(2)「きみの瞳が問いかけている」メモと記憶によるあらすじ

(映画をこれから見るという方は読まないで・・・)

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★先日観た「きみの瞳が問いかけている」の終盤の暗転、もうこれで終わり?と思った箇所が複数回あったことが気になって、先日、またこの映画を観に出かけました。同じ映画を複数回映画館で見るのは初めての体験。この映画は随所に小物が登場し、かなり緻密にドラマの中に組み込まれて浮いては沈む穏やかな流れを見ているような物語なので、余計にあの違和感のある突然の暗転が気になります。見事に織りあがった美しい布に鋏を入れて断ち切るような終盤の暗転は何故?と不思議です。

三木孝浩という監督さんの映画を観るのは初めてです。三木監督が吉高由里子さんを主役に起用するのは2度目とか、横浜流星さんとは初めてとのこと。トップシーンの横浜さん演じる篠崎塁(24)が助手席に乗っている軽トラに「横濱屋」という屋号が書かれていたり、管理人室で二人で見るテレビのドラマが「LAST LOVE」で、ドラマの男の子を「かっこいいけどちょっとチャラそう、頭はピンクだし」と塁に説明させていますが、これは横浜流星さんのブレイクのきっかけになった「初めて恋(First Love)をするとき読む話」でユリユリと呼ばれるピンク頭の高校生を横浜流星さんが演じていましたので、出だしから横浜流星(ファン)さんサービスが行き届いています。

トップシーンは真上から小さな部屋(ネットカフェ?)で丸くなって眠る塁。この時の左手の甲、次の場面の軽トラの助手席から見える左手の甲には大きなタトゥーを消したらしき跡。酒屋の配達をして回る塁。それが終わると新しいバイトに。途中から雨が降り出しフードをかぶる塁。駐車場の管理人の仕事で年配の前任者が突然やめた後を継いで住み込みの仕事にありつけた様子。「遅刻するなら電話してこい」と言われ「携帯持ってないので」と答えています。

ここに目の不自由な明香里(吉高由里子)(29歳)が前任者のお爺さんが突然辞めたのを知らずに入ってきて二人は知り合います。目の見えない分、明香里が臭いや音に敏感、自然に五感が鋭くなる様子が描かれていきます。塁の張りのない低い声を聞いて明香里は、お爺さんより若いけれど生活の苦労で生きるのに疲れたネズミ年生まれの36歳の”おじさん”と呼びます。

鉢植えの金木犀が入り口に置いてある。初めて勘違いで訪れた日、帰ろうとする明香里を「雨も降ってるしテレビ見ていいよ」と低い声でボソッと話す塁。その日、明香里は、”不細工いなり”と呼ぶいなりずしが入ったパックを置いて帰ります。シャワーを浴びた塁はパックのいなりずしをつまむと一口、美味しいのかパクつくように食べる塁。

明香里は部屋でフライパンに油をひきベーコンエッグを作ってパンを焼いて目が不自由でも器用に調理して美味しい朝食を摂っている様子が。そしてコールセンターのお客様電話係りとして働く明香里。視覚障害者は明香里一人ではないことも分かります。どうも職場の上司(野間口徹)が異様に明香里に執着している様子も。

 一方、塁の方はドリンク剤のパックを手にボクシングジムに。コーチ(やべきょうすけ)と会長(田山涼成)の前で正座して頭を下げる塁。突然消えたことを責められていますが謝罪に徹する塁。何かわけがありそう。

管理人室で初めて一緒に過ごした日の帰り際に明香里が「水やり忘れないで」と言っていた鉢植え、2度目、塁が空のいなり寿司のパックを返しに外に出たとき、金木犀の花の香りに気づいた明香里が「花が咲いたのね」と言います。管理人室に入った明香里が窓を開けてと頼む。どうも汗臭いにおいがしたらしい。この日もドラマを見て帰ろうと外に出た明香里に「ちょっと」と呼びかけてを渡すシーン。「私は”ちょっと”じゃなくて柏木明香里」と名乗って手を差し出します。塁がその手を握り返して握手。「固い手」に気づく明香里。

ぼさぼさ頭で汚い靴を履いて平気だった塁も次第に汗の臭いが気になり身の回りを清潔に保ちシャワーを浴び履いている靴の臭いも気になりだします。そして今では目を閉じて明香里の白杖(はくじょう)の音を待ち焦がれるように。

明香里は洗濯機を回しながら刻んだをフォークで口に持って行きながら、口ずさんでいるのは「椰子の実」の歌。この歌はこの映画の主題そのものであることが徐々に明らかになってきます。

明香里は素足に水を感じ、排水溝に何か詰まったせいで洗濯機の水があふれているのに気づく。その日塁は新しいスニーカーを履いている。明香里は「新しい靴のにおい」に気づきます。明香里がドラマを見て主役の男の子「カッコいい?」と聞くと「かっこいいけどチャラそう、髪の毛ピンクだし」と答える塁に「ドラマじゃなくておじさん。ハンサムでなくても男は顔じゃない、ハートだから」。

管理人室に戻った塁は、外で急発進する車をよけた明香里が転ぶのが見えて慌てて助けに。病院で治療を終えて出て来る二人。バスの中で名前を聞かれた塁は「恥ずかしいから」と答えない。家への帰り道「背中に乗って」「後悔するよ」「大丈夫」と明香里を負んぶして坂道の長い階段と自宅の前の階段を上ってくれた塁に、ついでに排水溝を見てほしいと頼む。詰まったパンティを取ってもらったお礼にと上司からもらったコンサートのチケットを渡し、二人で行くことに。

いつもよりちょっとオシャレした明香里を外で待つ塁。二人でコンサートにでかけ、終わって後、焼き肉店へ。ここは両親とよく来た店だと身の上を語り始める明香里。大学では彫刻を専攻していたことなど。塁のことも知りたくて過去の仕事のことなど聞き始めた明香里に、苛立つ塁はつい乱暴な言葉を吐いて二人は気まづくなり、送っていった明香里の家の前で、悪いと思った塁は、バスの中で聞かれた時「恥ずかしい」と言っていた名前を告げます。「アントニオ・篠崎塁」「芸名?」「本名。年は24.キックボクシングをしていて結構悪いこともしたけど、今はそうじゃない」「おじさんじゃないのね。言いたくないことを聞こうとしてゴメンね」二人は気まずいまま別れます。

塁の方はまたジムの二人に呼び出され会長に「今までどこにいた?」と問い詰められる。二人の話から地下格闘技の世界にいた塁はコーチに見出されて表のキックボクシングのボクサーとして育てられ活躍していたことが分かります。とうとう塁の口から「懲役3年5か月の刑を受け刑務所にいた」ことが明かされます。

(過去の映像が流れて)塁は半グレ組織のリーダーであり幼馴染の児童養護施設先輩恭介(町田啓太)に誘われて金貸しのあくどい取り立ての用心棒のようなことをしていた様子が分かります。恭介のグループの金を持ち逃げしようとする坂本(岡田義徳)を追い詰め、塁が手先となって坂本を殴りつけている。先輩仲間が金を取り戻し後は任せたと二人きりになったビルの一室、「家族がいればわかるだろ~見逃してくれ」と懇願する血だらけの坂本に絞り出すような低い声で「俺に家族はいない」と答える塁。突然、部屋の外に「警察だ」の声がする。

塁は自分が育った養護施設の修道院のシスター風吹ジュン)に会いに行きます。洗礼名の変更は出来ないかと聞いても取り合ってくれないシスター。自分は許されないことをしたとシスターに語る塁。もうあの人たちとは付き合ってないのでしょうと尋ねるシスターに左手の甲のタトゥーの消し跡をみせる。子どもたちが作った髪飾りのシュシュをシスターは塁に渡して「誰かイイ人がいたらあげて」と言います。

十字架を仰ぎながら塁は此処で育った子ども時代、先輩の恭介に人を殴っても罪を認めるなと言われたことを思い出しています。恭介との関係はこの時からの上下関係が続いているようです。

緩やかに二人の間の距離が縮まるエピソードが積み重なるように描かれるなか、この日ある事件が起こります。明香里の家の前で待ち伏せしていた職場の上司が部屋に入り込んで嫌がる明香里を押し倒します。抵抗した明香里に顔を引っかかれた上司は逆上して迫ろうとするので明香里は防犯ベルを引き抜いて鳴らしますが益々凶暴になりベルを止めろと言われ止めたところへ修道院からの帰りに寄った塁が現れ、上司を引きはがして殴りつけます。塁の怒りは収まらず明香里の止めてという叫びにも耳を貸さず、上司の指を折って「今度は殺す」と言い放つ。指が折れる時のきしむ効果音と一瞬凶暴な塁の目が怖い。

優しい声に戻った塁は「だいじょうぶ?」と明香里に。「どうして私の言うことを聞いてくれなかったの。首になったら責任取ってくれるの?仕事を見つけるのがどんなに大変か分かる?」となじる明香里。「あんなことされても会社に行くの?」と聞く塁に「何事もなかったふりして笑って仕事をする、生きていくためなら」と答える明香里に「責任は俺が取る。俺が明香里さんを助けるから」と言う塁の言葉も耳に入らない様子の明香里。うなだれて、プレゼントのシュシュを置いていく塁。二人が理解し合えないまま終わるこの場面の緊迫感に引き込まれます。

管理人室で白杖の音を待っている塁ですが、しばらく姿を見せない明香里。ある日、見回りから戻ると扉のところに明香里がいる。「今、退職届を会社に出してきた」という。そして「スッキリしないから週末私をドライブにつれていって」とも。黙っている塁に明香里が「責任取ると言ったのだからそれくらいしてくれてもいいでしょ」と言うと、塁はボソッと低い小さな声で「いいよ」と答える。

一転、画面は明るくなって畑の中を走る車。いつになく穏やかな明るい表情で車を運転する塁、窓の外の風を手で受ける明香里。二人が車で向かったのは風力発電風車が並ぶ海岸。ここは塁の一番古い記憶のある場所。母親に抱かれて海に向かったところ「母さんは無理心中をしたんだと思う。僕だけ生き残った。どうしてあの時一緒に死んであげられなかったのかと思う」と話す塁。

聞いていた明香里は吹っ切るように「シーグラスを探して」と言います。「ガラスが割れて角がとれて丸くなっていくの」。塁が赤い破片を持ってきて明香里に渡すと目に近づけてこれこれという感じ。視力が少しは残っている様子。「ガラスもここまで削られたら誰も傷付けない。傷ついたことのある人は優しくなれる。たとえ傷を負ってもあの時の傷はこの先の幸せのためのモノだったって思いたい。このシーグラスは二人を繋ぐお守り」と言って塁に手渡します。

(ここまでがゆっくり丁寧に描かれる物語の序盤部分)

 ******(中盤で描かれるのは「天国と地獄」)

ここから転調、明るい画面に主題歌のメロディが流れ、塁のキックボクシングシーン。再開した塁のはつらつと躍動する軽快な動き。弾むように階段を上っていく塁。明香里の「お帰り」に「ただいま」と言って帰る塁。二人は一緒に住むことに。塁に帰る家が出来たのです。

配達の仕事先でゴールデンレトリバーを見た塁は子犬を買って来て二人で育て始める。名前を付けてといわれ「すくすくそだつようにスク」と名付ける。二人の家の改装を着々と進める塁、窓を覆っていた波板も外して光のさすベッドルーム。柔らかな光の中二人はベッドに座っている。明香里が手を差し伸べて顔を見せてと塁の顔を触り始めます、眉、目、鼻、口、耳と両手が滑るように塁の顔を見ていきます。二人は初めてキスを交わします。逆光の中の柔らかで優しく美しいキスシーンです。

以前から気になっていたノートパソコンの蓋に貼ってある点字の言葉に塁が「なんて書いてあるの?」に答える明香里。ロミオとジュリエット」の言葉で、ジュリエットの目を見たロミオが言うセリフ「彼女の瞳が問いかけている。僕は答えなくてはならないというの」。この最初の部分が映画のタイトルになっています。ここから塁の意識の中に『明香里の瞳の問いかけ(Your eyes tell.)』に『I will answer it.』がインプットされます。

塁はますますキックボクシングに励み、めきめきと腕を上げ試合も連戦連勝というスピード感あふれる生き生きとしたボクシングシーンが続きます。躍動する塁の体。明香里は陶芸のほかにも点字マッサージを独学で習得しようとします。かたくなだった塁の心もすっかり明るく優しくなり明香里の膝枕で横になるまでに。明香里が横になっている塁にうつ伏せになってと促して馬乗りになってマッサージを始めます。左手の甲に火傷の跡を感じて「火傷?」と問いかけますが塁はすぐ手を引っ込めて・・・後半、陰を宿す運命の不吉な暗示ですが、気を取り直したように塁が夢を語ります、「二人でお金をためていつか小さな工房を持とう明香里は器や花瓶を作って」と。

12月24日、クリスマスイブの試合の日。壮絶な打ち合いを制して塁は試合に勝ちますが左目が腫れあがってこのまま帰れば怒られると血抜きをコーチに頼みます。二人で引き上げるところに恭介が待っています。「アントニオ、さすがだな。表の世界では敵なしか。でもファイトマネーは大したことないだろうし、一緒にやろう」と言われ「戻らないと決めましたから」と答える塁に恭介の「またな」が不気味で不吉です。

開けて25日のクリスマス。明香里と塁はバスに乗っています。明香里が口ずさんでいるのは「椰子の実」の歌。この歌は「私にも帰る場所があるんだという歌」と明香里が塁に話します。一緒にハミングする塁。

訪ねた先は柏木家のお墓。明香里の両親が眠る。「こんにちは、大切な人を連れてきました」と両親の墓に向かって話す明香里。墓石に向かって「こんにちは」と頭を下げる塁。ここで明香里は5年前の事故の話をする。事故のきっかけはビルの上から火だるまの人間が落ちてくるのを見たからだった。その時、そのビルに、塁はいた。塁に殴られた血だらけの坂本が助けを乞う。「家族がいればわかるでしょ」と言われた塁は「俺に家族はいない」と答えたその時「警察だ」という声。驚く塁の背後で坂本が油をかぶってライターで火をつけ火だるまになって窓から飛び降りて自殺をはかる。思わず窓の外を見ると一台の車に衝突した車が事故を起こした。あの車の中にいたのが明香里、あの事故で両親を失い、視力を失ったのが明香里。墓石の日付を確かめるとあの日の2015年12月25日。間違いなく愛する人の不幸に自分は関わっている、原因は自分にある。

サンドバッグをうなり声と共に叩きつける塁。

雨の日、修道院の外でしゃがみこんでいる塁を見つけたシスターが食堂に招き入れて温かいスープを持ってくる。「今皆でオルゴール作ってるの、塁にも作ってあげる、曲は何がいい?」と話しかけるシスターに唐突に質問する塁。「過去の罪はどうやったら許されるのか?。「あなたは十分に償っている」と話すシスターに何も償えていなかった。それどころか幸せになってほしい人を何時だって不幸にしてしまう」と話す塁に「あなたには大切な人がいるのね」と気づいたシスターは「どうすれば罪は償えるか?」と問う塁に「今、捧げられるものを捧げるしかないわね。でもあなたを許していないのは、あなただけなのよ」と諭す。

帰ると、キッチン前が荒れている。明香里は部屋で料理をしているとき誤って転んで病院に。病院に駆け付けた塁に明香里は肋骨にひびが入ったと。医者は肋骨はコルセットで自然に治るが目の方が網膜剥離で手術をしなければ失明の恐れがあると伝える。

車いすの明香里を屋上に連れ出した塁。「どうして手術しないの?」と聞く塁に「私には塁がいるし、お金もいるし」と言う明香里。それに両親二人を亡くした事故の罰として目が見えないことを受け入れている様子。「このままでいいのこの方が気が楽なの、お金もかかるし」と答える明香里に「お金は何とかするから」「将来子どもが出来たり、新しい家に引っ越したり、幸せになった自分をちゃんと自分の目でみてほしい」と熱心に説得する塁。退院してきた家のドアに恭介のグループのタトゥーのマークがスプレーで大書されているのを見て驚く塁。

画面は一転して大音量の音楽と青い照明の盛り場。塁は急ぎ足で恭介の元へ直進、「彼女とは別れてきた。あの人を巻き込まないと約束してください」と恭介に頼む。「わかった。試合に勝ったら自由にしてやる」「ファイトマネーは?今すぐ」と言う塁に膨らんだ財布ごと投げつける恭介。

塁は裏の試合を引き受けたことをコーチに伝えている。「こっちに戻ってこれないぞ。チャンピオン一歩手前まで行ってるのに」と引き留めているが、塁の決意が固いのを知って「勝手にしろ!」と。

病院の廊下、手術直前の車椅子の明香里の前にしゃがんで明香里の目を見つめている塁に明香里が言う「塁の言う通り、二人の結婚式も、子どもも、引っ越した家も見たいし、塁の顔も見たい」と二人の明るい未来を見るために手術の決心をしたことを喜ぶ明香里。一方塁はこれが最後と目に焼き付けるように明香里の顔を見ている。見つめ合う二人は自然に互いの顔に手を伸ばしている。看護師に促されて車椅子の明香里が離れて行くのを目で追う塁。明香里は塁のお陰で暗闇の世界から光の世界へ。塁は明香里に生きる意欲と希望を与えられたけれど、今は贖罪の為に命を掛けて闇の世界へ行こうとしている。二人のすれ違う別れのシーンです。

ここから、一転する画面。音楽が鳴り響く。勢いを増すテンポと美しいメロディと激しく喘ぐリズム。家に帰って猛スピードで二人の暮らしの痕跡、運転免許証も二人とスクの幸せな写真も燃やし尽くす塁。一転、画面は地下の死闘の場面へ。どちらかが気絶するか死ぬまで闘うKO勝ちの闇の試合。恭介は競合する闇グループの相手に負け試合をプレゼントするつもりで「はみ出し者同士上手くやろう」と持ち掛けた。試合の相手は予告と違って塁とは比べ物にならないほどの大男の外国人に変わっていた。裏切り者は徹底的に制裁するつもりかと塁。ゴングが鳴り試合が始まる。歯が立たないほどの体格差に殴られ締め上げられる度に骨のきしむ効果音が怖い。投げ飛ばされたり顔面を殴られたりリングにたたきつけられる塁。しかし、負けるつもりのない塁は一瞬のスキをついて回転胴回し蹴りで相手の首を狙う。相手はもんどりうってリングに倒れ動かない。リングの上で大の字になって倒れている二人。一人は死んだように動かない大男だが白い塁の胸は激しく上下して、生きている。塁に賭けていたコーチに塁は倒れたまま拳を上げて勝利のアイコンタクト。

 ケイタイを持たない塁が電話ボックス。相手はコーチ。「言われた通り半分は明香里ちゃんにあとの半分は坂本〇〇さんに。誰だよ。お前二又かけてたのか?」「自分の所為で死なせてしまった人の奥さん」「明香里ちゃんの手術上手くいった。術後の経過もいい」「良かった。本当に良かった」「お前何処にいる?帰ってこい、早く帰ってこい、な」の呼びかけに、黙って受話器を置く塁。

外に出たとき一台の車が急発進して塁を跳ね飛ばす。倒れた塁に降りてきた男がナイフで背中を2回突き刺す。去っていく車の後部座席にサングラス姿の恭介。勝ってはいけない試合に勝った塁への制裁・・・   

ここで映画は終わる?のかと一瞬

***** ここから終盤

目が見えるようになった明香里ですが、塁がいない。目が見えなくてもいいと思っていた明香里に未来の希望の明りをともして手術を受ける決心をさせてくれた塁がいない。

立ち退きを求められている部屋の家具の運びだしの最中、階段に力なく座っている明香里に、アントニオ篠崎宛の荷物ですと渡された小包はオルゴール。明香里は送り主のシスターを訪ねて塁が育った児童養護施設修道院へ。シスターは塁の大切な人は貴女ね、と塁から聞いていたと話す。塁は貴女の傍にいる資格がないとも言っていたと車の事故の原因になった火だるまの男に自分も関わっていたことを責めていたと知る。

初めて知る塁の過去と事故の関係。アトリエで彫像の前にいる明香里。両手で見た塁の顔の感触を思い出しながら塁の顔の彫像を創る明香里だが、泣いている。

その2年後。小ぎれいなインテリアショップの白い店の前、車から大型のゴールデンレトリバーと一緒に降りてくる明香里。成犬になったスクだ。店の中は器や鉢や小物が置かれていて、明香里は店長となりマグカップを届けに来ていた。塁が語っていた夢を叶えたようだ。病院のマッサージのボランティアもしている。

病院の一室。明香里のポニーテールの髪を束ねているのは塁がシスターにもらったシュシュだ。ドアの手前の患者の佐藤に明香里は約束の手作りの湯飲みを渡しマッサージのボランティア。窓際で横たわっていた若い患者が気づいて顔を向ける。明香里には分からないが、塁だ! 明香里がマッサージに行く。佐藤が「その人ここに来てから2週間口をきいたことがない、喋れないんだろ」と。

恐る恐る目を合わせる塁。ボランティアの柏木ですと自己紹介する明香里。横になって背中をマッサージして何事か気づいた明香里は名札に目をやるが、高橋という別の名前。塁は固くなって必死にタトゥーの跡を「火傷?」と明香里がきいたことがあった左手の甲を隠している。今、明香里の目は見えるが塁の顔は知らない。塁の顔を見たのは手だった。手で触らない限り塁とは確認できない。声を聞かない限り塁とは分からない。明香里はまた来ますと言って去っていく。右手の甲を隠すため重ねて握っていた左手がほぐれると落ちたのはあの赤いシーグラス明香里と塁を繋ぐお守りでした。

目が見えるようになった明香里と再会できた塁はなぜ名乗らない、なぜ名乗れない。彼は未だ自分は愛する人を不幸にしてしまう、愛する人と共に生きる資格はないと思い詰めているのか。口元は何度か『あかり』と言ってみるが声にはならない。去っていく明香里を目で追いながら声を殺して嗚咽する塁。胸が締め付けられるようなシーンです。

一転、小雪が降る窓の外を見ている車椅子の塁の後ろ姿。

寝たきりから座れるようになって少しずつ回復しているのか。

ここでまた暗転 都会のビル群。

明香里の店が見える。明香里がスクを連れて外に出るのを見計らって松葉杖の塁が店に近づいていく。見上げると店の名前に塁の洗礼名の「Antonio」。中に入ると、塁が明香里に語った夢が実現している。

真ん中の展示物の中に金木犀の苗が植えてある器。手に取る塁。店の奥に目をやるとシスターの姿が浅く彫り込んである木製のオルゴールが。ふたを開けると、このメロディは「椰子の実」。涙を流す塁。明香里によるとこの歌は「帰る場所がある歌」。塁にとって今帰る場所は?

松葉杖で外に出る塁。丁度そこへ帰ってきた明香里。気づいたスクが塁を追っかけ、追い付いて喜んで身体を預けるスクに松葉杖ごと倒れる塁。明香里が飛んできて「大丈夫ですか?怪我は?」顔を見て「もしかして病院でマッサージした?」と気づくが、逃げるように立ち去る塁。

店に入って金木犀が売れたのに気づく明香里、店員から金木犀を買った人がオルゴール椰子の実の曲を聴いて泣いていたとも。その人松葉杖の? スクが近づいて行ったのも! 塁に気づいた明香里が外を追いかけるがすでに塁の姿はない。追っかけて路上に泣き崩れる明香里。手に持っているのはオルゴール

暗転。(またここで終わる?かと思った)

塁の小さな歌声、♪とお~きし~まより、な~がれよ~る、やし~のみひとつ

杖を捨てて、海に向かって歩く塁、手には赤いシーグラス

履いている靴は2年前のあの日新調したスニーカー

ルイ!と呼ぶ声、振り返る塁の目

「ここじゃないよ、塁の帰る場所は。一緒に帰ろう」

「私の目を見て」目と目を見合わせる。「お帰り

ただいま」。明香里に抱きしめられて塁がもう一度「ただいま

死の誘惑の間際で思いとどまれた塁。

この世に引き戻してくれたのは明香里。

柔らかい西日を正面に受けた塁の目の涙があふれる

明香里と塁が抱きしめ合う姿を映して映画は終わる。

 

 (抜けた大事なシーンや言葉があるかもしれませんが・・・)

☆☆☆(3)では、これを元に考えてみます

 

cangael.hatenablog.com