Eテレ「ルーツのバトンを受け継いで~フォトジャーナリスト・安田菜津紀~」(1)

◎最近の菅元首相の橋下氏の弁舌の巧みさをヒトラーになぞらえたツィートを、維新が党として抗議するという騒ぎで、テレビのコメンテーターとして出演していた津田塾大の教授が橋下氏の肩を持った発言をしました。何か言われると「ヘイトスピーチ」と言い返せば相手は黙ると思ってか、見当違いの「ヘイトスピーチ」濫用が目立ちます。最近、ご自身に対する『差別』ツィートに対して損害賠償を求める裁判を起こした安田菜津紀さんは、「ヘイトスピーチ」についてツィートでこう書いておられました:

菅氏が橋下氏の名前をあげ「ヒットラーを思い起こす」とした投稿に、テレビ番組の出演者が「ヘイトスピーチを禁じるフランスやドイツでは処罰の対象となる可能性が高い」と発言。龍谷大学金尚均教授は、「ヘイトスピーチではない」と明確に否定します。

外国人差別の問題に取り組んできた、龍谷大学法学部金尚均教授は「これはヘイトスピーチではありません」と言い切る橋下さんは国籍、民族、出自など特定の属性を理由に誹謗中傷されているわけではないので、フランスでもドイツでもヘイトスピーチには当たりません。ヘイトというのは差別を煽動し、特定の属性をターゲットにして同じ人であることを否定して、人間の尊厳を侵害し、マイノリティをより弱い立場に追いやるものです。社会的に危険だからこそ、侮辱罪や名誉棄損などとは別に規制しているのがフランスやドイツの姿勢です」

🔲毎日新聞でも安田菜津紀さんを取り上げて:

安田菜津紀 Dialogue for Peopleさんがリツイート

 
 
 
 
 
 
 
@mainichi
差別が禁止される日はいつ mainichi.jp/premier/politi 昨年12月、2件の差別書き込みに対し、訴訟を提起したフォトジャーナリストの安田菜津紀さん。「表現の自由は差別の自由ではない」と語ります。
 ※本記事では訴訟の内容をお伝えするために、差別文言を記載している箇所がありますのでご注意ください。  
 フォトジャーナリストの安田菜津紀氏は毎日新聞政治プレミアに寄稿した。ヘイトスピーチは、社会的マジョリティーの側との力の不平等を背
景に、矛先を向けられた側に恐怖心を抱かせ、『声をあげたらまた言葉の暴力にさらされる』という沈黙を強い、日常や命の尊厳を深くえぐるものだ
」と語った。  安田氏は、ツイッターで出自に関する差別的な投稿をされ、人格権を侵害されたとして、西日本に住む男女2人にそれぞれ195万
円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした
 安田氏は「2016年、多くの人々が声をあげ成立したヘイトスピーチ解消法は、差別の連鎖を食い止めるための大切な一歩であったことは間違いない。ただ、この法律はあくまでも理念法だ。もちろん、表現を制限する法律を制定するにあたり、恣意的な運用をどう防ぐのかという議論は欠かせない。それを前提にしつつ、差別を『禁止し、終了させる』ための枠組みを前進させるときではないだろうか」と訴えた。

🔲NHKEテレハートネットTV・生きづらさを感じるすべての人へ」という番組があります。水曜の夜7時から30分の番組を、たまたま新聞の番組欄で安田菜津紀さんの名前を見たので録画予約しました。夜7時に友人から電話でお知らせがあったので、忘れていた私はリアルタイムで番組を見ることが出来ましたが、録画しておいて良かったと思う内容でした。

「ルーツのバトンを受け継いで 〜フォトジャーナリスト・安田菜津紀〜」

世界中を飛び回り、貧困や難民の問題について発信を続けるフォトジャーナリスト・安田菜津紀さん。今、日本で生きる外国ルーツを持つ人たちに取材した新刊を準備している安田さんを突き動かすのは、出自を明かすことなくこの世を去った在日コリアンの父親の存在。入管施設でスリランカ人女性が亡くなった問題やヘイトスピーチなどに目を向け、差別を生まない社会のあり方を模索する安田さんの思いに耳を傾ける。

◎見逃した方は2月8日までTverで見ることができます:

 
 
 
 
 
 
安田菜津紀 Dialogue for People
 
@NatsukiYasuda 2月2日
ヘイトスピーチとは何か?も改めて伝えたかった。ハートネットTV、2/8の20:29までご覧になれます。ウィシュマさんのこと、京都や川崎でのヘイトクライムのこと、ルーツを隠し生きた父のこと。ヘイトを含む映像も流れるのでご注意下さい。でも、被害実態をしっかり伝えるもの。
【毎週月~水曜日 Eテレ 午後8:00から放送】 世界中を飛び回り、貧困や難民の問題について発信を続けるフォトジャーナリスト・安田菜津紀さん。

◎内容は、スリランカのウィシュマさんとご自分の父親についてと川崎の「ふれあい館」。最初のウィシュマさんの部分を書き移してみます:

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ナレーション(N): その人はカメラを手にどこへでも駆け付けます。

          フォトジャーナリストの安田菜津紀さん。

学生時代から東南アジア、中東、アフリカなど世界各地を飛び回り、難民や貧困などの社会問題について発信を続けてきました。

去年10月にはスリランカへ。日本の入管施設で亡くなった女性の故郷を訪ね遺族の声に耳を傾けます。

そして、今年、安田さんは一冊の本を書きあげました。「あなたのルーツを教えてください」。テーマはルーツ。日本に外国人に向けられる差別の問題を見つめました。

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安田:「あいつは何々人だから」「あいつは日本人じゃないから」という非常に雑なくくりの中で差別、偏見は生まれ増長されてしまう。自分自身のルーツを隠さなければならない社会というのが決して豊かな社会とは言えない

N: 安田さんがルーツに拘る理由。それは父、清達さんが在日コリアン2世であり、その事について生涯一度も語ることなくこの世を去ったという事実です

なぜ、父はルーツを隠し続けたのか、安田さんは自らに問い続けてきました。

在日韓国人女性「子どもを日本の学校に入れるじゃないですか、そうするとすごい差別」

N : 沈黙を強いられてきた人たちに寄り添いながら安田さんは日本の社会に続く差別の構造を明らかにしていこうとしています。

安田:差別なんて昔の話だよ、古い問題じゃないか、ということではなくて、今も祖父母、父が生きてきた時代と地続きで負の構造は脈々と受け継がれてしまっている。

N : どうすれば負の連鎖を断ち切ることができるのか、安田さんの眼差しを通して考えていきます。

     ルーツのバトンを受け継いで

(スタジオに入ってきて)

安田:自分の写真をこんなに大きくしてもらってるとは思わなかったので、ありがとうございます。

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(お幾つです?)3,4,5歳くらいかな~私、無茶苦茶、泣いてますよね~

N : 去年3月、安田にとって衝撃的な事件が起こりました。

安田:スリランカの方が亡くなったというニュースを聞いて、あっ!また!起こってしまったか、という愕然とした思いがあったんですよね。

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アナウンサー「名古屋入国在留管理局に収容されていたウィシュマ・サンダマリ(享年33歳)が亡くなった問題。入管施設での長期収容の実態が改めて浮き彫りになりました。

2007年以降、施設内で亡くなったのはウィシュマさん含めて7人、その内5人が自ら命を絶っています」

安田名古屋入管内で起きてしまったことそのものに憤りも感じるし悔しさも感じるんですけど、一方で、それらは、この社会の中で起きることを許してしまった自分自身にも感じたことでしたね。私はなぜこれを許してきてしまったのか、私は何故それを見過ごしてきてしまったのか。

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N : 安田さんはウィシュマさんが亡くなった経緯について独自に取材を進めてきました。スリランカで3人姉妹の長女として生まれ育ったウィシュマさん、日本で英語教師となる夢があり、語学留学のために来日した。ところが次第に語学学校を欠席しがちになり除籍処分、同居していたスリランカの男性から暴力を振るわれていたというのです。在留資格を失い国外退去が命じられます。ウィシュマさんは求めに応じる姿勢を見せていましたが、同居した男性から帰国したら罰を与えるなどと脅され日本に留まらざるを得なくなりました。そして、2020年8月、入管施設へ収容されることになったのです。

安田亡くなる3日前の3月3日ですね。これは映像をご覧になった弁護士さんが仰っていたことなんですが、ぐったりしているウィシュマさんの口に職員がスプーンで食物を持っていって食べてもらう、でも、食べることが出来なくて、近くに置いてあるバケツに吐いてしまう。吐くと口の中が気持ち悪いと思うんですけど、うがいをする間もなく、はい、次、はい、次と食べ物が運ばれてしまって、運ばれる、吐くということの繰り返しですよね。

N:適当な治療も受けられないまま、ウィシュマさんはついに3月6日、息を引き取ります。収容生活は半年余りになりました。

安田目の前にいる人間を人間として見ない、ひとりの生活者として彼ら、彼女らのことを見つめることを忘れてしまったうえに、あぁいう事件が繰り返されてきたんだなと実感するんですね。

スリランカに飛ぼう―――

まともに事件と向き合おうとしない

法務省・入管の態度に業を煮やしながら

私は決意した。

 

人権を蔑(ないがし)ろにする構造的な歪は

そこにたしかに存在した命を

軽んじる態度から生じるものではないか

 

ひとりの人間として

ウィシュマさんの生きた軌跡を

辿る取材が必要だと思ったのだ

 

        「あなたのルーツを教えてください」より

N : 2021年10月、安田さんはウィシュマさんが家族と共に暮らした実家を訪ねた。

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「ウィシュマさんの部屋ですか?」

「幼い頃の服よ」「幼いころに書いたの」

「姉は部屋をこのままにしておいてほしいと言ってました。だから変えていません」

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「これ、サリー」「先生をするときに着ていたサリーよ」「美しいですね」

「サリーを着るときはいつもお化粧しておしゃれしていたわ」

「マミー、どう?きれいでしょって」

「いつもステキな恰好をしていて注目のまとだったの」「とても綺麗だった」

「ウィシュマの遺品は捨てることができません」

安田:これは妹さんが仰ったことですけど、在留資格を失うことによって死刑にする国があるんですか。私たちは、ただ人間を人間として扱ってほしいということを繰り返し仰っていたんですよね。

 やっぱり、大きな差別の構造がこの日本社会にあるんだってこと自体を見つめていかなければならないいや、日本社会にそんな差別はないんだ、在留資格を失う方が悪いんだ、だから命を選別しても致し方ないだろうってこれは、ある種の優生思想であり、人の命を奪うほどの深刻な差別という風に思っています。

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NNNNNNNNNNNNNNNNNNNN(ウィシュマさんについて・・・終わり)つづく