「平家物語」・治承4年の遷都


9月から2年目を迎えた古典文学の「平家物語」、10月は4日の土曜日でした。前回9月に読んだのは、巻五の「富士川」でした。とっても面白いお話でしたので、本文と読み下し文を参考にお話の筋書きを。
これより以前は、文覚上人(もんがくしょうにん)が伊豆で源義朝のドクロを持って頼朝に挙兵を唆(そそのか)しました。

●平家の新しい都・福原(神戸)では、頼朝方に勢が加わらない内に急いで討手を下すべきと、大将軍には清盛の孫の小松権亮(ごんのすけ)少将維盛(これもり)、副将軍には薩摩守(さつまのかみ)忠度(ただのり)が総勢3万余騎をひきつれて、治承4年(1180年)9月18日に出発。
ここで、23歳の大将軍の、絵に描いても”筆及び難し”ほどの容姿といでたちの説明があります。色鮮やかな鎧直垂(よろいひたたれ)に連銭葦毛(れんぜんあしげ)の馬に金覆輪(きんぷくりん)の鞍置いて…という眉目秀麗な若武者の贅を凝らした出で立ちは光り輝くほどで素晴らしい見物である。

と、始まる「富士川」です。頼朝勢は20万。3万で出発した平家の軍勢は10月16日には駿河の国の清見が関で7万以上に。23日、明日は源氏と平家が富士川で合戦かという前夜。戦場となるのを恐れた民百姓が野や山へ逃げ隠れ、煮炊きを始めた。その火を見た平家の兵士は噂の源氏の大軍と見間違って恐れおののいた。その時、何に驚いたか水鳥が一度にぱっと羽音を立てて飛び立った。これをきっかけに平家の兵士たちが慌てて一斉に逃げ出した。翌24日の午前6時ごろ、源氏の軍勢20万騎は、富士川の岸に押し寄せて天にも響き大地を揺るがすほどの鬨の声を三度あげた。


以上が「富士川」ですが、それに続いての「五節の沙汰」と「「都帰り」が土曜日読んだところです。
毎回、先生が初めに少しお話しされますが、今回は、自然災害について。「広島の土砂災害の後には木曽の御嶽山の噴火と、日本はサンザンですね。御嶽山は先生のふるさと濃尾平野からはいつも見えた懐かしい山で8合目までロープウエイがあって登り易い親しみのある山だった。何があるかわかりませんね。ここまで生きたら良いかな、とも思いますが、寿命が尽きるまでは元気で楽しく…ですね。」 で、みんな笑いながらスタートでした。

富士川で無残な負け方をした平家は、東海道の宿場の遊女らに「敵の姿におびえて逃げることすらダメなのに、物音におびえて逃げるとは」と馬鹿にされ、落書で皮肉られたりもした。11月8日、大将軍維盛(これもり)が新都福原に帰還。入道生国清盛は激怒して、「維盛は鬼界が島に流刑、副将軍忠清は死刑にせよ」と命じた。翌日の平家の侍、老少参会しての評定(会議)では、忠清を擁護する意見が出て、11月10日には、維盛は右近衛中将に。結局敗戦の責任を問われることなくご褒美までと人々はささやき合った。

先生曰く、「今と同じですね〜失敗に対してきちんと責任を問わなければ自分に対しても甘くなるし組織としては体(てい)をなさず無責任になってしまう。」


●「都帰(みやこがえり)」 治承4年(1180)年は、平家没落の切っ掛けの年で大事な年です。この年の6月に都を京から福原(神戸)に移して、半年でまた元に戻すわけですからね〜と先生の解説です。
そもそも今回の遷都は、帝も臣下も、比叡山も奈良の興福寺も諸寺諸社に至るまでよくないことと口をそろえて訴え申すので、さしもの横紙破りの太政入道清盛も、それなら都帰りだと言い出して、京中大騒ぎ。
同年(治承4年)12月2日、突然都帰りが行われた。福原で病気がちだった(安徳天皇の父親の)高倉院は急いで福原を出るし、摂政はじめ太政大臣以下の公卿・殿上人は先を争ってお供。平家一門の公卿・殿上人もいやなことばかりの新都を捨てて我先にと上京。
去る6月には京の家屋を壊し、資材、道具などを運び形だけは建てたのだが、何の指図もない中、打ち捨てての上京。みな住むところもなく京の都の周辺にある御堂の回廊や神社の拝殿などに宿を借りる始末。
この度の(福原)遷都の真意は、旧都は南都北嶺(南都=奈良の興福寺・北嶺=比叡山)が近く、些細なことにも春日神社の神木や日吉神社の神輿などを持ち出して騒動になる。京からは山や海で遮られた福原ならそういうことも出来まいという入道生国(清盛)の考えだったとかや。


先生曰く、「半年で撤回とはね〜いくら横紙破り(和紙は縦には破り易いが横には破れない=出来ないことをする我がまま=横車を押す)の清盛とはいえ。
安倍さんはどうなんでしょう? 
アベノミクスと言ってもね〜。年寄りにはメリットが無いようですが、若い人には、あるんでしょうか。」

◎最初のお話には大河ドラマ軍師官兵衛」に触れて、先生は「人間ってね〜、登り詰めたらあんなふうになるのでしょうか、秀吉…」と、しばらく関白秀吉や石田三成と官兵衛の確執に。「後に黒田が徳川方につくのがわかるわね〜」とも。
「平家にあらずんば人にあらず」「驕る平家は久しからず」 奢る安倍政権はどうなんでしょう?
(ネットの画像をお借りしました。「平清盛」は書家・金澤翔子さんの書で大河ドラマのタイトルでした。)