◎木曜日のことでした。用事があって唐池公園の近くを自転車で走ることになり、途中、柿の木のあるお宅の皇帝ダリアが今年はたくさんの花をつけて3本に増えているのを見ました。いつもカメラを持って出るのに、この時は持たずでした。お天気は曇り時々晴。空を見ると雲の切れ目があり太陽が出る時間がありそうなので、これなら唐池公園の紅葉もカメラで写せるかなと思って出直すことに。午前10時ごろのことでした。
屋根を超すほど高く伸びた皇帝ダリアなので、どうしても空に向かってカメラを向けることになり逆光気味になります。続いて、唐池のナンキンハゼを撮りたくて唐池公園へ向かいました。入口の背の高い木々の紅葉はまだもう少し日にちがかかりそう。イチョウの黄色も大分鮮やかになってきました。お目当ては左の1本の赤い木。ナンキンハゼです。すぐ近くのベンチに一人腰かけている人が見えます。写真だけサッと撮って…と思って木の方へ。
ナンキンハゼの赤い葉と黒い実と弾いた白い種。赤黒白のコントラストが晩秋にとても美しいので毎年この木の紅葉を楽しみにしています。が、今年はさほど綺麗には…少し早かったのかなと思いながらシャッターを2、3回押して・・・
撮り終えて帰ろうとしたら、マスクの女性が立ち上がって「あの~もしかして、Wさんでは?」と。70前後の見知らぬ方?それも私の旧姓で⁉「え~はい、あの、私の旧姓はWですが・・・」「あの、私、Tです。覚えておられないかも」「えっ!?あの、妹のお友達だったTさん⁉ですか?」「はい、面影があったので・・・」「そう!よくわかったわね」「ベンチ、腰かけて、どうぞ」と言われて二人で並んで腰かけました。
「あの~、妹は、実は、2年ほど前に、亡くなって・・・」と言い出したら、「はい、亡くなられたことは、東京のHさんから聞きました」と。それで、妹の2年前のクリスマスごろのがん発見から入院、余命告知、その後の闘病と8か月後の最期までをお話しました。
Tさんというのは、唐池公園の前の道路沿いに家があって、妹が仲良くしていたお友達なので名前はよく知っています。小学校の頃のスタイルの良い可愛いTさんしか覚えていませんが、Tさんの方こそ私がよく分かったとビックリです。
それから、Tさんの身の上話を聞きました。結婚して女の子を授かって出産三週間で一方的な離婚を突きつけられ、その後ノイローゼ(今は「ノイローゼ」って言わないんですよね・・・と)になり暫く精神科にかかっていたことや、その後よくなってからは娘を母親に預けて、働くために司書の資格を取って、正社員を目指して仕事を転々と、10年、8年、6年、5年と繋ぎながら働き続けて来たこと。85歳と88歳の両親を亡くして、今はかつての家を半分売ったお金で建てた家で40代の娘と二人で暮らしていること。まだ仕事の籍はあるが、今年12月で今の会社を退職することになっていること。働き詰めで来たので、これから先働かないで何をしたらいいのか、貧乏性なので不安に思っていることなど。私は聞き終わって、これからは楽しめばいいのよ…と。
お話の中で、東京にいるHさんの話が出ました。Hさんから妹が亡くなったことを聞いたとか。このHさん、「良く知ってるよ、我が家には大工さんに頼んで作ってもらった鉄棒があったのでHさんも良く遊びに来ていて、カーディガンを忘れて帰ったことがあって……バス道にあった大きなお家でしたね。庭に卓球台があった」「そう、そうです。中学のときは、HさんがAちゃん(妹)を誘って、それから私を誘って」「そ~なの、3人で行ってたの」「はい、高校は、私がAちゃんを誘って・・・」「そう、高校も一緒だったの。A子はね、受験の日、雪が降って、家を出たはいいけど、お腹を壊してて家に帰ってね。もし、あのままだったら受験できなかったのに、試験が午後からになったでしょ。それで幸運にも受験できたの」「そう、そう、あの日、試験が中止になって・・・。Aちゃん、そうだったんですか。私たち、3期生なんです」「そう。高校も一緒だったとは・・・こうやって、お話して思い出していただければ、A子も思い出の中で生き続けられるから、有難いです」「Aちゃんのことは、忘れません」「そう、ありがとう。5つ違いだから73歳ね」「え、上のお姉さんなんですか」「5つ違いだから78歳」「え~」「真ん中の妹と私はよく似ていて、通学電車の中で男子学生らに『双子がおる』と言われたこともあったの。声をかけて下さってありがとう。お家が分かっているので又私の方から声をかけるかもしれないけれど」「はい、いつでも」ということで別れました。
「ホームに入所している母に伝えたら喜ぶと思います」と言ったら、ショッピングカーを転がして歩いている母とは何度か声をかけて話したことがあるとも仰っていました。
久しぶりに亡き妹の話が出来ました。何とも言えない思いで公園を出て元来た道を。男性が一人、自転車を止めて皇帝ダリアをカメラで写そうとされていました。「同じですね」と声をかけると「見事ですな」と。太陽の向きで先ほどより少しマシかなと思って一枚撮ってみました。
帰ると夫は出かけた様子。私はすぐ帰るつもりだったのが思わぬ長話になったので用事のある夫はカギをかけて出た様子。何とも言えない余韻に浸っていましたが、昼食の準備があるし、その前に、神奈川の妹に知らせておこうと思って電話をしました。「70代になったばかりで亡くなって、この若さで亡くなった人は友達でもそんなにいないんじゃないの・・・生きていれば73歳なんだ・・・」と、早すぎる妹の死を悼んでいました。
ここのところの冷え込みがチェリーセージには合っているのか、柵から道路側にこぼれるように咲いている花を少し切り戻しました。勿体ないので、そのまま如雨露に突っ込んでみました。