儒教の国の若者たち(「ひきこもりの高齢化」)

 通りの垣根の曲り角に、桃色の山茶花が…
4日(土)の日経夕刊の「こころ」の頁、精神科医斉藤環氏による「ひきこもりの高齢化」という記事が興味深い内容でした。
 まず前段は、「就労後のひきこもりが増えている」という見出しで、斉藤氏が12年前に書いたというベストセラー「社会的ひきこもり」以降、「この問題を取り巻く状況は驚くほど変わっていません。行政の対応も世間の理解も大きくは進んでいない。」「現象面での一番の変化は高齢化です。(平均年齢32歳は)20年前の調査に比べ10歳以上も上がった。」ということです。
 「日本と韓国はひきこもり先進国だ」という中段の見出しにある日本と韓国の共通点がとても面白い指摘だと思いました。
日本のどんな統計でも約7割が男性だといいます。

 これは日本が儒教文化の構造をひきずり、女性が家にいても当り前という風潮が残っているからです。女性が働かずに家にいても誰も奇異に思わない。結婚という社会化の道もある。男性は学校を出て何もしていなければ、すぐ近所のうわさになる。社会のプレッシャーが強いから一度ひきこもると、なかなか抜けられなくなるのです。
 世界的にひきこもりが多いのは日本と韓国。親孝行が美徳で、親が子どもをなかなか手放さない儒教文化圏の国です。
欧州はイタリアに多い。3カ国に共通するのは家族主義で、30代までの若者と親の同居率が高いこと。 一方、英国はホームレスの若者が多い。親が家に抱え込んでいるか路上にいるかの違いで、どこの国でも社会に適応できない若者はいるのです。
 日韓両国で多いのは受験戦争の厳しさとも関係があります。両国とも中国の科挙の名残がある。・・・略・・・思春期の段階で勝ち組、負け組をつくり、ひきこもりを生む原因になっています。
 ひきこもりは国民の多くが豊かさを共有できる社会でないと起こりえない。中国はこれからです。ひきこもりは未成熟の表れ。一般に社会が未成熟だと個人は成熟しますが、社会が成熟すると個人は未成熟になる。インフラが整っているから未成熟な個人でも生きていけるのです。

日本の今の女性が、伝統的な女性の生き方と同時に、新しい生き方も選択肢に加え、実際「男性化」した女性が増えてきているのが現状ですね。時代は女性に有利なように見えますが、実際に働く場で男女平等・機会均等が実現しているかは疑問ですし、選択肢が増えた分、迷いや悩みは増え、かつ深刻かも。結局、社会の歪が若い人や弱い人に集中して現れているようです。
後段「引きこもりの子が生き残れる資金計画が必要」という見出しですが、「最初にひきこもった世代は今、40代半ばになっています。20年後には65歳になり、老齢年金の受給年齢に達する。親の年金で生活し、税金を払ったことのない高齢者集団が一挙に出現する。これを社会がどう受け止めていくのか。また今後は若者のホームレスもふえるでしょう。今は親がひきこもりの子を抱えていますが、次第に親の意識も変化すると思うからです」と今から「こうした難問にどう対応するのか、考えておかないといけない。その時に慌てても遅いのです」と問題提起されています。
もう一つ別の垣根の曲り角には白い山茶花 ]