連ドラ後半「桜の塔」と前半終「着飾る恋には理由があって」に観る『インフルエンサー』

☆コロナの為、俳優さんたちの活躍の場が映画よりはテレビドラマになってきたのもあるのか、春の連続ドラマの量と質は何を見たらよいのか困るほど盛沢山。どれも面白いとは思うのですが、相性や好み、時間帯などもあって、随分見逃したりしています。その中でも、脱落しなくてよかったと思った「桜の塔」と、1時間の半分以上はゆっくりと流れ4分の3ぐらいから怒涛の展開になる「うちキュン・ラブストーリー」と言われている「着飾る恋・・・」の意外と面白いテーマについてまとめてみます。

★★テレビ朝日系木曜日9時「桜の塔」

f:id:cangael:20210521100738j:plain

日本全国で活動する警察官は約25万人。その頂点に君臨するのが警視総監である。警視庁刑事部捜査共助課理事官上條漣警視はそのたった一人しか就くことが許されない椅子に座ることを目指す野心家である。総監になるためにはどんな手段も選ばない冷酷な姿勢を、漣の幼馴染である警視庁刑事部捜査一課主任・水樹爽警部補は危機感を感じながらも彼を気にかける。漣がそこまでして総監の座を狙う理由は、幼少期に起きた父親で元刑事の上條勇仁の死にあった。漣は父親の死の真相を明らかにするには警察組織で一番の権力を持つ警視総監にならなければいけなかったのである。警視庁内に存在する「東大派」「薩摩派」「外様派」の派閥争いや凶悪犯罪などに巻き込まれながらも「桜の塔」を駆け上がっていく漣の戦いが始まった。

f:id:cangael:20210521100805j:plain

 警察内部の壮絶な出世バトルとその中でトップを目指すキャリア警察官上条漣(玉木宏)と、幼馴染でノンキャリアの警察官・爽(広末涼子)。上条は同じ警察官だった父の死に刑事部長の千堂大善(椎名桔平が関係していることを突き止める。一方、千堂の娘である優愛(仲里依紗とは婚約している。前半はかたき討ち的な怨念のすさまじさと警察内の派閥争いと出世争いの凄まじさにちょっとついていけなくなりました。それに玉木宏さんの「竜の道」も思い出して、同じ路線なら辛いし、もういいか…と思っていたのですが、前回の前半の最後、千堂に徹底的にやられて負けを認め漣は千堂の娘の優愛との結婚式を挙げ不敵な笑みを漏らします。

f:id:cangael:20210521100833j:plain

これは、面白くなりそうと思って後半の第二部からはきちんと見ようと思いました。5年後の上条は、親の敵討ち、そのための出世という個人的動機ではなくて、警察内部から悪の膿みを一掃するという目的のために一人ではなくて仲間と新たなグループと薩摩派の実力者だった権藤(吉田鋼太郎の後ろ盾を得て『改革派』という派閥を立ち上げます。相手は汚い手を使ってでもトップを狙う今となっては義理の父親でもある千堂大善です。後半は別ドラマのような観もあって楽しみです。

★★TBS系火曜10時「着飾る恋には理由があって」

f:id:cangael:20210521105828j:plain

真柴くるみ(川口春奈はお洒落なインテリアショップで働く広報のインフルエンサー。仕事を兼ねたインスタグラムはフォロワーが10万人。求められる自分を意識していつもメイクやファッションにも気を配る頑張り屋さん。社長の葉山(向井理の商品選びのセンスやモットーにも影響を受け尊敬と憧れで7年間慕い続けているらしいが、社長は急に姿を消してしまう。

シェアハウスの壁一つ隔てた隣に住む藤野駿(横浜流星スペイン料理店を任されながら自分の所為で2年前に店を潰した過去を持つ天才料理人。その失敗が切っ掛けで一転生き方を変えて、キッチンカーのオーナーになり月最低10万を稼げればあとは自由気ままに生きることをモットーにするミニマリストスマホはどこかにあるが携帯しない。

正反対の二人だが、駿は隣に越して来たくるみが気になり何かと「無理するな」「着飾る前の方がいい、アフターよりビフォーがいい」と声を掛けている。どうも過去の自分と重なるようで自分のような苦労と失敗をしないようにという彼なりの親切と心配からのお節介みたい。一方、くるみは反発しつつも駿の言葉に納得して少しずつナチュラルな自分に近づいている。ふとしたきっかけでお互い意識し始め、「好きなんじゃない?」「好きかも」と二人の告白のようなものもあって「両想い」に。でも、駿がハトコでカウンセラーの寺井陽人(丸山隆平に自分のことを「ただのお隣さん」と言っているのを漏れ聞いたくるみには駿の真意が分からない。

さて、おそらく10話あるドラマの丁度半分の5話では、いつも陽気で多弁でさっぱりしている駿の心の内が見えてくる展開。

陽人(はると)の電話相談者が仕事で評価されないことで悩んでいて、ある日、駿のキッチンカーを乗っ取って運転席に閉じこもるという事件を起こした時、社長なきあとの職場で、同じように自分はもっと役に立ちたいのに求められていないのではと感じ始めている真柴くるみもいる前で、駿は「誰かに必要だって言われて評価される、そういうのが幸せ? 俺は自分で決めたい。自分の価値は自分で決める、誰にも左右されない。そうなりたいと思う」と自分に言い聞かせるように。目が覚めたように悩みから解放された相談者。

そして同じ思いの真柴にも、この言葉は効き目が。キッチンカーで二人がハウスの駐車場に戻って先に車から降りたくるみ。振り返って運転席の駿に「正反対だけど私に無いものを持っている藤野さんのことをもっと知りたい、そう思える間は一緒にいる。ながれるまま、水の如く」と伝える。散歩の時、駿が言った上善は水の如し、水の如く流れるまま、それが一番」をくるみは覚えていて自分のこととして伝えたのだ。

f:id:cangael:20210521161637j:plainf:id:cangael:20210521161618j:plain

いつになく真剣な面持ちで聞いていた駿は「そう、自分が思うままにね」と言いながら車の運転席から手を差し出してくるみの頭を抱え、そのまま身を乗り出してキスをする。そのあと駿は、週末の釣りにくるみを誘います。翌日二人は犬のこうじ(糀)を連れて散歩へ。

f:id:cangael:20210518233036j:plain 

ドラマは、その後数分で急展開。日本に帰国していた葉山社長にくるみが偶然出会い、そして、駿のベッドのそばの床に敷いた布団の中で眠る葉山。ベッドの布団の中、目覚めるなり、なんでよりによってこんなことにと苦々しい顔の駿。

最後に、次回予告後のお決まりの駿目線のコーナー、くるみが自分のことをただのお隣さん」と駿が言うのを聞いた後の駿の言葉のつづきが明かされます。「ただのお隣さん。だってまだいるからさ…マメシバ真柴の中に。まだいるからさ、例の社長さんが。だからこれ以上は何も言えない。気持ちが残ってるうちは、やめとく」と思っていたのですね。このシーンは時差がありますから、運転席から乗り出してのキスは、そんな臆病で卑屈?な思いを乗り越えた自分の感情に素直な思いのままの表現だったということです。

着飾るくるみを「もの哀しい」と言って見ていた駿ですが、本当は自分の心に鎧を着せていたのは駿の方じゃないか。傷つくことや裏切られることを恐れて自分の気持ちにブレーキをかけ続けている駿。駿の方こそ本心を隠す鎧を着て、悲観的な方向に先回りして自分が傷つくことを避ける生き方をしているのではないか。その事に気づかせてくれたくるみの言葉でしたし、また、気付いた駿でした。この辺りの繊細で的確な演技が横浜流星さんはさすがに巧い。

恋とはお互いに影響(インフルエンス)を与えたり与えられたりして二人の人間関係を築き上げていくマジカルな瞬間のこと。駿の助言に素直、かつ自分を変えることに勇敢なくるみが、今度は駿のトラウマを克服するためのインフルエンサーになっていくのでしょうか・・・二人の瑞々しい演技が際立つドラマになっています。

それにしても駿がいちばん恐れていた社長が同じ部屋で眠っている!なんて・・・

 やはり面白いTBS火曜10時のドラマです。

f:id:cangael:20210518232656j:plain f:id:cangael:20210521141134j:plain

くるみの最初と最後のシーンでその回のくるみの変化を表したりドラマの構成が複雑ですが、慣れると面白い。駿の心の種明かしのコーナーは「Bサイド」とか「駿目線」と呼ばれていますが、この駿の本音の部分をくるみは知りません。ドラマの視聴者はそのくるみと、くるみが知らない駿の本音を最後の数分で知らされて、ままならぬ現実を思い知ることに。そうだったの苦しいね……とか、なんで言えないの?とか、だから誤解されるのよとか・・・あるいはドラマ制作者は、視聴者が録画していることを前提に、駿の本音を知った上でもう一度二人のやりとりをトレースして見ることを奨励しているのかもしれません。

毎回のように真柴くるみは駿の影響を受けて薄皮を剝ぐように、一つづつ余計な着飾りを捨てて行く。今回はどこかデイトスポットへ行きたいというくるみに、駿は犬のこうじ(糀)を連れて近場の公園デイトに誘う。仕方なく、でも外に出るからには念入りにお化粧してアレコレ服を選んでいる間に駿はお弁当用のサンドイッチを作ってしまう。ボリュームとカロリー満点のエルビスサンド。”悪魔のカロリー”とも言うらしい。

f:id:cangael:20210521062508j:plain f:id:cangael:20210521063331j:plainf:id:cangael:20210521063300j:plain

エルビスプレスリーが好んで食べていたサンドイッチだそうです。

レシピ:食パンにピーナッツバターを塗って、焼いたベーコンを並べて、縦に切ったバナナをバターと砂糖で炒めてベーコンの上に並べて、その上に食パンをのせ、すこし押さえてパンの両面をこんがり焼いて、それを半分に切って出来上がり

f:id:cangael:20210521062640j:plain f:id:cangael:20210518234012j:plain

この時のくるみのファッションと、最後、駿が引き寄せて車から優しいキスをして週末の釣りの約束をした日の翌日?こうじを連れての散歩の時のくるみ。オーナーの香子(夏川結衣さんに「いいの?」と言われるほどのスッピン、コンタクトレンズも外している・・・でも「イイんです、このままで」と。やっと、駿の「そのままがいいの、ビフォーがいいの」になれました。