「米国に挑む二つの島、沖縄と済州島、つながる闘い」(クリスティーン・アン氏)


◎いつも貴重な資料や情報を掲載されている「ウィンザー通信」さんですが、今回は、新聞記事からです。
書き手は、クリスティーン・アンというアメリカに住む朝鮮半島出身の方で、記事の紹介を読むと、朝鮮半島の分断と闘う平和活動家。
アン氏は、「米国に挑む二つの島」として、「沖縄の基地建設反対の闘いと、韓国済州島の海軍基地建設反対運動との相似性を考えた」そうです。
どちらの地も、中央政府に軽んじられてきた歴史を持つが、沖縄人も済州島住民も、自国政府と、世界最強の軍隊を持つ米国に対して、挑戦してきた。」
この記事を読んで、気づかされました。日本のこと、沖縄の事だけに目を奪われていましたが、日本の敗戦をきっかけに、朝鮮半島は米ソによって戦場となり、10年後には38度線を境に過酷な国家分断を余儀なくされたのでした。
沖縄の人々が主権回復を求めているのと同様、朝鮮半島の人々も、他国の干渉を受けずに自己決定できるようになる将来を切望している」とアン氏は書いています。アジアの中の日本を考えてみると、また別の大きな問題が浮かび上がり、案外その方が個別の問題が良く見えてきます。この記事を準備していると、今朝、韓国のアメリカ大使が切り付けられたというニュースが:

 【ソウル支局】米国のリッパート駐韓大使がソウル市内で襲撃され、顔にケガをした事件で、逮捕された男は2010年7月にも重家俊範駐韓日本大使(当時)に石を投げ付けて捕まり、有罪判決を受けていたことが分かった。聯合ニュースが報じた。
 聯合ニュースによると、リッパート大使を襲った男は50代。その場で取り押さえられた。その際、男は「戦争訓練反対」と叫んでいたという。

ウィンザーさんが全文を書き起こしされていますのでコピーさせていただきます。

米国に挑む二つの島


正義への責任ー世界から沖縄へー
クリスティーン・アン氏(著述業、平和活動家)


沖縄と朝鮮、つながる闘い


 去る12月、辺野古の海岸を歩きながら、この地での基地建設反対の闘いと、韓国済州島の海軍基地建設反対運動との相似性を考えた。どちらも、人々は、持てる全てを注ぎ込んできた。日々の暮らし、貯金、家族との関係、身の安全、時には自由さえも。


 地域社会を軍事化から守り、あらゆる生命体が依存している貴重な生態系を守るためだどちらの地も、中央政府に軽んじられてきた歴史を持つが、沖縄人も済州島住民も、自国政府と、世界最強の軍隊を持つ米国に対して、挑戦してきた


 私が昨年、沖縄に行ったのは、翁長雄志氏が、新基地反対の立場で知事選に勝った直後であったが、その時思った。済州島住民はどうして、基地建設を招いた非民主的な過程に立ち挑む指導者を、選ぶことができなかったのか。


 一つの大きな違いは、沖縄の場合基地の主体は明らかに外国勢力であり、特に、女性や子どもへの性暴力という、凶悪犯罪の歴史を抱える海兵隊の基地であることだ。 済州島の場合は、米軍が新基地を使う、という証拠はそろっているが、公式には、自国防衛のためとされている。


 さらに深く考えると、双方の島の抵抗運動の接点は、未解決の朝鮮戦争にある。この戦争は、7千万人の国民を、いまだに戦争状態下に置いたままだ。 1945年、日本の敗戦後、米国は、35年間日本の植民支配下にあった朝鮮半島に上陸した。 解放と主権回復を待ち望んでいた朝鮮の人々の合意もなく、米国とソ連は、半島を、38度線で分断した。この分断は一時的なものであるはずだったが、別々の国家が形成され、1950年から53年の朝鮮戦争を招いた。この戦争は、400万にも及ぶとされる死者(主に朝鮮の民間人)を生んだ後、53年7月27日に、北朝鮮、中国両軍と、国連軍を代表する米国による休戦協定が結ばれた。3ヶ月以内には平和条約に調印する、との約束があったが、62年経った今も、我々は待たされたままだ。


人権抑圧に戦争利用


■紛争解決へ女性の力を


 朝鮮戦争が未解決であることにより、南北の政府と日本、中国、米国といった地域の勢力が、ミサイル防衛から核兵器開発まで、巨額な軍事投資をしてきた。それに伴い、社会福祉、教育、育児支援といった分野への投資不足が恒常化している。 沖縄でも、新基地を容認させるために、北朝鮮の脅威が利用されてきたと、平和運動家の高里鈴代氏は、私に語った。


 また、南北両政府は、未解決の朝鮮戦争を、国家安全保障の名目で、人権抑圧に利用している。 北朝鮮のそれは周知の通りだが、あまり知られていないのは、韓国政府が、体制に抵抗する人、特に北朝鮮に同情的だったり関与したりする人を訴追するために、時代遅れの国家保安法(1948年施行)を用いていることだ。


  国連人権委員会などが、韓国に対し、この曖昧な冷戦時の法律を、撤廃するよう勧告している。1月には、コリア系米国人で54歳の主婦、シン・ウンミ氏が、北朝鮮への旅行記で、 当地の人々がいかに心優しく、朝鮮統一を望んでいるかということを書いただけで、 韓国政府は、国家保安法を用いて国外退去させ、5年間の入国禁止処分にしている


 しかし、朝鮮半島の分断がもたらした一番の悲劇は、幅約4キロの非武装中立地帯(DMZ)を挟んで、何百万もの家族が、離れ離れのままであることであろう昨年4月、韓国の朴槿恵大統領は、ドイツのドレスデンで、朝鮮統一について演説し、「2013年だけで3800人余りの人が、せめてもう一度我が子の手を握ることさえできれば、せめて生きていることだけでも分かればと願いながら、亡くなりました」と語った。このような戦争状態を終わらせ、離散家族が再び一緒になれるよう、きたる5月24日、女性平和活動家30人が、南北朝鮮の女性たちと、「2015朝鮮半島の平和のための女性ウォーク」を行う。ピョンヤンとソウルで、国際平和シンポジウムを開催し、南北朝鮮の女性たちの経験に耳を傾け、 戦争終結のために、どうやって女性の力を集結していくか話し合う。 私たちの望みは、平和を象徴する行動として、非武装中立地帯を歩いて渡ることだ


■平和と和解は可能


 平和が達成可能なものであり、それは、女性の地位向上と表裏一体であることは、歴史が示してきた通りである。このウォークに参加するマイレード・マグワイア氏やレイマ・ボウィ氏は、それぞれ北アイルランドリベリアの紛争解決に、具体的な役割を果たし、ノーベル平和賞を受賞した。これらのケースのように、我々の非武装中立地帯を歩く試みにより、朝鮮半島の緊張を緩和し、平和と和解は実際に可能なのであるという気持ちを、新たにすることができる。


  私が朝鮮半島の問題に関与し始めたのは、1990年代、北朝鮮の食糧危機を知ったときだ。 北朝鮮問題を学べば学ぶほど、全ては、未解決の朝鮮戦争に起因していることが分かった。 私は、米国に住むコリア系米国人として、朝鮮半島を分断し固定化した米国政府の過ちを、米国国民に教えていく責任がある、と思った。


 朝鮮半島の紛争を解決することは、その地の人々に、癒しと平和をもたらすだけではなく、北東アジアにまん延する軍拡競争を、和らげる役割を果たすだろう世界軍事予算のトップ10のうち、5カ国ー米国、中国、ロシア、日本、韓国ーが、この地域で軍事展開していることを考えると、その影響力は絶大である。


  沖縄の人々が主権回復を求めているのと同様、朝鮮半島の人々も、他国の干渉を受けずに自己決定できるようになる将来を切望している。覚えていてほしいことは、我々の闘いは全てつながっており、沖縄の人々が基地なき平和な沖縄をたゆまず希求するとき、希望の光が地域全体、そして世界に照らされる、ということだ。よりよい未来の実現のために闘おう。

◎引用元:「ウィンザー通信」さんの<「米国に挑む二つの島、それを支え共に闘い、北東アジアにまん延する軍拡競争を和らげよう」Ahn氏>(http://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/af0e79d0f25d47bec31ce284ef835257