「くらべない生き方」

くらべない生き方―人生で本当に大切にするべき10のこと

くらべない生き方―人生で本当に大切にするべき10のこと

帯の内容紹介から:困難な時代を生きぬく10の対話:1.くらべない、2.ゆるす、3.伝える、4.無理をしない、5.繰りかえす、6.つくりあげる、7.泣いてみる、8.さらけだす、9.寄りかかる、10.つないでいく

著者の一人、大平光代さんはご存知の通り、いじめから自殺未遂、非行に走り、極道の妻から一転、29才で司法試験一発合格、弁護士となって非行少年の更生に努めるという半生を綴った「だから、あなたも生きぬいて」(2000年)が260万部のベストセラー。その後、2003〜5年まで大阪市助役を務め、2006年に結婚。娘を出産。(この後のことは初めて知ったのですが、)40代に入ってから仏門を目指し通信教育で資格取得。09年4月、龍谷大学客員教授に就任。

2年前から兵庫県の山里暮らし、その理由は「ダウン症で生まれた娘の遥を、自然の中でのびのびと育てたかったから。」「保育園に通い、毎日泥だらけになって家に帰ってくる遥を見ていると、ここへ来てよかったと思います。地元でとれる新鮮な食材で家族の食卓を彩り、地域に見守られて子育てをしていける安心感。田舎ならではの不便さをさしおいても、当り前の幸せに気づくことができるここでの生活に、「生きている」と実感する毎日です。」(前書きより)

ここで紹介したいのは9番の「寄りかかる」から二人の対話:

大平 最近は、寄りかかったり、寄りかかられたりする人間関係が希薄になっています。そして、それが、生きにくい世の中を作っていくことになったのだと思います。都会の子育て世代を見ていても、地域のつながりが薄く、母親ひとりで抱え込んでしまっている例が多い。誰にも頼れないのです。
 私が住んでいる田舎では、放って置いても、保育園や地域が一緒になって子育てをしてくれています。自然と、寄りかかったり、寄りかかられたりする関係ができあがっている。そういう地域の力が、都会でももっと増えていけばいいと思うのですが。


鎌田 そうですよね。戦後民主主義においては、「自立することが大事」だと声高に言われてきました。でも僕は、「自立」という言葉があまり好きではない。自立することは確かに大事なことですが、それよりも、誰かと一緒に生きていくことのほうが、ずっと大事なこと。つらいときや嬉しいとき、夕日を見て感動するときにだって、ひとりではなく誰かと共有できるほうが、人生は豊かです。
 自立を重んじているいまの社会が、孤独を生む一因になっていることに、早く気がついたほうがいい。寄りかかったり、寄りかかられたりしながら生きることこそが、社会を活性化していく。それは決して甘えた生き方ではないと思うのです。

この後、「誰かに寄りかかる勇気と、寄りかかられたときに踏ん張って支えてあげられる力の両方を持っていたい。そうやって、人はひとりでは生きていけないという事実にも気づいていける。寄りかかったり、寄りかからせてあげたりすることで、社会はずいぶんあったかくなる気がします」と鎌田氏が結んでいます。

先日来、大騒ぎになっている大阪での23歳母親の2児ネグレクトの事件が思い浮かびます。都会だからこその事件でもあったような気がします。
昨日の朝の番組で、鳥越俊太郎さんが、住民の通告が何度もあったのに、市の子ども相談センター(児童相談所)が訪ねていって引き返している事に、「感性の問題だよ!」と憤っていました。「ドアをたたいて応答がないからと引き返すのか、応答がなくて当り前、幼児なんだから。幼児二人が放置されていて中でどうなっているのか? 管理人に鍵を借りて踏み込んでみることくらいどうしてしないんだ!」。その通りです。
虐待は全て親の方に問題があります。問題のある親の問題が片付かないうちは、子どもは親から引き離して保護すべきです。

もう一つ、ここ数日の100歳以上の高齢者の「所在不明」問題。ここ箕面では、数年にお一人くらいの割合で、山に迷い込んで戻れなくなり、10ヶ月とか1年以上経って白骨で発見されることがあります。つい最近も「不明者、白骨で発見」という自治会回覧が回ったところです。山に近いこの辺りで認知症を発症していれば帰れなくなる事もと想像はつきますし、不明という家族からの捜索願が出されてのことです。

ところが、大都会での「行方不明=所在不明」、都会の人間関係は箕面の山の森や雑木林と同じということです。それも娘や息子が居て、30年、20年、会うこともなく・・・というのは、もう、最後の絆も切れて、バラバラということです。
幼時も高齢者も社会から隔絶され、その上、身内である親や子が放ったらかしで平気という今の社会、行き着くところまで行ってしまったと言えないでしょうか。まだこの上の地獄があるとはおもえません・・・

この本の二人の対話は、いかに復原するかの一つの回答のようです [(帯の写真より)