映画「ヴィレッジ」と「河村光庸から受け継いだもの(インタビュー)前後編」・「ある映画プロデューサーの死(望月衣塑子インタビュー)」

映画「新聞記者」を世に送り出した映画プロデューサー河村光庸(みつのぶ)さんの遺作「ヴィレッジ」の公開日(21日の金曜日)が迫っています。監督は「新聞記者」と同じ藤井道人監督。主演は、藤井道人監督の長編映画で単独主演は初めてという横浜流星さん。映画「ヴィレッジ」と今は亡き河村光庸プロデューサーを語る記事を集めてみました。

河村氏は1949年生まれの全共闘世代、沖縄の『星の砂』を瓶に詰めて売り出して財を成したとか、「スターサンズ(星の砂)」は後に社名に。ウーパールーパー(メキシコのサンショウウオ)をブームにしたり、そして初対面では誰もが感じるという『いかがわしさ』。一方で、「新聞記者」をドキュメンタリー(森監督)とエンターテイメント(藤井監督)の両方で仕掛けて”社会派”作品復活を成功させるなど、一寸つかみどころのない、一見、接する人によって好悪が別れるかも…と思わせるような人となり・・・身近な方達が語っています。

 

『河村光庸から受け継いだもの【前編】』

河村光庸から受け継いだもの 前編 藤井道人インタビュー | レジェンドの横顔 第5回 - 映画ナタリー (natalie.mu)

・危ないおじさんだなって最初は思った

・震えながらトロフィーを握りしめてた

・「知らないよ! 今そう思ったんだもん」

・「危なっかしくて、人間らしい」

・人が亡くなってあんなに泣いたのは初めて

・僕も攻めの姿勢を貫きたい

・まだまだ河村さんからの宿題は残っている

社会派」という言葉で片付けられちゃうことも多いのですが、間違いなくゲームチェンジャーだったと思います。東宝東映・松竹といったメジャーな映画会社が行っていることももちろん意義のあることだと思いますが、インディーズ作品で日本アカデミー賞まで駆け上がるというのは河村さんのおかげに尽きる。彼の企画力が、時代を変えたわけですから。

 

河村さんは「映画は自由であるべき」と常々語っていましたが、それをちゃんと作品の中に込めていた人だと思います。僕は河村さんに出会ってなければインディーズ出身のちょっととがった若造で終わっていたでしょうし、師匠であり親であり友でもありました。

「ヴィレッジ」も、河村さんじゃなかったら自分はやりたがらなかったと思います。人が企画していたものですから。「河村さんの思いをどう具現化するか」にこだわって作り上げたつもりです。まだまだ河村さんからの宿題は残っているので、これから何本かは彼が遺した企画を世の中に出していくつもりです。 

『河村光庸から受け継いだもの【後編】』

【連載コラム】レジェンドの横顔 | 第5回 
河村光庸から受け継いだもの 後編
石山成人インタビュー
「頼むよ!」と声をかけてきて……

河村光庸から受け継いだもの 後編 石山成人インタビュー | レジェンドの横顔 第5回 - 映画ナタリー (natalie.mu)

・なんかいかがわしい人だな…と思っていた

・70歳のお爺さんと話している感じが全然しない

・「とんでもないオヤジがいる」というパワー

・「頼むよ!」

生前の河村氏が語る映画「ヴィレッジ」

(昨年5月19日の記事より):

横浜流星が藤井道人と5度目のタッグ、村社会で苦悩する男演じた「ヴィレッジ」来年公開(コメントあり) - 映画ナタリー (natalie.mu)

三者のコメントから製作者河村光庸氏のコメントを:

「村」。その集落構造はまさに日本社会の縮図と言えるでしょう。有力者(もしくは象徴的存在)を頂点とした序列の下、集団としての秩序が保たれ、表面的には穏やかな社会に見える。しかし、内在的に抑圧されていることに多くの人は気付かず、一方、そういった閉鎖的な集団に疑念を持ち、はみ出さざるを得ない人間がどんどん異形になっていく事で、社会的混乱が増幅してゆく…。このテーマは、あなたとあなたの周りに起きている物語なのである。この映画は藤井監督と制作したかつての2作品(「新聞記者」「ヤクザと家族 The Family」)とはまた違う人間集団のディープな物語になったと思います。皆さんは恐らくこの映画が完成した時に驚愕することでしょう。監督率いるキャスト・スタッフのスクリーンからあふれ出る熱量、そして、未だかつて観たことのない映像に…。

「邦画作品では異例の50名以上のコメント」

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各界著名人絶賛 “圧倒された!”の声続出!!
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邦画作品では異例の50名超えのコメントが到着!
 
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河村Pのインタビューを受けた前川喜平氏のコラム

前川さんが最後に「もう見ることが出来ない」と書いた「虐待の経験を持つ子どもたちを支える人間を描く映画」、ひょっとすると藤井監督が『河村さんからの宿題』で『これから世の中に出していくつもり』の企画作品の中に入っているかもしれません。

望月衣塑子さんが河村光庸氏について語る昨年のインタビュー記事。前編と後編で、あの「新聞記者」が映画になるまでのいきさつやエピソードが書かれています。前川喜平氏がコラムに書いている話(加計学園)も出てきます:

ある映画プロデューサーの死│望月衣塑子インタビュー(伊藤 彰彦) | 現代ビジネス | 講談社(1/3) (gendai.media)

河村光庸は1949年生まれ。同世代の表現者があらかた表舞台に出尽くしたあと、「全共闘世代の最終走者」として映画界に忽然と現れた。50代で国際映画祭にて25以上もの賞に輝く鮮烈な韓国映画『息もできない』(2010 ヤン・イクチョン主演・監督)を配給、60代で北朝鮮と日本に隔てられた在日コリアン二世の家族の再会を描き国内の映画賞を独占した『かぞくのくに』(2014 ヤン・ヨンヒ監督)を製作するなど、遅咲きだった。河村は映画に携わるまでいったい何をしていたのだろうか?

 望月衣塑子「反骨の映画プロデューサーが私に教えてくれたこと」(伊藤 彰彦) | 現代ビジネス | 講談社(1/3) (gendai.media)

フィクションとしての映画『新聞記者』のあと、河村は望月衣塑子本人を被写体にしたノンフィクション『i―新聞記者ドキュメント』森達也に撮らせる。一冊の原作を俳優と著者が演じる二本の映画にし、虚と実を「合せ鏡」のようにして見せた稀有の試みだった。

さらに河村はNetflixの6話連続ドラマとして『新聞記者』を企画する。ドラマ版は米倉涼子が主演し、現実と拮抗する物語を抑制をきかせたシリアスな演技で見事に表現した。河村は映画版ではできなかった「森友文書改ざん事件」を、Netflix版で現実に即して正面から描こうとした

そして、ヴィレッジのクランクアップまでを見届けて・・・

5月下旬に河村さんと藤井道人監督の最新作である『ヴィレッジ』(2023年公開予定 横浜流星主演)の京都でのクランクアップを見届けたあと、河村さんは容体が急変し、亡くなるんです。

6月11日に河村さんが急逝してからおよそ1ヵ月後に安倍元首相が銃撃されて殺害されるのですが、もし河村さんがこの事件に接したら、間違いなく安倍さんの映画をフィクションとしてもノンフィクションとしても映画で撮っただろうという気がします。

河村さんの遺志を継ぐスターサンズの映画「妖怪の孫」は望月さんが予想したような内容の映画になっていました。

それらは、安倍さんの人生についてのドキュメンタリーというよりも、日本に生きる私たち一人ひとりの市民の政治に対する意識の低さが、結果として安倍さんという存在を生み出したことについての考察を含む映画になったのではないかと私は想像します。「時代の波に流されるな、社会や政治に抗う軌跡を残し続けろ」というメッセージを体を張って私たちに伝え続けてくれたと思います。