「中村哲さん殺害から3年 若者が発信」と「TAMA映画賞と報知映画賞受賞者発表と『流浪の月』」

◎昨日の朝日新聞の記事で嬉しいニュースが。4日は中村哲さんが3年前、何者かに射殺された日でした。今年は中村哲さんの現地の活動の様子をまとめたドキュメンタリー映画が公開され上映されいる年でも。5日の社会面は「中村哲さん 遺志受け継ぐ」という見出しで、二人の活動が紹介されていました。東京で設計事務所に勤めていた赤沢空(35)さんは、ラジオで銃撃ニュースを聞いたことから、仕事をやめてペシャワール会に履歴書を送り、今は会の活動を負かされ、ゆくゆくはアフガンに赴き、現地の役に立つのが目標とか。また、高校3年生の辺見紗来さん(18)は中村氏の高校の後輩。校内で「ペシャワール班」を立ち上げ、中村さんをテーマにクイズや作ったり、文化祭で発表したり、オンライン講演会を企画したりしているそうです。中村哲さんの思いが、若い人にも確実に届いて引き継がれていくのは嬉しいことです。

劇場版「荒野に希望の灯をともす」予告編 ~中村哲医師 ドキュメンタリーの完全版~ - Bing video

★今年映画館で観た映画は12本ほど、近くの映画館のポイントがたまっていたおかげで無料で見られた分もありますが、月1度は観ているということに。十三の七芸まで出かけて観た「主戦場」は別格の面白さ。外国映画の「WEST SIDE STORY」と「ベイビー・ブローカー」もありました。そして、私が推している俳優、横浜流星さんの主演映画「嘘喰い」、竹内涼真とW主演の映画「アキラとあきら」、清原香耶さん共演で水墨画に救われる青年を描いた「線は、僕を描く」、そして助演では、李相日監督、広瀬すず松坂桃李主演の「流浪の月」と4本の映画。藤井道人監督の「余命10年」は、主演は小松奈々さんとNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で北条泰時を演じている坂口健太郎さんでした。

賠償千恵子さん主演の「PLAN75」、これは梅田のステーションシネマで。高齢化社会の近未来を描いたこの映画は切実な問題提起でしたが賠償さんの結末にホッとしました。あと、のんさん主演の「天間荘の三姉妹」平野啓一郎のベストセラー小説の映画化で妻夫木聡主演、安藤サクラ窪田正孝の「ある男」を観ました。

そして多分これが今年最後となる瀬々敬久監督二宮和也主演の「ラーゲリより愛を込めて」を観るつもりです。母と同い年ですから生きておられたら101歳の池永先生が、小学生だった私たちに語り続けたラーゲリ強制収容所)の話、当時は分からなかった先生の思い、私たちに伝えたかったことが何だったのか、少しでも分るかな…と思って、観るつもりです。

どの映画もそれなりに面白い作品でしたが、池井戸潤原作の「アキラとあきら」が話の運びが快調で、原作の長さを映画に見事に収めて痛快でしたし、「流浪の月」は、小説よりリアルに文と更紗の二人だけの閉じられた世界へ強引に引き込まれて抜け出せないような力のある映画でした。(「流浪の月」レンタルも始まっていると思いますが、これから見る人は以下ネタバレですので読まないで・・・)

文(ふみ)』には、第2次性徴がないという欠陥があり母親からは「ハズレ」扱いをうけ、大学生の時、公園で一人でいた小学生の沙羅を自宅に連れて帰り2か月暮らしたあと女児誘拐犯として逮捕される。少年院から出た後は母親に監禁されるも、その後コーヒー店のマスターとなっている。小学生の『更紗』は、父は病死、母は彼氏と出奔、預けられた親戚の家では中学生の従兄に夜毎身体を触られるという性被害を受けていて、家に帰りたくなくて文について行くが、2か月後、小児性愛者による誘拐事件の被害者として保護される。大人になってからは、亮という恋人と同居。ファミリーレストランで働いている。中瀬『』は、更紗と暮らしているが、二人の関係を偏見で見る世間を体現したエリートサラリーマン。更紗の過去を知った上で、庇護すべき女性として見ているが結婚も考えている。更紗が文と会っていることを知ると、文には最大限の嫌がらせ、SNS上で過去を暴き今の姿を写真に撮って晒したり、更紗の店に電話をかけてシフトを聞いたり、それでも心が離れる更紗に暴力を振るってしまう。亮自身、母からは愛されず棄てられたと思っているし、父親は支配的でブドウ農家を継がせようと思っている。

事件から15年後、偶然、コーヒー店で再会した文には『谷さん』という恋人がいて、更紗は文が大人の女性を愛することが出来ていることを知って安心するも・・・・再会から二人の新たな物語が始まります。音楽と映像と過去と現在が交錯しながら進行する話の筋が絡まって、独特の世界へ入りこんだら、しばし抜けられなくなります。

亮に「私は亮くんが思ってるほどかわいそうな子じゃないよ」と理解を求めても『結局、人は自分が見たいようにしか見ないのかも』という更紗。亮は更紗が戻らないと知り自傷行為に及ぶが、更紗への執着を絶って「もう、いいから」と自ら更紗の手を放します。文は自分の「死んでも知られたくない秘密」を更紗の前でカミングアウト。二人は性愛の伴わない深い愛情で結ばれていることを感じ、過去がバレたときは「その時はまた流ればいいよ」と二人で新たな旅路を決意します。

子ども時代を親に愛されないで育った文と更紗と亮が織りなす物語。更紗の同僚のシングルマザーが娘の梨花を更紗に預けて彼氏と沖縄に行ってしまいます。第2の更紗誕生、ネグレクト現場ですが、原作同様、誰の行為も正当化されることも断罪されることもないまま公平に描かれています。

★第14回TAMA映画賞と第47回報知映画賞

TAMA映画賞

選考対象:2021年10月から2022年9月に一般劇場で公開された作品および監督・キャスト・スタッフ

選考方法:TAMA映画フォーラム実行委員会(市民ボランティア)の合議により選考

★私が今年観た映画の出演者(太字)のみピックアップして:

佐藤次郎・最優秀主演男優賞(『さがす』『truth 姦しき弔いの果て』『バイオレンスアクション』)

松坂桃李・最優秀主演男優賞(「流浪の月」)

文という人間が抱え続けた繊細な感情の機微を零すことなく丁寧に演じた。役を存在させる温度感が絶妙で、長い年月をかけた愛の灯を静かに的確に表現し、観客を物語へ引き込んだ。

賠償千恵子・最優秀主演女優賞(「PLAN75」)

長寿が祝福されない世相においても日々の暮らしを大切に営み、根源的に持つ「生」の力が何より優先することを示してくれた。生き抜くことを訴えかける目の力と陽に照らされた凛とした佇まいの残像が頭から離れなかった。

広瀬すず・最優秀主演女優賞(「流浪の月」)

過去の傷を背負い生きてきた主人公・更紗が、愛する人との再会によって抑圧から解放され、少女期のように溌剌と息づく様は、燃え立つ愛の炎のように静かな美しさを放っていた。

磯村勇人・最優秀新進男優賞(『ビリーバーズ』『PLAN 75』『異動辞令は音楽隊!』『さかなのこ』『前科者』『彼女が好きなものは』『ホリック xxxHOLiC』『劇場版 きのう何食べた?』『MIRRORLIAR FILMS Season3』)

どの役柄でも演技以上の工夫を凝らした見せ方で、存在感のあるキャラクターを造形していた。『ビリーバーズ』では欲望との葛藤や内なる狂気を表現し、人間の振り切れるほどの幅を演じ分けられる俳優としての力量を見せてくれた。

横浜流星・最優秀新進男優賞(「流浪の月」「アキラとあきら」「嘘喰い」「あなたの番です 劇場版」「DIVOC-12」)

『流浪の月』において、恋人の心が離れていると悟ったときの豹変した姿に、抱えていた孤独や愛への渇望から生じた心の闇の深さがずしりと伝わり、俳優として底知れぬスケールを感じさせた。

★第14回TAMA映画賞受賞作品・受賞者決定!最優秀作品賞は『LOVE LIFE』『ハケンアニメ!』最優秀男優賞に佐藤二朗、松坂桃李! 最優秀新進男優賞には磯村勇斗、横浜流星 ! - Astage-アステージ- (astage-ent.com) 

横浜流星:“嫌いに”という反響も「役者冥利に尽きる」 「流浪の月」でTAMA映画賞最優秀新進男優賞 (msn.com)

報知映画賞
 報知新聞社が制定する「報知映画賞」は、国内映画賞レースの先陣を切って発表される映画賞。主演男優賞の福山、主演女優賞の有村、助演男優賞の横浜をはじめ、俳優・監督賞は全受賞者が初受賞というフレッシュな顔ぶれになった。

 作品賞は、妻夫木聡が主演を務め安藤サクラ窪田正孝と共演した、石川慶監督作品『ある男』が邦画部門、トム・クルーズ主演の大ヒット映画『トップガン マーヴェリック』が海外部門で受賞。アニメ作品賞は、劇場版『四畳半タイムマシンブルース』に贈られた。 

作品賞・邦画 『ある男』

監督賞 片山慎三『さがす』

主演男優賞 福山雅治『沈黙のパレード』

主演女優賞 有村架純『前科者』

助演男優賞 横浜流星『流浪の月』

助演女優賞 尾野真千子『20歳のソウル』『千夜、一夜』『サバカン SABAKAN』

新人賞 嵐莉菜『マイスモールランド』/白鳥晴都『ぜんぶ、ボクのせい』

作品賞・海外 『トップガン マーヴェリック』

アニメ作品賞 『劇場版 四畳半タイムマシンブルース』

★第47回報知映画賞発表!福山雅治が主演男優賞、有村架純が主演女優賞を初受賞 (msn.com)