だにまともな対案が出てこないし、これだけしょっちゅう野党間で仲間割れしてれば、誰だって嫌になりますよ。
 まして枝野も玉木も小沢も蓮舫民主党政権の総括すら、オフィシャルにやっていない。そんなところだけ安倍晋三の真似をしないで(笑)、総括して謝ればいいんです。
 過去の間違いを正すのは恥ではない。それこそが未来につながる。今のような野党の体たらくでは政治に希望なんか持てない、という人が出てくるのも無理はない。
 だからと言って棄権しても、現実は変わらない(笑)。いや、もっと悪くなるだけです。

◎今この時点で参院議員選挙戦に突入してしまっています。れいわ新選組についてメディアは取り上げようとしませんが、SNSでは各候補の選挙演説を聞くことができます。新聞、テレビを通さない選挙民がどのくらい居て、どんな選択をするのか? 

大阪市では、この春、府市ダブルで維新の首長が当選、公明党自民党も都構想になびいてしまいました。大阪市存続を願うなら、維新に唯一対抗している共産党に頼るしかないと、元自民党支持者たちがグループで共産党の辰巳候補支持に回るという動きがあります。

変わらなくていいと思っている人たちは、変われるのか? 投票率はあがるのか?

21日には結果が出ます。怖いような・・・

 ◆◆◆内田樹氏がブログ「内田樹の研究室」で毎日新聞に掲載された記事に書き足して参院選にあたってを書いておられます。

読んでみると、朝日新聞が書いていた、消極的『安倍支持の空気』は、作られたものではないか?それも安倍政権自身によって・・・変化よりは今が良い、これ以上悪くなるよりは現状維持の「変わりたくない人々」は、安倍政権が狙って意図的に作り出した「考え方」や「ムード」ではないか・・・SPYBOYさんも書いておられました「安倍政権は『日本は変わらなくても良い』というメッセージを暗に発し続けてきた」「マスコミを使った世論誘導も『日本は今のままで大丈夫=日本は変わらなくても良い』という暗黙のメッセージです」と・・・

  いまの政権が目指しているのは、まさに「国会なんか要らないじゃないか」という印象を有権者たちに刷り込むことなのである。

 そうすれば投票率は下がる。国民が国会に対する関心を失えば失うほど、集票組織をもつ与党が低投票率では「常勝」することになるだから、政府与党の関心は「どうやって投票率を下げるか」に焦点化することになる。
 今回自民党は「改憲」を選挙の争点にしたが、それは別に憲法条項のどこをどう変えるかについて明示的な主張を掲げて、国民に信を問うということではない。そうではなくて、「日本がこんな状態になったのは、全部憲法のせいだ。憲法さえ変えればすべてはうまくゆく」という「ストーリー」を国民に刷り込み、それによって自らの政治責任を免れようとしているということである。
 だが、こんな「ストーリー」は一般の有権者には何の緊急性もないし、特段のリアリティーもない現在日本が直面している外交内政の主要問題とも改憲はほとんど関係がない。だから、「すべては憲法のせいだ/そんなはずないじゃないか論争」というものが仮に主要な争点になれば与党支持層以外の有権者の投票意欲は有意に下がるだろう。たぶんそういう算盤を弾いて自民党は「争点選び」をしたことだろう。  

◆私たちの一票は、候補者や政党の支持表明するにとどまらず、その一票は、全体主義や個人崇拝を否定し、私たちは民主主義を選択するという意思表示の一票なのです: 

 もし選挙を「自分の政治的意見を100%代表してくれる人」を国会に送り込むことだと思っているなら、その人は棄権を選ぶしかないだろう。そして、棄権することはニュートラルな解ではない。それは民主制の崩壊に同意の一票を投じることである「国会なんか要らない」という人々の群れに加わることである。

 投票するということは、ある候補者やある政党に対する支持を明らかにするという以上に、国権の最高機関の威信に対して一票を投じるということでもある。 選挙に際しては何よりもそのことを思い出して欲しい。民主主義に一票を。

 ◇◇◇全文はこちらで:参院選にあたって - 内田樹の研究室