「原発で得た豊かさは、時限爆弾の上で宴会しているようなもの」(農民作家・山下惣一)

栃木県で農業をなさっているTsudaさんのブログ「つっぴーの憂い日記」、昨日の憂いをソックリコピーさせていただきます。
TPPと福島の除染問題、農家の方にとってのTPP問題と、福島の放射性物質の除染現場を知っている方にとって・・・
「今日の憂い」(http://d.hatena.ne.jp/Tsuda_Katsunori/20130314/1363248011)から:

マスコミがこぞって、自動車メーカーの春闘結果を放送している。賞与の満額回答。その一方でTPPへの参加を表明するために、自民党内では一応反対しましたよというパフォーマンスをやり、政府と与党が臭い芝居をうった。TPPの参加交渉のテーブルに着くために、後発国は文句を言わない、議論を蒸し返さないなどの条件が付けられている事が明らかになったが、今の日本政府は、先発国で決定した事項を何一つ知らないまま、交渉参加するとしている。本気でアメリカの州になろうというのか?

私は一応農家なので、TPP参加には反対だ。でも、農協団体や農水省のような既得権益がらみの反対ではない。アメリカの本当の狙いは、おそらく日本の種苗関連の息の根を断つことだ。


アメリカでは、遺伝子組み換え(遺伝子ぶち込み)作物が一般的になりつつある。日本でもおなじみになり始めたモンサントをはじめとする巨大化学薬品メーカーが、最も効率的に利益を出すには世界の種苗を握る事だ。

TPPにはISDS条項なるものがある。これは、企業が自社の利益を妨害するような法律や政策などがあった場合、それらを蹴散らし賠償を勝ち取るための秘密道具。国際機関に訴えるとあるが、その機関とは世界銀行の下部組織だ。アメリカの支配下にある世界銀行の下部組織、そりゃ訴えられれば相手に勝てる要因は微塵もない。必ず負ける。


日本の農家の利益?バカじゃないの。
そんなもんじゃすまないよ。TPPに参加すれば、間違いなくモンサント社は日本の種苗関連を狙ってくる。ボケッとした日本人じゃ、気が付けばモンサント社の種苗以外使えなくなっている可能性もある。
全部が遺伝子組み換え作物になるって、どんなに恐ろしい状況なのか。


有機栽培農家の多くが、自家採種をしているがそれができなくなれば、伝統野菜はすべて消え、モンサント社が開発した遺伝子ぶち込みの種苗(しかも1代交配なので、毎年種を買う羽目になる)のみになる。当然、作物の多様性が失われるので、病害虫への抵抗力もなくモンサント社製の農薬という名の毒もセットで買う羽目になる。まるでSF映画のようだが、すでに世界各地で起こり始めている事実だ


そして、遺伝子組み換え作物は、人体への健康影響以外にも生態系への遺伝子汚染というとんでもない側面がある。1度遺伝子汚染が始まれば、もう止めることができない。地球の中で何億年もかけて適応してきた動植物の遺伝子を、モンサント社のサル知恵レベルで拡大するのはあまりにもリスクが大きすぎる。


今日の憂いはもう一つ。

全然メディアで放送されないのが福島県の除染問題。一昨年夏に南相馬に行った時、私はこのブログ内で除染は無理だと書いた。そして今、福島県内の除染が難航し除染目標である年間1ミリシーベルト以下にする事は事実上無理だと、国が言い出した。

現実的範囲で適切な数値として年間20ミリシーベルトに力を入れると、復興庁の星野岳穂参事官が口にした。

やっぱりね。


現場を自分の目で見れば、年間1ミリシーベルト以下にする除染なんて無理だと素人の私にも分かる。
年間20ミリシーベルトでも安全だと、基準を緩和する方向に動き出した安倍政権。


20ミリシーベルトで安全宣言が出されれば、自主避難者を含め放射性物質から我が子わが身を守ろうとする人と、福島県内に残っている人々の溝を更に広げることになる


国は原子力政策を推し進めるためにも、福島県民を帰還させたい。
東電は賠償額を少しでも減らすために、福島県民を帰還させたい。


この基準緩和に透けて見える、国と東電の醜い考え。


過去の公害事件となんら変わらぬ、・・・、いやより巧妙に立ち回る
国と原因企業があり、無関心を決めこむ国民がいる。


TPPにしろ、原発問題にしろ、全て春闘満額回答の陰に薄れてしまった。

お金も大事だけど、もっともっと大事な事がいっぱいある。

年間20ミリシーベルト、というと思い出します。
小出裕章さんがお仕事で入っておられる区域、厳重に隔離され防護服を着て入る区域、決して一般の人が普通に入る場所ではなく、ましてや子供を入れたりなんてもってのほかという場所でした。熊取では今もそうでしょう。そういったレベルの地域に非常時だから、除染が出来ないから住んで良い、帰還してくださいというのが、「基準緩和」です。いったん決まってしまうと、健康を心配して帰還に応じない人たちは過剰な心配性で政府の決定に従わない人として異端視されるでしょう。放射能被害地にますますの混乱と分断と差別を持ち込むことになります。こんなところでケチらないで下さい。自民党の長年の原発推進政策の犠牲になられた方たちを、国は、とくに自民党政権は、どれほど費用(国費)がかかろうと救済して、事故を封じ込める責任があります。
●●先日ブログで紹介した京都での辛淑玉(しんすご)さんの講演で「福島は原発事故で生まれた新しい差別部落だ、水俣と同じ」というお話がありました。その水俣の患者さんを小学校に招いてお話を聞くという特別授業がありました。つっぴーさんの子どもさんが通う由緒ある名前の合戦場小学校でのその授業が公開されています。コチラから入って是非どうぞ:http://d.hatena.ne.jp/Tsuda_Katsunori/20130311/1363010651

●●●このブログのタイトル「時限爆弾の上で宴会しているようなもの」は毎日新聞3月12日(東京夕刊)の農民作家・山下惣一という方を取り上げた記事から頂いたものです。全文はコチラ「shuueiのメモ」さんの「豊かさとは 農民作家・山下惣一さん」:http://d.hatena.ne.jp/shuuei/20130313/1363119297

一部を引用してみます。

 <この国はどこへ行こうとしているのか>  
◇平和なら成長いらない−−山下惣一さん(76)


@ 2年前の3月、山下さんは唐津駅に車を走らせた。改札から出てきたのは東京に住む中学2年と小学5年の孫娘。2人の母である山下さんの娘が放射能の影響を心配して避難させたのだ。「リュックを背負い、両手に大きな荷物を持った姿に『学童疎開』を思い出しました」。複雑な気持ちになった。「家は九州電力玄海原発の10キロ圏付近。疎開先は東京より原発に近い。54基もの原発がある日本に本当の逃げ場はないのだと思い当たりました」 


@ 福島第1の事故前から原発には反対だったが、周囲が安全と信じ切る中、声に出すのをはばかった。事故後は玄海原発の運転差し止め訴訟原告団に加わった。  「原発は人間の生存基盤を脅かしながら経済成長に貢献してきた。おかげで豊かになれたが、時限爆弾の上で宴会をしているようなものだった。 3月11日の直後には多くの人がそれに気づいたはずです」


@ 「農業の基盤になる自然界は進歩も発展もなく、永遠の循環を繰り返しています。気候変動に悩む農家は去年と同じように今年の収穫が、今年と同じように来年の収穫があるのが一番ありがたいんですこうした状態は私たちには『安定』だが、経済社会では『停滞』とみなされてしまう」



@ 「劣等生」は今、最大の試練にさらされている。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加問題だ。「農業就業人口は250万人で就業者全体の4%に過ぎない。国内総生産に占める比率はわずか1%程度です。しかし、この4%の人がカロリーベースで4割という日本の食料自給率を支えているのです」。農水省の試算によると、関税を撤廃すると自給率は13%に下がる。「安い輸入米を食べる日本人が増え、国産の米は高級品として輸出されるようになります。日本に農業が必要とされるのは日本人自身が食べる米を作っているからで、輸出のためだけの農業なら意欲を保てるでしょうか」


@ 成長の観点からは劣等生かもしれない。だが、農には農だけのかけがえのない価値、豊かさがある。里山や水田、春の小川……日本人の原風景とされる世界は農業によって培われたものだ。「日本の自然を守ってきたのは農なんです


@ だからこそTPPを「原発と並ぶ破局への両輪」と危惧するのだ。「急激な成長はどこか、もろさをはらむ。ウバメガシのように成長が遅い木は硬く長持ちするが、モヤシのようにすぐ成長するものは腐敗も早い」