Netflix「新聞記者」で横浜流星さんNewcomer賞受賞/「河村光庸プロデューサー『お別れ会』(10月5日)」/遺作の「ヴィレッジ」(藤井道人監督・横浜流星主演)

◎3年ほど前から俳優の横浜流星(26)さんの作品は見逃さないようにしてきました。今年は藤井道人監督のNetflixシリーズ「新聞記者」(6話)から始まって、映画は単独主演の中田秀夫監督「嘘食い」、李相日監督で助演の「流浪の月」(松坂桃李広瀬すず主演)、三木孝弘監督の「アキラとあきら」(竹内涼真とW主演)、そして10月21日に公開される小泉徳宏監督「線は、僕を描く」(横浜流星主演、清原香耶共演)の4本が公開。演じた5人の人物、天才ギャンブラーから、就活の大学生、DVのサラリーマン、エリート銀行員、水墨画を学ぶ大学生、おまけに日曜劇場の「オールドルーキー」では初回、最終回のゲストでプロサッカー選手と、どれも同じ俳優が演じたの?と思うぐらいでした。日本アカデミー賞の新人賞を獲ってから3年。常にストイックで真摯、「地に足付けて、精進」という言葉通りの素晴らしい成長ぶりと活躍です。

8日(土曜日)に飛び込んできたニュース。釜山映画祭の「第4回アジアコンテンツAWARDs」で2021年7月期の日曜劇場として放送された「TOKYO MER~走る緊急救命室~」の鈴木亮平さんが主演男優賞を受賞。Netflixシリーズ「新聞記者」は3部門でノミネートされていましたが、横浜流星さん受賞でした。(下の写真の4枚目、巧くコピーできずはめ込み。切れている場合はクリックすると元の写真が見られます)

 
 
 
 
 
 
 
Netflix Japan | ネットフリックス
 
@NetflixJP 10月8日
釜山国際映画祭内「第4回Asian Content Awards」にてNetflixシリーズ『#新聞記者』が作品賞、主演女優賞、Newcomer賞の3部門にノミネート! #横浜流星 さんが、見事 Newcomer賞を受賞しました!👏👏
 
 
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組織委員長のコメント。かってあった「社会派映画」というジャンル。映画「新聞記者」はメディアが政権に忖度して取り上げず、テレビの番宣も一切ないにもかかわらず大ヒット、興行的にも成功して以来、社会派エンタメも復活したと言えますね:

アジアコンテンツアワード組織委員長は「難しい演技が必要な社会派ドラマにおいて、存在感のある素晴らしい表現力を発揮されていました。正義のために葛藤するその姿に、今後アジアを代表するビッグスターになると確信しました」と彼を高く評価する。

「新聞記者」横浜流星、アジアコンテンツアワードでニューカマー賞に輝く(コメントあり) - 映画ナタリー (natalie.mu)

今年6月11日に急逝された映画プロデューサーの河村光庸(みつのぶ)氏(1949~2022)のお別れ会が丁度10月5日に催されたところでした。映画とドラマ版「新聞記者」のモデルになった望月衣塑子さんのツィッターから:

 

 
 
 
 
 
 
望月衣塑子
 
@ISOKO_MOCHIZUKI
 
 
映画プロデューサー河村光庸さんのお別れ会
 
「映画はもっと自由でなければならない」
 
河村さんの言葉と共に手がけた映画作品の数々がメッセージと共に流れた
 
彼が何をこの世に遺したかったか。映画の1つ一つに河村さんの思いが込められている。
これからは、藤井道人監督たちがその意志を引き継ぐ
 
 
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上の写真4枚目にもありますが、この河村氏と横浜流星さんと藤井監督(36)の三人で写っている写真は、2020年の日本アカデミー賞授賞式での一コマ。横浜さんは新人賞受賞(この時は映画3本が対象)、河村&藤井のお二人は映画「新聞記者」で最優秀作品賞・主演男優賞・主演女優賞を獲った時の記念写真でした。

「新聞記者」のモデルになった東京新聞の望月記者と河村氏の出会いは、2017年10月「新聞記者」出版の翌月、河村氏が映画化したいと言ってきた時から。望月記者の河村氏を読むと河村氏の人となりがよくわかります:

前編の一部:

2022年6月11日、反骨の映画プロデューサー、河村光庸(かわむら・みつのぶ)が心不全のため72歳で急逝した。その代表作、映画『新聞記者』(2019 藤井道人監督)に原案を提供し、映画『i―新聞記者ドキュメント』(2019 森達也監督)に出演、Netflixのドラマ『新聞記者』(2022 藤井道人監督)でも新聞記者のモデルとされた東京新聞社会部記者、望月衣塑子に河村光庸の人と仕事について聞いた。

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望月 河村さんは慶應義塾大学在学中、折からの全共闘運動の只中で学生運動をやっていて、その後、沖縄に飛ぶんです。沖縄に「星の砂」(原生動物である有孔虫の殻)ってあるじゃないですか。私が小さい頃、よくお土産屋さんで見かけましたが、あれを西表島竹富島の海岸で見つけて、「これは商売になるぞ」とひらめいて、小瓶に詰めて商品化したそうです。河村さんはそれで財を成したと言っていました。「沖縄の星の砂で起業してできた会社だから、会社名は『スターサンズ』だ」と。

ある映画プロデューサーの死│望月衣塑子インタビュー(伊藤 彰彦) | 現代ビジネス | 講談社(1/3) (gendai.media) 

『新聞記者』『かぞくのくに』『息もできない』

ウーパールーパー」をブームにした男

「左翼的な正義を振りかざしても世の中はついてこない」という河村さんなりの醒た時代認識もあったのかな。だから河村さんは、高い問題意識を持ちながら、左翼的な教条主義には陥らず、つねに観客のことを考え、映画をエンターテインメントとして作り続けた異色の全共闘世代の映画人でした。

口癖は「オレ、行くよ」

望月衣塑子「反骨の映画プロデューサーが私に教えてくれたこと」(伊藤 彰彦) | 現代ビジネス | 講談社(1/3) (gendai.media)

◎後編の一部から:

5月下旬に河村さんと藤井道人監督の最新作である『ヴィレッジ』(2023年公開予定 横浜流星主演)の京都でのクランクアップを見届けたあと、河村さんは容体が急変し、亡くなるんです。

6月11日に河村さんが急逝してからおよそ1ヵ月後に安倍元首相が銃撃されて殺害されるのですが、もし河村さんがこの事件に接したら、間違いなく安倍さんの映画をフィクションとしてもノンフィクションとしても映画で撮っただろうという気がします。

映画『新聞記者』の舞台裏

「何かが足りない」

・河村さんは「現場になるべく口出ししないようにしたいから撮影現場にはあまり行かないようにしている」と言っていたプロデューサーでしたが、『新聞記者』の終盤では「何かが足りない」と言い出しました。そして、内閣情報調査官(田中哲司)のセリフに「民主主義は形だけでいいんだ」という言葉を付け加えました。この権力側のひと言によって、映画のテーマがより際だったと思います。私は河村さんのひらめきに感嘆しました。

・フィクションとしての映画『新聞記者』のあと、河村は望月衣塑子本人を被写体にしたノンフィクション『i―新聞記者ドキュメント』森達也に撮らせる。一冊の原作を俳優と著者が演じる二本の映画にし、虚と実を「合せ鏡」のようにして見せた稀有の試みだった。
・さらに河村はNetflixの6話連続ドラマとして『新聞記者』を企画する。ドラマ版は米倉涼子が主演し、現実と拮抗する物語を抑制をきかせたシリアスな演技で見事に表現した。河村は映画版ではできなかった「森友文書改ざん事件」を、Netflix版で現実に即して正面から描こうとした。

生きていたら元首相銃撃をどう見ていたか

そして河村氏急逝直前に京都での撮影のクランクアップを迎えた映画「ヴィレッジ」が来年公開されます。河村氏が育てた藤井道人監督と主演は横浜流星です。

藤井監督と横浜流星は、2018年の「青の帰り道」が初タッグ。「青の帰り道」は東京近郊の高校の同窓生男女7人の10年(2008年から東北大震災を挟んで2018年まで)を描いた群像劇でした。今年、二人が取り組んだこの「ヴィレッジ」が、はからずも河村氏の遺作となりました:

 

 
 
 
 
 
 
映画『ヴィレッジ』公式
 
@village_moviejp 10月8日
映画『#ヴィレッジ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 同調圧力格差社会、貧困、伝統文化と崩れゆく地域社会。 今、語るべき私たちの物語。 現代社会が抱える多くの問題の、きれいごとではない本質を投影し、そこに生きる人間たちのリアルに迫る。
 
 
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横浜流星がダークサイドに堕ちた青年に 藤井道人監督と5度目タッグで新境地 /2022年5月19日 - 1ページ目 - 映画 - ニュース - クランクイン! (crank-in.net)

横浜流星(片山優役)

 藤井監督との出会いは、今から7年前の映画の打ち上げでした。その後お互い先の仕事が決まっておらず、頑張りましょうなんて話していた矢先に『青の帰り道』でご一緒することができ、その後も定期的に作品を一緒に創り、今回長編で主演を務めさせて頂きます。とても感慨深いです。

 藤井監督が何度も何度も書き直しされていた、愛のある最高な脚本です。日々の辛い状況から逃げたくても逃げられない。我慢しか出来ない青年を生き、身も心も削られましたが、彼の変化を楽しみにしていただきたいです。

 今まで見た事の無い作品になっていると思いますし、とても考えさせられる内容になっています。公開は来年です。お楽しみに。

 

■監督・脚本:藤井道人

 横浜流星と出会ってもう7年になります。お互い、全く売れていない頃からお互いを鼓舞し合って切磋琢磨してきた同志です。そして今回、流星の主演映画を監督出来ること、とても嬉しく思っています。

 河村プロデューサーからの今回のお題は“村社会”でした。事なかれ主義、同調圧力、慣例や秩序。とても難しい題材でしたが、今、僕らの周りに起きていること、感じたことを気負わずに書きました。

 横浜流星という俳優の進化と、素晴らしいキャスト、スタッフの技が詰まった観たことのない映画になっていると思います。是非来年の公開を楽しみにしていてください。

 

■企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸(スターサンズ)

 「村」。その集落構造はまさに日本社会の縮図と言えるでしょう。有力者(もしくは象徴的存在)を頂点とした序列の下、集団としての秩序が保たれ、表面的には穏やかな社会に見える。しかし、内在的に抑圧されていることに多くの人は気付かず、一方、そういった閉鎖的な集団に疑念を持ち、はみ出さざるを得ない人間がどんどん異形になっていく事で、社会的混乱が増幅してゆく…。

 このテーマは、あなたとあなたの周りに起きている物語なのである。この映画は藤井監督と制作したかつての2作品(『新聞記者』(2019)、『ヤクザと家族 The Family』)(2021)とはまた違う人間集団のディープな物語になったと思います。

 皆さんは恐らくこの映画が完成した時に驚愕することでしょう。監督率いるキャスト・スタッフのスクリーンからあふれ出る熱量、そして、未だかつて観たことのない映像に…。