アジア大会とお「茶」の本

広州のアジア大会ももう閉幕を迎えますが、昨夜のニュースでは金メダルラッシュでした。

ソフトボールの上野投手、北京五輪を思い出します。中国に勝って3連覇達成! 
女子100m、200m金メダルの福島選手、スピードに乗って走る姿が美しい。400mリレー最終走者でしたが、残念。3位・銅。
女子レスリング55キロ級で吉田選手、全試合無失点の完全優勝!2008年1月、119で連勝記録が止まってから再び白星を重ね42連勝。
男子カヌーで、面白い名前の選手が! 桃の節句の3月3日に生まれた男の子で名前が桃太郎。カヤックシングルで優勝。水本選手とのカヤックペア200mでも優勝。2つの金を手に。写真、長髪を髷にしているのが松下桃太郎(22歳)。この2種目はロンドン五輪での新種目でもあるので楽しみ。
男子やり投げでも日本選手団主将の村上選手(30歳)が優勝。昨年の世界選手権での自己ベストを5cm更新しての83.15mで、誰も80mを超えられず。「愛媛の離島出身で、中学時代は全国の強豪高校からも誘われた剛速球投手。その鉄砲肩にボールをやりに持ち替えての15年」だったそうです。
さて、先週の東京往復の新幹線の中で読もうと思って買った新書の「茶」について:

茶―利休と今をつなぐ (新潮新書)

茶―利休と今をつなぐ (新潮新書)

著者は表・裏・武者小路の千三家の中の武者小路千家15代次期家元として2003年に「宗屋(そうおく)」を襲名。1975年〔昭和50年〕京都生まれ。
読みやすく、入門書として必要なことが解りやすく書かれていて面白い本でした。
400年以上の伝統の茶の世界ですが、挿入されるカタカナ語がなかなか効いていて日本語で説明されるより核心をついてストンと判るということもあります。2008年7月から約1年間文化庁文化交流使としてニューヨークを拠点にアメリカ、ヨーロッパで日本文化、特に茶の湯を紹介する茶会、レクチャー、ワークショップという活動を展開したとのことですので、その成果かもしれません。
8章に分けて書かれているのですが第8章「茶事はコミュニケーション」に意外な人物が登場して嬉しくなりました。
ブログ「内田樹の研究室」でお馴染みの神戸女学院の内田先生です。2008年の対談から引用してあるのですが、とっても面白く納得です。
内田先生は学者さんですが、合気道杖術の道場を主宰する武道家でもあるので、「体感に共感・同期できる」と言われます。
著者によりますと、「茶事は、見て、聞いて、触って、嗅いで、味わってという自分の五感の全てを差し出さなければ成り立たない。この「五感をどう使うか」ということについての規範が確立されていることが、他の芸能や宗教行為との大きな違いでしょう」。
そして、一番面白い説は「人類史を反芻する茶事の極意」という見出しのところ。

千 ・・・よくできているのは、茶室に入って最初に炉中の炭火を囲みますよね。あの段階で、全員の距離がちょっと縮まる感じがします。人類が初めて火を見て集まった時の感覚が呼び起こされているのか、なんて。茶事を人生の縮図だという人もいますが、僕は人類の歴史のように感じるんです。
内田 本当にそう思いました。個体発生は系統発生を繰り返す、じゃないけど、オランウータンから人間になり、共同体を形成するまでを再演します、見たいな感じがありますよね、茶事って。
千 最初は無言。言葉がないでしょう。
内田 そうでしたね。それから躙口で四足歩行していたものが、茶室に入って直立歩行になる。それから炭点前で「火なんか見ましたね、覚えてますか? 皆さん」。この身体にわだかまっている、霊長類から人類が分岐した原点。「どうして分岐したか、覚えてるかな、みんな?」「共同体をつくったからだよー!」って(笑)。  <10数行略>
今から何万年も前、人類の共同体が初めてあるステージから次のステージに上がった瞬間というのは、非常に指南力の強いリーダーが自分の身体感覚をザーッと伝えていって、共同体の全員があたかも一個の身体であるかのような幻想を共有したんでしょう。その幻想を共有しているときは、ものすごくドーパミンが出て気持ちいい。だから幻想が消えて、個人個人に戻った後も、できることなら皆でいつも一緒にやっていきたいね、と言い合ったはずです。その感覚をくり返しくり返し刷り込むことによって、共同体を立ち上げていったのが人類だった、というわけです。こういうながーい歴史のあることを、いまだにやっているのが、茶の湯というものではないでしょうか、と(笑)。

と、こんなお話が聞けるとは!
千宗屋氏は、いくら素振りを見ても野球の素晴らしさがわからないのと同じで、部分を見るより、茶会を体験するほうがお茶を理解できると言われています。30年ほど前、デンマークから来た方を招いてのお茶会に同席したのが私の1回きりの体験です。
先日、初釜のお誘いを受け、それに備えて12月は濃茶の飲み方をお稽古しますと言われました。
お着物でなくてもよいと言われていますので、来年の1月が私のお茶会初体験になるかも知れません。
私の五感でどんな体験ができるのか今から楽しみです。 手作りオーナメントを頂きました