「最長政権のわけ」は『自発的隷従が支える圧政』=王様は裸だと言える大人に

f:id:cangael:20200831151433j:plain  8月に書いていたもの今頃アップです。

◎手元に残していた新聞記事は安倍辞任が近いと判断しての朝日の記事だったと思うのですが、もたもたしているうちに辞任の発表の日を迎えてしまいました。慌ててブログを書き始めています。8月25日の朝日の朝刊、「オピニオン&フォーラム」の頁。「最長政権のわけ 耕論」です。ついこの間、歴代最長政権の記録を作ったのですね。この記録達成を待っての辞任だったのか、その間、国会も開かれず・・・でしたが、安倍政治の通信簿です。3人の意見が掲載されています。

哲学者の西谷修氏の「自発的隷従が支える圧政」に書かれていることが、安倍政権を支えたものを言い当てています。はだかの王様が王様であり続けられるのは「王様は裸だ」と言う大人がいないからですね。官僚の方たち早く目を覚ましてほしいですね。でないと官僚を目指す優秀な若い人たちがいなくなります。そっくり書き移してみます:

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 哲学者 西谷修さん 自発的隷従が支える圧政

 

 なぜ安倍政権は長期化したのか。この疑問を解くカギの一つは、16世紀にラ・ボエシが唱えた自発的隷従論」にあります。フランスの法務官僚だった彼の考えは、王制であれ、民主制であれ、国や時代を超えて支配秩序の特徴を見事にとらえています。

 圧政は、支配者自身が持つ力によるものではなく、支配に自ら服従する者たちが加担することで支えられているーー。これが、「自発的隷従論」のポイントです。

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 一般的に支配者は強権を振るう加害者で、支配される者は弱い被害者だ、と考えられがちですが、彼はこうした図式に異議を唱えました。

「私ならお役に立ちますよ」と言って取り入る者たちが、権力の甘い汁を吸おうと集まる彼らは、権力行使の代行者になることで自ら権力を振るいます。そんな高級官僚は、部下たちを皆追従者にします

 安倍政権は、「政治主導」の名の下、手足となる霞が関官僚の人事を一元的に握りました。そして「小圧政者」 と追従者の重層的で強固な連鎖構造をつくり上げました。

 ラ・ボエシはこう言います。「追従者たちは、圧政者の言葉、声、合図、視線に耐え素注意を払い、望みを忖度し、考えを知るために、自分の目、足、手を何時でも動かせるように整えておかねばならない」。森友、加計学園の問題であらわになった官僚の忖度ぶりが目に浮かびます。

 いま、安倍首相の尤も近くいる追従者は「官邸官僚」と呼ばれる人たちでしょう。首相の意を受け、追従する圧政者としてふるまってきました。新型コロナ対策では、首相を喜ばせようと、「マスクを配れば、国民は満足しますよ」と進言したといいます。

 しかし、布マスク2枚の全世帯配布に対する国民の評判は、さんざんなものでした。政権が長期化し、「妄想」の中で生きる官僚と国民感覚のズレが、どんどん大きくなっていったことの証左です。

 自発的に隷従しているのは官僚ばかりではありません。経済界やNHKをはじめとするメディアも同じです。みんな権力支配の秩序の中で生き、私腹を肥やしているのです。

 では、この支配構造を壊すにはどうしたらいいのか

 王様は裸だ。誰もがそう叫び、圧政者を支えなくなれば、隷従の鎖は崩れるものです。革命は必要ありません。

 これこそラ・ボエシの明かにした権力存続の原理です。だから彼はこう訴えます。

 「もう隷従しないと決意せよ。するとあなた方は自由の身だ。敵を突き飛ばせとか、振り落とせと言いたいのではない。ただ、これ以上支えずにおけばよい」

 「目が覚める」とは、そういうことです。(聞き手・桜井泉) 

 ◎後お二人の記事も一部を書き移しです:

細谷雄一慶応大学教授:経済+保守イメージの妙

(終わり部分のみ引用です)

  安倍首相は「悪夢のような……」と言った形容詞を繰り返し、ことさら民主党政権との違いをアピールしますが、私に言わせれば、安倍政権の制作は多くが民主党政権の変革を継承しています。

 安保法制は、基本的に民主党時代に策定された防衛大綱の「動的防衛力」概念の延長線上にあります。戦後70年の節目で発表した「安倍談話」も、「村山談話」を継承し幅広い理解を求めた結果、左右双方から批判されました。

 悔やまれるのは、これだけ長い間、政権に居ながら、デジタル化や社会保障制度など日本社会に必要な構造改革を先送りしたことです。その結果、日本の競争力は世界34位まで落ち込んでしまいました。新型コロナウィルス対策でも、ほかのアジア諸国がITを生かした政策を矢継ぎ早に打ち出したのに、日本は存在感を示せませんでした。2次政権の後半は、政権の維持ばかりが目的かしていたように感じます。(聞き手・高久潤)

政治学者 辻 由希さん:労働力狙いの「女性活躍」 

(途中からと最後の部分のみの引用です)

・日本経済は生産性の低さや少子化による労働力不足など、多くのマイナス要因を抱えています。残された数少ない経済成長のリソースが「女性」というのがウーマノミクス論です。これを取り入れた安倍政権では、女性の地位向上は、ジェンダー平等や人権とは切り離され、純粋な労働力として、経済の文脈でのみ考えられているのです。

この社会で女性が輝いて働くには、男性中心の組織文化や働き方を根本的に改める必要があります。企業の幹部には、「頑張れ」などときれいごとで女性を激励するのではなく、過去の自分の否定につながるほどの痛みを伴う改革への覚悟が求められます

 国会で批判されると、逆ギレすることの多い安倍首相の姿は、「自らを省み、変わろうとする」イメージとはかけ離れています。働く女性には「口先できれいごとを並べる上司」に重なって見えているのかもしれません。(聞き手・中島鉄郎)