若杉冽×古賀茂明(告発対談)「最悪な政策と最高の政権運営」


「世相を斬る あいば達也」さんのブログの先月21日の記事「●官邸の恫喝が凄いのか、脅しに弱い人間が情けなのか?」と22日●今、最悪の組合せが実現 「最悪な政策と最高の政権運営というタイトルですが、元経産省官僚の古賀茂明氏と現役覆面官僚の若杉冽氏との対談が掲載されています。端折りながらコピーしてみます。が、その前に「あいば」さんの今日のブログから毎日新聞の記事の一部を:

政治とカネ:内閣支持率が下落傾向 自民に危機感じわり
 内閣支持率が下落傾向を示し始め、自民党内にじわじわと危機感が広がりつつある。党幹部らは閣僚の「政治とカネ」を巡る問題が長期化したためとみて、統一地方選を前に引き締めに動き出した。
 「政治とカネの問題が予算委でも取り上げられ、少しボディーブローみたいに効いている」。10日の自民党役員連絡会前の打ち合わせで、谷垣禎一幹事長が危機感を示すと、 高村正彦副総裁も「そうだな」と同調。高村氏は役員連絡会の冒頭で「内閣、政党支持率が若干下がっているが、反省すべきは反省し、謙虚に対応することがまず大切だ」と党幹部らに呼びかけた。NHKが9日公表した世論調査で、安倍内閣の支持率が前月比8ポイント減の46%、自民党の支持率も4.5ポイント減 の36.7%と低下したことを踏まえた発言だった。

先月の時点では、タイトル通り「最高の政権運営」だったのですが、とうとう綻びが出始めたというところでしょうか。それでは、2日間に及ぶ大変長い記事の中から:

≪『東京ブラックアウト』若杉冽×古賀茂明 (告発対談 「キャリア官僚はメルトダウン中に再稼働を考え始める生き物です」)


『東京ブラックアウト』は、フクシマ原発の事故後、原子力ムラの思惑通りに原発が次々再稼働して行く過程を描写するところから始まるノンフィクショ ンノベルだ。その後、再稼働した「新崎原発」がテロにあい、全電源を喪失、メルトダウンする。避難計画は機能せず、やがて東京にも放射能の雨と雪が降りそそぐ・・・・・・。 現役キャリア官僚だから書けたリアリティある悪夢。近い将来、このシナリオは現実のものとなってしまう可能性が高い。 原発再稼働はなぜ止まらない のか、安倍官邸を牛耳るのは誰か、この流れを止める政治家はいないのか、などについて、作者の若杉冽氏と、同じく霞が関の官僚を知り尽くした古賀茂明氏 が、120分語り合った。


【 若杉冽(わかすぎ・れつ) 東京大学法学部卒業。国家公務員Ⅰ種試験合格。現在、霞が関の省庁に勤務するキャリア官僚。著者には、ベストセラーになった『原発ホワイトアウト』がある。】


【 古賀茂明(こが・しげあき) 1955年、長崎県生まれ。80年東京大学法学 部卒業後、現在の経済産業省入省。経済・産業政策の要職を歴任、08年、国家公務員制度改革推進本部事務局審議官に就任。急進的な改革を提言したが、民主党の反対で廃案に。東日本大震災福島第一原発事故を受け、東電の破綻処理などを『日本中枢の崩壊』(講談社刊)で好評、11年9月退官。その後は『報道ステーション』ほかメディアで精力的に発信。近著『国家の暴走』(角川oneテーマ21)では安倍政権の危険性を指摘、「改革はするが戦争はしない」国の実現を模索する。】  


■ パニック時に再稼働を考える官僚という生き物


若杉: 新崎原発メルトダウンして、格納容器が爆発して首相官邸も騒然となる中、二人の原子力ムラの人間が騒然とする官邸を抜け出して、「まずいことになりましたな」と言いつつ、今後のことをそっと打ち合わせします。経産省キャリアで資源エネルギー庁の次長と、「日電連」の関東電力出身の常務理事の二人ですね。


古賀: ひとりは今、安倍官邸で中心的存在の人がモデルで、もう一人も、東京電力から電事連に出向して、電力会社が政治家にカネを配る仕組みを作った人がモデルでしょう? この二人が、フクシマに続く2度目のメルトダウンの直後に、またしても作業員や住民の被ばく限度を引き上げるところから始まって、懲りずにまた原発を再稼働させるスキームを作っていく。一般の人にとってはさすがにありえないと思う場面ですよ。


若杉: でも官僚的には当然、ああいう会話になるわけなんです。それはそうですよね、メルトダウンで格納容器が爆発して、日本がパニックになっているときに、同じ方向に電力関係者も役所も官僚も走っていっちゃったら、事態の収拾はできないわけですから、パパッとああいう今後へのロードマップを作ります。 ロードマップを作るときには、当然、省益や自分の将来に不利益にならないことを考えます。たとえば与党の政治家が次の総選挙で、「脱原発」と言うのは認めるが、「即ゼロ」と言ってしまう人間は電力業界として支援しないことにしよう。 原発事故の被災地の復旧・復興の財源を、事故を機会に原子力発電に課税することでひねり出してまおう。つまり実質再稼働するのを前提にしよう、などをメモにする。メモを作るというのは、有能なキャリア官僚なら必ずやりますよね。

■ 安倍官邸にいる「優秀な」キャリア官僚たち


古賀: そうですね。筆頭秘書官の今井尚哉さん、事務秘書官に柳瀬唯夫さん、内閣広報官の長谷川さん、この経産省キャリアたちはすごくうまく機能していて、その3人って僕が役所にいるときはもちろんだけれど、常にいろいろ議論したり、一緒に仕事したりもした、ちょっと恐ろしい人たちなんですね。しかも、今年は総選挙がなくなりましたから。

若杉: やりたい放題ですよね。それにしても今回の解散は永田町自体、ほとんどみんな騙されてましたよね。財務官僚も日銀の人たちも怒り狂ってましたよ。

■ 官僚にとって安倍官邸の強権人事は恐怖
■「電力モンスター・システム」とは何か
≪ 「安倍政権に危機感を持ってるハト派の官僚は実はたくさんいるんです」■小泉進次郎は期待できるのか?■調子のいい経産官僚

■「戦争はしないけれども改革はする」党は成立するか


古賀: 自民党が気がついてないだけで、今、だんだん山体膨張みたいな感じになってるというのが僕の見方で、選挙直前になればみんな、どこの党を選ぼうかというので政党支持率というのを見ると無党派がだんだん減っていくんですけど、選挙がないときは無党派がずっと膨らんできたじゃないですか。もう半分前後、常にあるという。集団的自衛権閣議決定しました。それで10%落ちましたと。結局、今、受け皿になる政党、政治家がいないなと、みんなが感じていて、だからしょうがないな、無党派だと。

若杉: ところが選挙になると、入れるところがないという。しかたないから共産党に入れた。

古賀: 僕は、このまま行くと、安倍政権っていうのは確実に戦争に向かっている。しかも安倍さんとして見れば何が何でも、ただ戦争したいと思っているわけじゃもちろんなくて日本を守るためには戦争できるような体制をどんどん整えなくちゃいけない。それは武器輸出三原則をなくしちゃったっていう、ここがすごい大きいと思うんですね。 最初は、武器輸出解禁したって、アメリカとかイギリスとかフランスとかロシアとか中国が入り乱れてものすごい競争をやっている中にポッと出の日本の業界が、はい、性能がいいです。買ってくださいなんてやったからって、そんな簡単に売れるようなことはないし、全然、心配ないですよという話だった。ところが 4月に解禁して、今や日本の潜水艦がすごいとか、日本の何とか式戦車がすごいとか、ありとあらゆる分野で日本の技術はやっぱりすごいですよ。あとは値段だけだと。

■悪魔のジグソーパズル


安倍政権は最悪の組み合わせ


古賀: 今の安倍政権っていうのはすごい悪い組み合わせなんですよね。政策がおかしいんです。だけど政権運営はすごくうまいんです
若杉: 最悪の組み合わせですよね。悪い政策が着々と実現していくという恐ろしい組み合わせです。


古賀: 民主党の場合はみんなが一時期、期待して、いい政策も持っていたのかもしれません。けれども政権運営がめちゃくちゃだったので、何もできないで終わった。1番いいのは素晴らしい政策を持っていて、かつ政権運営もきっちりできるということになれば国民のためになることがどんどん実現していく。 それを仮に第4象限の勢力が大きくなって政権を担うということになったときでも政策はいいんだけど政権運営をきっちりやらなきゃいけない。そのためにはおかしな官僚にだまされたり、あるいは足を引っ張られたりとか、そういうチャレンジがあっても、だまされないようにする。


若杉: 民主党政権は目指していたことは、自民党オルタナティブとしていい政策もたくさんあったと思います。ただ、前作『原発ホワイトアウト』でも書いたとおり、烏合の衆で、政権を取るまでが目的化していて、政権をとった後の官僚の操縦術、掌握術がまるでだめだった。 「改革派官僚を行政内部で公募する」なんて気張ってみても、官僚は政治家と180度違ってリスク回避志向が強い人種です。政治家の側が見極めて引っ張り上げないといけない。


心ある官僚のリクルートが必要


古賀: 心ある官僚をちゃんと見分けて引っ張り上げて、政権運営をしていくという、それをやらなくちゃいけないので、そうするとやっぱりある程度の数の心ある官僚とか、元官僚とかいう人をリクルートしておく必要があるんです、事前に。 そういう人がいるとなれば、第4象限の党に行ったってうまくいくのかなっていう不安感を持っている政治家に対しても、こんなにサポートする官僚部隊がいますよとアピールできる。もうすでに霞が関を辞めた人の中でも改革派といわれる人は少しはいるんだけど最近、ちょっと辞めた人たちがおかしくなっていってるような感じもあってね。

若杉: ああ、そうですか。あっ、確かに一部、そういう人たちもいますね。

古賀: いきなり原発推進派になって、電力会社に買収されちゃったのかなという人とか、急に専門でもないけど集団的自衛権とか、バンバン応援してみたりとか。結局は安倍政権があまりにも強いので、反対していても飯の種にならないなって判断するという。

若杉: せっかく役人を辞めたのに残念なことですよね。本当に。


古賀: 辞めろとまでは言わないけど若杉さんみたいな形でチャレンジしたり、あるいは政権の中からいろんな改革を叫んだり、叫ぶとつぶされるというのであれば、外の人を使って、それを実現しようとしたり、あるいは思い切って外に出て、中の人と協力しながらそういう政治勢力をつくっていこうとか、そういう改革派的な官僚というので、もう1回、ちょっとね。 若杉さんが私が若杉ですよと言ってやるわけにいかないけど、本名で。いや、若杉という正体とは全然、違う本来の自分の現場の立場でそういう人をちょっと探してもらって僕ら外にいる人たちといろいろ勉強したり、何か、そういうのってできないですかね。

若杉: もちろん私も努力しますけれども、当然、私が知らないところにも改革派の卵はいると思うので、ぜひ、このメルマガなり、雑誌の記事を読んだ方にはですね、直接、第4象限の党首の古賀さんに連絡をしてください。

古賀: いや、いや、私は党首とかはいいんです(笑)。

若杉: そこで古賀さんが党首じゃないっていうのもちょっと話の流れ的に・・・・・・。

古賀: まあまあ、それはさっきの逆襲ですね。逆襲を受けてますけど(笑)。 それで第4象限の党っていうのはわかりにくいので、今、フォーラム4っていうのを始めようかと。フォーラム4の霞が関支部だったり、あるいは何々省支部的な人たちをつくってもらう。それでやりたいという人はもちろん僕に直接、連絡をとってもらってもいいし、あるいは講談社のこの『東京ブラックアウト』編集部宛に若杉冽さんを私は手伝いたいという手紙でもメールでももらってもいいし、それは本当に10人とか20人とか集まったらすごいことになりますよ。

若杉: そうですよね。「改革はするけれど戦争はしない」というのは、僕は思想信条的には大賛成ですよ、それは。

古賀: もうすぐにも立候補したいと。

若杉: いや、いや(笑)。たださっきも出ましたけれど、現実の政治を今、やってる人で、それを担ぐ個人名はあまり見えてこないのは・・・・・・。渡辺喜美さんとかはそうだったんですか?

古賀: 昔はそうだったけど、思い切りタカ派になっちゃった。江田憲司さんはそのうちタカ派の橋下さんと大ゲンカして割れたら、第4象限という可能性はあります。民主党の中で実は潜在的にはけっこういると思うんですね。だけど強力なリーダーがいないんですよ。今、1番近いのは長妻さんなんだけど、長妻さんはやっぱり…。

若杉: 長妻さんは代表選で官公労が支持してましたよね。霞が関改革派の長妻さんが公務員の組合の支援を受けるというのは、あれ、どういうことかわかんないんですけどね。
古賀: 長妻さんだけでしたからね、民主党政権天下り撤廃とか本気で戦って、厚労省の逆鱗には触れるし、財務省はつぶしにかかったんですね。 だから公務員改革とか1番熱心なはずなんだけど、今回は、岡田さんにしても、細野さんだって本当は組合なんか嫌いなんだけど、とにかくみんな、組合票っていうのが1番当てになるんですよ。今回は長妻さんの考えはやっぱり離党するより、代表戦で勝った方が近道だろうということだったんでしょう。でも勝たなかったのでよかったかなと(笑)。

若杉: じゃあ、将来の第4象限の党は長妻党首の可能性もありますね。

古賀: もう、霞が関アノニマスとか、そういうのもいろいろ始めてみたいと思いますので、ぜひ、心ある官僚の方々はわれこそはと。あるいはちょっとのぞいてみようでもいいんですけど、まあ、難しいんでしょうけど、若杉さんのように覆面してでもいいので、是非参加してほしいと思っているんですよ。(文中一部敬称略)  ≫(現代ビジネス:メディアと教養・スゴ本の広場)

◎引用元(21日):http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/c1e0fdf6bab1e8644bb04b18e24ff4e9
    (22日):http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/7c2291b83aa399cfbe20923a7b1c1008