「愛を読む人」

昨日、夕方の5時45分から上映という「愛を読む人」を夫を誘って観てきました。以前に息子から「よかった」と短くお勧めメールが入っていました。見逃してしまいそうなので、一寸思い切って出かけましたが、観てよかったです。

二人ともポイントが貯まっていたのでタダというありがたさ。帰りにパンフレットを買いました。長いクレジットの中にシドニー・ポラックという懐かしい監督の名前を見つけたからです。パンフレットによりますと、この映画の完成を見ることなく73歳で亡くなったとか。

シドニー・ポラック監督の「追憶」という映画。ロバート・レッドフォードバーブラ・ストライサンドの二人が共演し、バーブラが歌う主題歌だけは私にも耳に馴染みがあったので、実際の映画公開当時から流行っていたのだと思います。私の70年代は子育て時期で映画館で映画を見る機会は無く、20年以上も経って、テレビでこの映画を見ました。ちょうど子育てを終わって過去を振り返る時期に当たっていましたので、特別の感慨をもってこの映画の二人を見ました。私の20歳前後も授業料値上げ反対闘争という学生運動が吹き荒れた時代(全学連はとっくの昔に解体、全共闘世代には少し早く、丁度、狭間の時期だったと思います)で彼らの青春(赤狩りの時代)を追憶するのと重なって、初めて、郷愁を持って自分の過去を振り返っても見ました。そんなわけで、強烈な印象で、思い出に残る映画になってしまいました。いろんなシーンが蘇りますが、彼女が署名を集めているところに今は昔の彼が出会うラストシーンも心に残っています。

さて、「愛を読む人」。そういえば、物語性のあるラブロマンス。過去と現在が交錯する筋立て、など「追憶」と共通するところもあります。でも、パンフレットによりますと原作があって、それは、<ドイツの作家ベルンハルト・シュリンクの小説で、1995年に世界中で一大ブームを巻き起こした>そうです。<5年間で20以上の言語に翻訳され、アメリカでは200万部を超えるベストセラーに、日本でも海外文学としては異例のミリオンセラーを記録した>といいます。知らなかったことばかりです。

<監督はスティーブン・ダルドリー。1作目が「リトル・ダンサー」、これが3作目。3作全部アカデミー賞監督賞にノミネートされたそうです。
脚色はデヴィッド・ヘア。ダルドリーの2作目「めぐりあう時間たち」につづき、本作でもアカデミー賞にノミネート。
プロデューサーは「イングリッシュ・ペイシェント」でアカデミー賞監督賞を受賞したアンソニー・ミンゲラと「愛と悲しみの果て」で同賞を受賞したシドニー・ポラック。二人は2008年、映画の完成を待たずに相次いでこの世を去った」>

主役のハンナを「タイタニック」のケイト・ウインスレットが66歳まで一人で演じて、アカデミー主演女優賞を獲っています。見ごたえがある老けぶりですが、凄いのはこちら。15歳のマイケルと36歳で出会って恋の手ほどきをする彼女、秘密を抱え、時に怒り出す彼女、複雑な過去を持つ美しい女性を迫真の演技で生きています。
短い逢瀬の中で、マイケルが彼女の求めに応じて本を読むことが愛し合う前の儀式のようになっていきます。しかし、ある日突然の彼女の失踪。
8年後、法学生となった傍聴席のマイケルと法廷の被告席にいるハンナとの出会い。戦争中、ハンナはユダヤ強制収容所の看守としてナチに関わっていた。マイケルは法廷でハンナの秘密に気付きます。ハンナは秘密が暴かれることを怖れて、自分に不利な証言を認め、無期懲役の判決を受ける。
ここまでのマイケルを1990年生れのドイツ人俳優デヴィッド・クロスが初々しく豊かな情感で演じます。

時は流れ、マイケル(レイフ・ファインズ)は結婚と離婚を経験、そして忘れられないハンナのために再び本を読む人になって、囚人のハンナあてにテープを送り続ける。「読む人」を再開するときのマイケルの思いが複雑です。<ハンナが犯した罪への怒り、彼女を救えなかった悔恨、消えない愛の記憶> ハンナは送り続けられるテープを使って秘密の克服に乗り出します。
20年たって釈放の時を迎え再会したとき、マイケルは確認の質問をハンナに。「自分の過去をどう思う?」と。映画はマイケルの思いを語らせてもいないし、ハンナが自殺した訳を語らせてもいません。ただ、想像するのは、ハンナにとってマイケルがもう「読む人」をやめると言ったことが切っ掛けだったのではということ。遺書と残されたお金でマイケルは言葉では語られなかったハンナの過去についての思いに気づき、彼女の遺志を生かそうと行動します。
ぎこちない親子関係だった娘をハンナの埋葬された墓地に連れて行って、15歳だった頃の話を始めるマイケルに、かすかな「過去の克服」の希望を感じて映画は終わります。過去の克服?とは罪を償ったハンナを許し、愛し合った事実を受けとめ、自分の人生を生きはじめることでしょうか・・・

見終わって、とても言葉にはできない思いに満たされます。