◎昨日の記事と同じく、9月3日付けの「しんぶん赤旗(日曜版)」、『地球の未来』と題した「地球沸騰の時代 どう立ち向かう」を取り上げます。7月末、国連のグテレス事務総長が名付けた「地球が沸騰する時代(era of global boiling)」は、「AERA」9月11日号でも「地球沸騰の時代を生きる」と題して「巻頭特集」されていました。
◎海面温度上昇の話でいつも思い出すのは小出裕章さんのお話です。お風呂の温度は人それぞれ好みがあって、1度上がっても敏感に感じる。それと同じで、海洋生物にはそれぞれの適正温度があって、1度の変化は生態系が変わるほどの大問題。最近は各国の原発の温排水も海面温度上昇に一役買っているとか。気候科学者でIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書の主執筆者も務めている江守正多さんの記事の最後はエネルギーの過剰消費についても警告を発しておられます。
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続発する山火事や森林火災
今夏の記録的な酷暑 次は今年超す恐れも
人間の活動によって気温が地球規模で長期的に上昇していることは間違いありません。18~19世紀の産業革命前から世界の平均気温は1.1度上昇しました。気温上昇を1.5度に抑えるという、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)で合意したパリ協定の目標に迫っています。
そこに南米ペルー沖の海面水温が高くなる「エルニーニョ」現象などが重なり、今夏の記録的な暑さをもたらしています。21世紀に入ってエルニーニョ現象は今回を含め5回起きました。次に同様の気象条件が発生する時には今年以上の酷暑になる恐れがあります。
世界各地で続発する大規模な山火事や森林火災にも、気候変動の影響があったとみられています。
8月に起きた米ハワイ・マウイ島の山火事では100人を超える人が亡くなり、行方不明者も多数残されています。カナダでは今年に入って5800件余の山火事が発生し、日本の国土面積の約4割に当たる14万平方㌔以上が消失しました。
温暖化が進み、雪解けが早くなって森林が乾燥するなど、燃え広がりやすく、火災が止まりにくい条件が強まっています。
気候関連での心配な異変
南極での海氷減少と太平洋の循環停滞が
気候変動との関係でいくつか心配なことがあります。
その一つは、南極大陸周辺の海氷が今年、劇的に減少していることです(グラフ)。これが、南極大陸本体の氷河にどう影響するのか注目されています。(写真記事へ)
AMOC(大西洋子午面循環)は熱帯海域の温かい海流がメキシコ湾から大西洋を横切って、高緯度の西ヨーロッパに温暖な気候をもたらし、北極に近いグリーンランド沖で冷やされます。冷えて密度が高まり、重くなった海水が海底に沈みこんで深層で南下します。
そのグリーンランド沖での海流の沈み込みが弱まっています。温暖化の影響で▽海水温が上がって密度が低くなる▽高緯度地域で降水量が増えてさらに塩分濃度が下がるーために海水が重くはなくなるので、沈みこまなくなってしまうのです。
この海流の循環に変化が起こると、地球の気候や生態系に大きな影響を与える恐れがあります。最近の研究論文は、温室効果ガスを削減するための抜本的な措置が講じられなければ、AMOCは今世紀中に、早ければ数年後に止まる恐れがあると指摘しています。
海水温上昇止める手だてを
「エネルギー正義」で日本は責任を果たせ
日本近海の海面水温は、過去約100年間に1・24度上がりました。これは世界全体の海面水温上昇の平均値(0.60度)よりも大きくなっています。特に近年は海面だけでなく、深いところまで記録的な高温になっています。
日本近海の海水温が高いため、台風が勢力を強めながら日本に接近し、強い勢力のまま上陸する事例が増え、大きな被害を出しています。
海水温の上昇を止める手立ては、世界で脱炭素を実現し、温室効果ガスの排出を止めることしかありません。
岸田政権は脱炭素を掲げたグリーントランスフォーメーション(GX)という基本政策を打ち出しました。その中身は原発を推進する電力業界に充分配慮したものです。「成長志向型カーボンプライシング」(化石燃料賦課金の導入など)が盛り込まれましたが、導入時期が遅すぎて、世界で2050年に脱炭素を実現するためのスピード感に見合っていません。
公正なエネルギー転換を目指す「気候正義」に連なる概念で、「エネルギー正義」という考え方があります。エネルギー正義は「分配的正義」「承認の正義」「手続き的正義」という三つに整理されます。
日本は三つのそれぞれに問題を抱えています。分配的正義では、エネルギー価格の高騰でエネルギー貧困を増大させています。承認の正義では、社会的資源が乏しく反対しにくい人々の価値を無視して行われてきた原発の立地問題などがあります。手続き的正義では、トップダウンでエネルギー政策の意思決定をしてきた仕組全体が不公正です。
気候政策に市民提案の流れ
「脱過剰消費」に向け社会の変化が必要だ
手続き的正義にかかわって、無作為に選ばれた市民が気候変動政策を議論、提案する気候市民会議の取り組みが始まっています。英仏等では国レベルで実施されました。日本でも自治体レベルで広がっています。
エネルギー技術を化石燃料から再生可能エネルギーに置き換えたとしても、消費自体がどんどん増え続けて行けば再生可能エネルギーの供給は需要に追いつきません。
増え続ける消費は本当にみんなの幸せにつながっているのか。過剰に消費している、あるいは消費させられているのではないのか。
「脱過剰消費」はテクノロジーだけでなんとかなる話ではありません。社会システムの変化が必要だろうと考えています。
MMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMM 書き移し終わり