「SWITCHインタビュー達人達 選 ”村木厚子X今野敏”(前半)」(組織が生かす個人)

◎本題に入る前に、昨日のブログで取り上げた想田さん・柏木さん夫妻の夫婦別姓訴訟の判決が出ました。当然とはいえ『別姓でも夫婦』が認められました、というか「婚姻自体の有効」を認めざるを得ない。但し「夫婦同姓」の民法や戸籍法については大きな宿題が:

 
 
 
想田和弘 「精神0」公開中
 
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速報:僕と柏木規与子が原告の夫婦別姓確認訴訟、先ほど東京地裁で判決出ました!別姓でも僕らの婚姻は成立しているとの判断。実質的な勝訴です!4時から記者会見。

◎想田氏のツィートで、菅首相、緊急事態宣言が出ても五輪開催に影響なし!??とは:

 
 
 
想田和弘 「精神0」公開中
 
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この分だと、緊急事態宣言を発令中でも五輪やったりして。この際、そのくらいやって自己矛盾を天下に示してほしい。→菅首相、東京に緊急事態宣言を発令した場合も「五輪に影響ない」 | 毎日新聞
菅首相、東京に緊急事態宣言を発令した場合も「五輪に影響ない」
 菅義偉首相は20日夜、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を東京都に発令した場合、東京オリンピックの開催判断に影響するかどうかを問われ
、「オリンピック(への影響)はないと思っている。安全・安心な大会になるように政府として全力を挙げていきたい」と述べた。首相官邸で記者団に答えた。

◎それでは、本題に。村木厚子さんはこのブログをスタートさせた年、2009年にかなり取り上げていました。その年の9月には民主党政権が誕生。誕生に先駆けて権力側からの謀略的な邪魔が入ります。その一つがこのでっちあげ事件でした。ターゲットは民主党の国会議員だったのではないかと思います。とにかく政権交代を阻止するために国家権力はこういう事をして罪なき者を陥れることがあるというのを知りました。与党の公明新聞に「民主党 任せられない」と言う記事があり、こういうムードを作りたかったのですね。 

公明新聞:2009年6月8日

民主党 任せられない

郵便不正で指摘される国会議員との関係

 障がい者団体向けの割引制度を悪用した郵便不正事件をめぐるマスコミ報道で、民主党の石井一副代表と牧義夫衆院議員のかかわりが指摘されています。

大阪地検のでっち上げ事件は忘れられない事件であり、その犠牲となって拘置所に入った村木厚子さんは忘れられない人です。その村木厚子さんが会いたい人に選んだ作家とのSWITCHインタビュー。内容が多岐にわたりとても面白いので文字起こししてみました。お相手の今野敏(こんの・びん)氏は警察小説をたくさん書いておられる小説家。初めて知りました。村木さんは熱烈なファンだとか。2020年4月11日に放送されたものだそうです。

「村木厚子×今野敏」 - SWITCHインタビュー 達人達 - NHK

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 前半は、今野氏の自宅を村木氏が訪ねて、主に組織について。多様なメンバーがチームとなる組織は困ったときは必ず助けてくれる人が現れる…これは私の場合も職場ではなくて幾つかのボランティアの組織で体験していますので共感しながら聞きました。

後半は図書館を選んだ村木氏に今野氏が郵政不正事件から官僚人生と生い立ちなどを・・・そして最後は二人がこれからの若い人たちのために頑張りましょうと・・・文中の太字やアンダーライン個所はほとんど番組が字幕として流し強調した部分です。お二人の会話、ちょこちょこ抜けたりしています。(ピンクの太字by蛙)

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村木厚子X今野敏」SWITCHインタビュー達人達

   <えん罪から事務次官

  ナレーション(N):世間が村木厚子の名前を知ったのは2009年の郵政不正事件。局長、当時身に覚えのない罪で突然逮捕されたが、無実を訴え続け無罪判決を勝ち取った。仕事に復帰したのちは要職を歴任し、官僚のトップである事務次官にまで上り詰めた。4年前に退官、現在は民間企業の役員や大学の客員教授を務めるなど多忙な日々を送っている。

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   <エリートはミステリーがお好き>

一見お堅いイメージの村木だか、実はミステリーものが大好き。人気コミック「名探偵コナン」は全巻読破、アニメは欠かさず録画しているという。また、警察の組織的操作を描く警察小説にもはまっている。なんと、拘置所の中でも読んでいたという熱烈ぶりだ。

村木:「あの頃、心配していたことがあって、(逮捕されたことで)警察小説が嫌いになって読みたくなくなったら私の人生にとってものすごく損失だと思ったんですけど、結局嫌いにならなくてよかったなと思ってます」

 そんな村木が会いたいと指名したのが、小説家、今野敏警察小説の第一人者と呼ばれる男だ。

   <警察小説のヒットメーカー>

200冊余りの自作の中で警察小説は半分を占めている。読者から絶大な支持を得てきた。代表作「隠蔽捜査」はシリーズ累計258万部、吉川英治文学賞新人賞、山本周五郎省などを受賞している。「隠蔽捜査」「ハンチョウ」などドラマの原作となった

作品も多い。

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今野も村木に対して特別な興味を持っていた。偶然にも最新作「警視庁強行犯係・樋口顕 焦眉」(幻冬舎)は、東京地検特捜部が誤認逮捕に突き進むストーリーで「厚労省の女性キャリアに罪を着せて、五か月も身柄拘束し・・・」と村木のエピソードも入っている。

今野:やっぱり、あの事件は大変なことで関心があったんですよ。冤罪というものに無関心ではいられないので。(村木さんは)屈しなかった、取り調べや長い拘留に、その意志の強さはすごいなと思っていて」

N:組織のトップまで上り詰めた村木と、外側から組織を描いてきた今野。異なるアプローチで関わる達人たちが理想の組織像を語り合う。

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Vol.236 忖度はもうたくさん

春時雨の中、村木が今野の自宅を訪ねた。沖縄の守り神シーサーが迎える今野の自宅。衣姿の今野、そのワケは地下に。空手の道場だ。

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今野は20年前から、沖縄古来の伝統的な小林流空手団体・今野塾を主宰。いま主流の競技空手とは異なり、型を通してそこに秘められた文化や実践の技を学ぶ塾生はおよそ100人、大阪、広島、ロシアにも支部がある。

   <警察小説の裏に琉球空手?>

今野:競技の型とは少し違って、もともと琉球空手は人に見せるためではなく鍛錬のため

村木:動きとか、止めるところがとってもきれいですね。

今野:ボーズからポーズまでの動きをいかに単純に無駄なく動かすか組織と一緒ですね。

村木:ドキッ!

N:そんな空手家の顔を持つ今野、一体組織をどうみているのか。

今野:我々は同い年です、1955年生まれの同い年なんですよね。

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村木:うれしいな~ 実は、私が今野先生の本を読み始めたのは丁度あの事件の頃、この10年間で80~90冊ぐらいの本を読んだ

今野:いや~有難い話です

村木:別に私が事件に巻き込まれ警察や検察をどうこう思ったかっていうんじゃなくて、凄く警察小説に惹かれるんです。ところで、どうして警察小説なんです?

今野:小さい頃から憧れがあって、たぶん制服に対するあこがれ、あとは、ふと気づいたんですが、武力を持った公務員って何だろう、これは江戸幕府じゃお侍さんじゃないんだろうか・・・江戸幕府では官僚は全員 侍ですよ。その佇まい、存在は日本人の心に合っているんじゃないか。ま、私の小説の主人公って、そんなに大したキャラじゃなくて、団体で捜査することが多く、スポーツでもチームが好き

N:今野の小説は「組織小説」ともいわれている。30年前に出した初めての警察小説、安積班のシリーズ、その当時から組織で働くことをテーマにしてきた。

   <警察小説で見せる「組織」>

主人公の刑事安積剛志は5人の部下を持つ係長、今野が頻繁に描写するのは”組織の中で悩む“安積の姿だ。

村木:すごく最初好きだと思っていたのは、組織と自分の間の小さな葛藤とか、上司と部下との間の自分のポジショニングとかに悩む主人公が多い。ふつう主人公はあんなに悩まないのが多いんじゃないかと思うんですけど…

今野:一般の人はみんな悩んでいますよね。悩むことがいちばん大きな問題じゃないかと。悩んでいるときに誰かが必ず助けてくれるという思いがあるので、思い切って悩む。

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村木:組織の良さってそういう部分ですね。

今野:組織とかコミュニティーの良さって、そういう部分ですね。

村木:辞めてよく分かりました。感謝してるつもりなんですが、辞めてみたら、ものすごく実感しましたね~

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今野:(チーム作品には)原型があるんです。あのサイボーグ009、あれってすごく画期的ですよね。今まで9人を主人公にした漫画なんてなかった。

N:石ノ森章太郎の代表作「サイボーグ009」。手術によってそれぞれ特殊能力を持った9人のサイボーグ選手が裏と戦う物語。

   <チームが個人を生かす>

その設定を受け継いだ今野の作品「ST警視庁科学捜査班」。

突出した能力を持つ捜査員たちが事件に挑み、さらにある特徴を加えた、皆、何かしらの恐怖症を抱えているのだ。

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(ドラマ「ST赤と白の捜査ファイ」写真日本テレビ

村木:とっても大きな欠点があって、かつとても特殊な特技があって、それがみな違っていて、それぞれがチームになるから初めて生きる、一人ではどうしようもない、という・・・こういう描き方は意識して作られるんですか? 

今野:意識してというか、そういうのが多分好きなんですね。私自身もSTの中の恐怖症のほとんどを持ってるようなもんで、先端恐怖症で、閉所恐怖症、ま、対人はないんですが、パニック障害はやったことがある。何かに飛び出して優秀な人って、とんでもない欠点があるような気がする。それをお互い補い合えば、もの凄い強いものになると思う。但し人間同士なので必ずそのペアリングが上手く行くとは限らない。だけど5人くらいだと何か補い合えるので、やっぱりチームって、それが理想だと思う。

 同じタイプの人間を集めて一つの目標に向かってヤレー!というのは軍隊。そうではなくて、長所と欠点デコボコのやつが補い合いながら作る方が達成力があるような気がする。

村木:そういう人って凄く大きなハンディを持っているんですね。でもハンディがあっても、仕事って、ハンディの部分でやらないで得意な部分でやればいい欠点を持ってる人でもチームに参加してチーム全体として大きなことが出来る。

今野:適材適所という言葉だけはあるんだけど、ちゃんとできる人がいない。ちゃんとできたのは豊臣秀吉ぐらい。この言葉はもっと突き詰めて考えた方がよい。

村木:ちゃんとできたのは秀吉ですか・・・

  <忖度なし!の異色の主人公>

N:組織の中の個人を描く今野の作品の中で異色の主人公が登場するシリーズがある。「隠蔽捜査」の竜崎伸也警察庁のエリート官僚という設定。

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竜崎は組織と国のために身を捧げるという強い信念を持っている。原理原則を守るためには周囲と衝突することを恐れない。空気を読んで悶々と悩むこともない。出世欲も隠さないこの真っ直ぐぶりは周りからは変人扱いされるが忖度せずに正論を貫く竜崎の行動は痛快だ。

 TBS月曜ミステリーシアター「隠蔽捜査」第1話より。竜崎のセリフ「警察を守るためにはいずれ分かることは隠蔽すべきではない。私はキャリア官僚としていつでも責任を取る覚悟はある。私は正しいことをして国を良くしたい」「確かにお前はきれいごとが多すぎる」

   <厚子のヒーロー竜崎>

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村木:私のヒーローは竜崎なんですよ

今野:私の憧れでもある。私も、とんでもないあんな生き方は出来ない。

村木:ああいう生き方が出来たらいいな~と思いますね。

今野:そうですね~

村木:実は、読書記録がありまして、本の名前といつ読んだという事を必ずメモを取っています。

今野:メモ魔ですか?

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村木:そう、メモ魔。昔から読んだ本は必ずメモすることにしていて・・・

これは、お風呂の中で第一話を読んで「思わず本を抱きしめて数回キスをする。竜崎らぶ」と書いています。

   <シンプルに考えよう> 

 今野:悶々と悩む主人公だったので、全く悩まない人物を考えた。どうやったら悩まないかと考えたら、いちばん正しいことを正しい方法でやるのがいちばん悩まない方法。それって、あちこち軋轢を生むんですが結果的にはいちばん楽なんです。

村木:周りがみんな忖度しなきゃ~と思ってる時に、忖度しなくて正しいことをスパッとやっちゃうじゃないですか。周りがどうしてそんなこと出来るんだって茫然とする、あの描写が出て来ると気持ちいいな~と思うんですよね。

今野:水戸黄門の印籠ですよね。

あの、正しいことって多分シンプル合理的なことは実にシンプル。それをみんなフツーに追い求めていれば、なんて素敵な世の中になるんだろうと思います。

村木:単純で、しかも多分美しいはずなんですよね

今野:そうはならないので、そう思ってくれる人たちが少しでも増えてくれればいいな、特に権力の中枢にいる官僚や政治家

   <大きなハンコを持て>

それから竜崎が臆面もなく「出世したい」という、これはね出世すれば権限、裁量権が増える、これなんですよね。

村木:そうですね。だから無駄だと思ってることは止めさせられるし、間違っていると思ってることは変えられるし。あの、40歳くらいの時に言われたことが「辞めたらダメなんだよ」。やっていることを理解してくれる人が組織に残って大きなハンコを持つようにならないとだめだよと言われた。ここにいて、大きなハンコを持つ、つまり大きな仕事が出来るポジションに行くってことは、期待にこたえることだと思えたので・・・

今野:ちゃんとした理屈と志を持った人はどんどん出世してほしいです。

村木:官僚の世界にいると背負っている荷物の重さはよく分かっているし、どんどん重くなっていると思う・・・

今野:事務次官をやられた方がそういう風に考えているってことは救いですね。竜崎みたいな方ですね。

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村木:そうなりたいな~と、やはり竜崎は私にとって憧れで、そう出来たらどんなにいいだろうと思うし、一人一人他の主人公のように葛藤しながらでもそっちの方向にちょっとでも近寄ってもらったら間違った方向へ行かないな~とホント思いますよね。

   <流行作家の多彩な顔>

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N:1978年、上智大学在学中に「怪物が街にやってくる」で作家デビューした今野、レコード会社に3年間勤務したのちに執筆業に専念。しかし小説の仕事はなかなかこなかった。そこで暇だからと始めたのが模型製作。プラモデルでは物足らず部品を一から削り出すフルスクラッチビルド製作にはまった。今やセミプロの腕前。毎年、世界最大級の模型イベント、ガレージキットイベント「ワンダーフェスティバルに造形化として出展、

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さらにレコード会社時代の仲間と自身の音楽レーベルを立ち上げCD制作、これに空手指導、執筆多彩な人生を歩む。対照的に厚労省という一つの組織で生きてきた村木は本人に仕事の極意を尋ねた。

   <情報はフローだ>

村木:役所ではインプット、アウトプット、全く迷わなかった。今は、講演に来てくださいとか本を書いてくださいとか、アウトプットだけ言われて、何か空っぽになりそうな気がする。

今野:吐き出した方ながいいですよ。ダムみたいなもので放水しないと入ってこない

村木:持ってるものが小さいので…

今野:僕も小さいけど、情報はフローの方がいい、ストックはあまり役に立たない

村木:そうかー

今野:インスピレーションは突然来るんじゃなくて、やってる最中にくる。書いているうちに。書かないと頭が働かない。起承転結まで作ってしまわない。

村木:何割くらい?

今野:3割あったら書ける。若い頃、始めた頃10年ぐらいは、きちっと計画を立てないと怖くて設計図通りで、設計図作って力尽きる。そうやって書いたものはつまらない。

N:作家生活42年、当初から守り続けているルールがあるという。

   <100% ハッピーエンド>

村木:最近は、スカッとするより、ほっこりする。

警察小説読んでなんでほっこりするのか・・・

今野:救いは大切だと思う。書き始めたときから全部ハッピーエンドと決めている

これは俺という作家の役割。

村木:変わってない。  今野:変わってない。

村木:ミーハーなことお願いしていいかな。

サインしてもらおうと思って・・・

決められないので2冊(と…すっかりファンになって)

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XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX  後半につづく