逸翁美術館のお茶室

昨日は、池田にある小林一三さんの逸翁美術館内のお茶室「即心庵」で先生がお茶当番ということで、お昼過ぎNさんの車で私は桜並木でピックアップしてもらって3人で出かけました。連日のお茶です。
即心庵は4畳半の空間に床の間があり、2方を土間にした小林一三さんのアイディアで出来た昭和の新式茶室です。以前は洋館(現在は雅俗山荘)の1階、南向きのお庭に面していました。畳で本格的に点てて頂いたお茶をお客の我われは椅子に腰掛けたままで味わえるというものです。
着物姿の先生がお迎えくださって、お弟子さんがお茶を点てて、先生の娘さんがお運びをしてくださいました。
お道具類の説明は先生からお聞きしました。お道具一式は逸翁・小林一三さんのコレクションから季節のものを選んで出されています。お花は先生が朝お庭から切り出された3種、ノダケと秋明菊ホトトギス
花入れは伊賀焼きで、一はけの薄い緑色のガラス質の釉薬が美しく、形は歪(いびつ)で面白いものでした。
香合は、今度は、柿でした! 私だけでなくお連れの二人も、先生!も、「これは柿でしょ」、「柿そのまま!」でした。
玉楮(たまかじ)象谷(ぞうこく)作とあります。見た質感は金属的な感じ(鋳物のような)ですが、讃岐塗り(あるいは象谷塗りとも)と言われるものです。頂いた薀蓄(うんちく)のペーパーによりますと:

玉楮(たまかじ)象谷〔1807−1869)高松生まれ。習字、彫刻に優れていた父から学び、25歳の時、藩主より菓子盆、喰篭の制作を命じられ、以後、各種の漆芸の材料、技法を会得、技術の進歩に務めた。これらの功により玉楮の姓を受け、讃岐彫り、讃岐塗りの名をつける許しを得て、帯刀と郷士の身分を与えられた。
象谷(ぞうこく)は漆芸の先進国である中国や東南アジアなどから輸入された堆朱(ついしゅ)・堆黒などに関心を持ち、模作や改良にも苦心した。特に彫漆・存星・キンマなどを得意とした。これらは一般に象谷塗りとして知られ、受け継がれた技術は讃岐塗り、高松漆器として発達した。


(追加注)
存星(ぞんせい):中国に始まる漆工の一技法。沈金(ちんきん)により文様の輪郭を描き,中を色漆で塗り,または文様を薄く彫って色漆を充填(じゅうてん)してとぎ出したもの。中国では鎗彩(そうさい)という。


キンマ1 :コショウ科の蔓植物(つるしょくぶつ)。葉は厚く、心臓形。雌雄異株。黄色の花を穂状につける。インドの原産で、東南アジアにかけて広く栽培される。葉は辛味と芳香があり、石灰とビンロウジの種子を包み、かんで口中清涼剤にする。
キンマ2 :タイ・ミャンマー産の漆器。また、その技法。素地は、多く竹を編んで作った籃胎(らんたい)で、黒漆塗りの表面に文様を毛彫りし、朱漆などの色漆を充填(じゅうてん)して研ぎ出したもの。日本には近世に伝わり、茶道具として珍重された。→象谷塗(ぞうこくぬり)
キンマで【キンマ手】キンマ2の技法で作った漆器。元来はキンマの葉を入れる容器。キンマぬり【キンマ塗】

茶杓は白いので象牙製とわかりました。正式には箱の裏書から<利休形象象牙木賊(とくさ)蒔絵茶杓 銘「玉兎」 三砂良哉作>となっています。
木賊(とくさ)というのは緑色の茎状の植物で生け花によく使われています(参考写真→)。
兎がこの木賊で歯を研いだという言い伝えがあって、茶杓の薄い厚みの横に細長い木賊木賊)の絵が金彩で描かれているのを、小林一三さんが名づけて「玉兎」とされたというお話でした。「木賊(とくさ):本州中部から北海道にかけての山間の湿地に自生するが、観賞用などの目的で栽培されることも多い。表皮細胞の細胞壁にケイ酸が蓄積して硬化し、砥石に似て茎でものを研ぐことができることから、砥草の名がある。」

お茶碗は「刷毛目芒文茶碗(はけ目ススキもん)」で肥前(長崎)の現川(うつつ川)焼きといいます。写真のピントが合っていませんが雰囲気は出ています。白っぽい釉薬の上に波のようにススキが描かれています。
琵琶の絵が描かれたお茶碗は膳所(ぜぜ)焼きで岩崎真三作。
棗は見たことのない程大きなもの。飯器形といって直径と高さが同じくらいの大きさですが、「一閑張り」で出来ていますのでビックリするほど軽いです。
「一閑(いっかん)張り」というのは、竹籠に和紙を貼り、その上から柿渋を塗ったもので、丈夫な団扇(うちわ)などもこれで出来ています。「昔から緑茶入れや衣類入れ書籍入れなど幅広く愛用されていました。名前の由来には諸説あるようですが、一般的には農家の農閑期の閑な時に作られることが多かった為に、この名が付いたと言われています。又、大変に丈夫な為に一貫目の重さににも耐えられるということから一貫張りと呼ばれる地方もあるようです。」
この棗(なつめ)は茶道具ですので日常雑器よりは洗練されていて、漆を何度も塗り重ね、間に本物のもみじの葉が塗りこまれています。


お茶券500円を払ってお薄茶2服、生菓子と先生手作りの白菊の干菓子を頂き、その上に、逸翁コレクションのお茶道具を真近に見たり触ったり口をつけたり出来るのですからずい分とお得な体験です。(ついつい大阪人で損得勘定になってしまいます。)
終わってから、Naさんに脱原発の署名をお願いしました。前日のお茶のお稽古の時に署名を集めているお話はしてあったので、すぐ了解でした。武藤類子さんと大江健三郎さんのスピーチをお渡ししました。Nさんには頼まれていた署名用紙を。ブログを読んだNさんが、ご自分の周りでも声を掛けて署名のお約束を取り付けてくださったというので。残りの署名用紙は今朝Nさんが、お友達のAさんとわざわざ時間を取って会う約束をして、お願いしてくださいました。私自身は身内も入れて30人以上の署名が集まっています。第2次の締め切りは12月20日ですが、11月末を目標にもうひと回り訴える範囲を広げてみようかというところです。