無視され続けた地震予知

父が毎月読んだ後、一月後れで渡してくれる「文藝春秋」。その2011年12月号の記事からです。
「大型企画 真相開封35 アンタッチャブル事件史」という大きな題がついていて、年末特集ということもあって、今まで取り上げられなかった事件の報道、たとえば、「宮内庁:雅子妃『ご懐妊の兆候』は一度ではなかった」、「朝日新聞:私は原発批判記事を書いて左遷された」とか、「吉永小百合畠山みどりの自宅で『極秘結婚式』をあげた」などという項目が35あります。その一つが、「地震予知東日本大震災は予知できていた」というのです。内容をなぞってみます(一部、蛙の独断でかいつまんで)。書き手は河崎貴一(たかかず)という「ジャーナリスト」。

 2007年6月、沖縄で開催された第21回大平洋学術会議で、木村政昭琉球大学名誉教授琉球大学立教大学による協同で、「岩手・宮城・福島県沖の大平洋で、2005±5(2000〜2010)年に、マグニチュード8±(同8以上、または以下)の地震が起こると推定される」と発表された。地震が発生したのは、推定期限からわずか70日後だった。
 一方、文部科学省地震調査研究推進本部の予測では、(略)、東北については、仙台市周辺のごく一部が「26〜100パーセント」とされていたものの、仙台より今回の震源地に近い宮城県牡鹿半島周辺の沿岸部は「0.1〜3パーセント」と低く、中でも岩手県の大半と福島県の太平洋に面している浜通り地方は「0〜0.1パーセント」と、日本で最も安全な地域と予測されていたのだ。


木村氏は、東京水産大学(現・東京海洋大学)を卒業後、東京大学大学院で博士課程を修了。専門は海洋地質学である。その後、東大海洋研究所を経て通商産業省工業技術院地質調査所に勤務していた1970年代の初め、伊豆大島三原山を調査し、火口底の上昇に注目して、大島周辺での中規模地震と、三宅島と大島の噴火を警告。当時の地震予知連絡会からは黙殺されたが、1974年、伊豆半島地震(M6・9)が発生している。


琉球大学理学部の助教授をつとめていた1982年にも、三宅島での群発地震をきっかけに、三宅島と大島の噴火が近いという報告書を公表した。このときも無視されたが、翌83年に三宅島の雄山が噴火。続いて、86年には大島の三原山が大噴火し、全島民が避難する事態になっている。
ところが、木村氏の研究は評価されないばかりか、火山予知連絡会の関係者から「もう三原山に入るな」と告げられ、実質的な”立入禁止”になってしまったのだ。


<中略>


その後も木村氏は、雲仙普賢岳噴火(1990年)、阪神・淡路大震災(1995年)、鳥取県西部地震(2000年)、新潟県中越地震(2004年)などを予知し、ことごとく的中させてきた。しかも、近年は、東北地方太平洋沖地震のように、発生時期の精度は高くなっている。
それでも、地震学者は、頑なに木村理論を認めようとはしなかった。



木村氏は、5年前に琉球大学を退官したが、今もNPO海底遺跡研究会」の理事長として地質学の研究を続けている。
「3月11日、地震のニュースをテレビで知って、自分が不甲斐なくて、悲しくて、つらかったですね。ひとつは、学術的にもっと的確に事前予想が出来なかったかという思い。もうひとつは、国民の皆さんにあの地震について理解してもらう努力をなぜもっとしなかったのか、という後悔でした。海での地震が起きる可能性が高ければ、津波に対する心構えもできて、犠牲者はもっと少なくてすんだはずです」。


冒頭の太平洋学術会議での予知については、:「ギネスブックに載っている世界一大きな津波は、琉球列島近海で発生した明和の大津波(1771年)です。この時、石垣島では最大遡上高85.4メートルが記録されています。石垣島の近海で音波探査をやったところ、水深1000メートルのところで地滑り断層を発見しました。それらの調査の過程で、与那国島の海底10〜40メートルで、首里城の規模にも匹敵する石造りの城郭のような海底遺跡を発見しました。将来、本州で大きな地震が起きると、そこと同じように街や地域が水没するという危機感を持ったので、太平洋学術会議であの発表を行ったのです」


大震災後、「想定外」を言い訳にしてきた地震学者たちは、ようやく10月に開かれた日本地震学会で、「地震学の敗北」と自己批判するようになった。しかし、学会や学者たちから、木村理論を評価する声は、今もない。

地震や噴火の理由」についは、木村氏は、「プレートにかかるストレスによって火山の下にあるマグマ溜りが押し縮められると、マグマが押し上げられて噴火にが起きる。そのストレスが火山の噴火で解放されないと、近くにある断層にストレスがかかり、ずれたりして地震になる」としています。
 「大地震が起きる前には、その周辺で比較的小さな地震が頻発する。その震源地を地図上にプロットしていくと、ドーナツのように空白域が浮かび上がることがある。それが”地震の目”ともいえる地域で、大地震が起きる可能性が大きい。木村氏は、地図上に二次元的に空白域を探し出し、そこに地震の周期を時間軸として重ねあわせて解析し、地震の発生を予知してきたのだ」。

研究者の予測が一度ならず、何度も当たっているというのに、無視する「学会」というのは一体何なんでしょう?
「反省」や「自己批判」を何度やってもらっても、無視した事実に触れもしないで、予測した研究者の存在を無視したのでは信用できませんね。専門家の「ムラ」だけで通用するやり方ではなくて、素人でもわかる開かれた会合になってほしいですね。