10月のお茶のお稽古

昨日は先月お休みだった膝の悪いNさんのために立礼(りゅうれい)式でお茶を点てるお稽古です。いつもお部屋の隅に置いてある黒塗りの家具のようなセットがすでに用意されていました。
興味津々、どんなお稽古になるのでしょう。
その前に、掛け軸とお花と香合を見ることに。掛け軸には草書体で所々判読できるものの読めません。先生に読んでいただきながら、なるほどでした。利休さんのお言葉の中から掛け軸に書かれたものです。
合っているかわかりませんが「冬は暖かき様、夏は涼しき様、炭は陽が湧く様、茶は服良き様」
お花は右上からホトトギス、下に白い秋明菊(しゅうめいぎく)と藤色のフジバカマ、黒く見える(暗紫色の)はじけた線香花火みたいなのがノダケというのだそうです。初めて知る秋の野草です。
籠は判る?と言われて、引っかかりました。竹の裾が広がっている格好に『わかった!』と大きな声で「セミ籠!」と言って大失敗。先生の娘さん(長男と同い年)と同じ答えだと言われ、「考えんと何でも言うもんじゃないよ」と笑われてしまいました。こういう時は私にとっては先生というより幼馴なじみのMくんのお姉さんです。季節を考えたら、秋の今頃に「セミ」はないですね。それも季節感をことのほか大切にするお茶席で10月にセミはあり得ません。”なるほど”です。「ナタ籠」といって、木の枝落としの時などに使う鉈(なた)を納める鉈籠をイメージしたものす。

香合は、これも「なんだか判る?」と聞かれましたが今度は用心しました。木彫りのかなりデフォルメされた形で考え込んでしまいました。先生が、「若い子に聞くとハロウィーンのカボチャと答えた子がいたけど・・・」で、二人のNさんが「柿!」と。私は『柿にしては、身はカボチャに見える』と心の中で。「ヘタのところがカボチャじゃないでしょう」と先生が。確かに、お茶席にハロウィーンはまだ早いでしょう、何年か何十年か後には取り入れられているかもしれませんが。
さて、いよいよNさんのお点前です。去年の6月にお稽古を再開したNさんも立礼式は初めてです。水屋でセットして(仕組みというのかな?)建水には蓋置きと柄杓。お茶碗には布巾と茶筅茶杓をセットしてテーブル?に出しておいて、もう一度お部屋に入る前に一礼して始めます。一挙手一投足に先生の注意が入ります。どの動作にも流れと意味があります。が、見ているのと実際自分がやるのは大違い。右と左が、柄杓と茶杓が判らなくなります。Nさんも緊張で頭真っ白、手は引きつると大変そう。
そのうち「きせわた」という名前の生菓子を入れた鉢が出されました。先生手作りの淡い桃色の菊の花の形をしたお菓子の上に白いお粉が掛かっています。白アンが入っていてシットリと甘くて美味しいものでした。「きせわた」の説明は後でと言って先生はNさんに掛かりっきりでしたので先ほど調べてみると、「きせわた」は「着せ綿」と書くそうです。菊の花の上に白い真綿をのせた状態を表しているそうです。実はこれ、菊の花の香りを真綿に移しとるため! 「平安時代の貴族の習慣で、菊の花を真綿で覆うと、夜露がつき、菊の香りが真綿に移って、翌朝、その綿で体や顔を拭った。菊の薬効により、若さを保ち、長寿を願ったというわけで、それが、旧暦の9月9日(重陽節句)の前夜、9月8日の夜の貴族の儀式であった」のだそうです。10月にピッタリのお菓子なんですね。(菊はちょっと早いかな、まだ咲いていませんね)
さて、戴く私達も今日は低いテーブルでお菓子とお茶を戴きます。正座と違って足は楽です。

Nさんに続いて私達も2服づつお茶を点てました。今回も相変わらず流れが分らなくって、次は何をするんだっけ…状態になる時がありましたが、一回目よりは落ち着いて出来ました。とにかく順序が大事。どの仕草も合理的な理由があってのことなので理屈が分れば”なるほど”なんですが、真っ白状態が訪れます。ボケなくていいよ、と言われたりして今日のお稽古も終わりました。
使ったお稽古茶碗、一つは花びらを菊のご紋のように描いたものと、もう一つは花びらを丸く描いた万寿菊という描き方の二種類。それに俵型の変形お茶碗。去年初めて目にしてビックリしたお茶碗です。高台(こうだい)は四角でマスの形です。楕円形で幅が広い方が正面になりますので、お茶を飲む時は縦にして飲みます。
朱色の漆塗りの棗(なつめ)の蓋には金色のスズメが描かれています。胴にはスズメと稲が描かれて秋のお米の収穫の絵柄でした。