「はじ恋最終回」・もう一つのテーマ「親と子」


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深田恭子さんのドラマが始まったということで4話あたりから見始めた「初めて恋をした日に読む話」が、火曜日に最終回を迎えました。最初はイケメン男性三人から恋される綺麗な予備校講師のラブコメディーだと思っていましたが、原作が良いのか、脚本が良いのか、これがなかなかの内容でした。受験、それも東大受験を、絶対受からない高校の生徒が一念発起で挑戦する、その手伝いを東大受験失敗のに塾講師が合格目指してともに頑張る。

持田あきの同名漫画を基に、鈍感な塾講師の順子(深田恭子)とタイプ違いの3人の男性の四角関係を描く本作。幼い頃から順子に思いを寄せるいとこの雅志(永山絢斗)、順子の教え子であるピンク髪のイケメン高校生・匡平(横浜流星)、匡平の担任でもある順子の同級生・山下(中村倫也)という、三者三様の男性陣に魅了される視聴者が続出しており、放送後には「はじ恋」「ユリユリ」などの関連ワードがTwitterでトレンド入りするなど、盛り上がりを見せている。

それだけの話かと思っていたのですが、もっと大きなテーマがありました。

東大を目指すピンク頭の不良高校生は、中学生?の頃に母親を病気で亡くしています。母の死に目にも合わず仕事にかまけていた高級文部官僚の父親を許せないと恨んでいます。32歳の順子は、東大一族の家庭で母の期待に応えられなかった東大不合格の傷が未だ癒えていないし、母親のことは苦手です。ここに、親の頚木を脱して大人に成長するという二人の物語が語られます。

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私自身も、戦後民主主義のスタートの頃の世の母親の期待を子供に託すという時代を一身に感じて成長してきた一人として、とても身につまされる思いで見ることになりました。戦争が終わるまで、日本の女性は選挙権がなく、大学教育を受ける人はごく少数。大学を出た女性の仕事も限られていました。ところが、戦争に負けたおかげで男女同権、男女平等が転がり込んできました。勉強ができれば女だって大学に行ける時代になって、頑張ったのが母親です。自分たちの叶えられなかった夢を息子や娘に託し始めたのです。私の場合は、三人姉妹の長女でしたから、母は張り切ったのですね。

母親だけじゃない、先生方もそうでした。それまで優等生は男子と決まっていました。ところが、女先生たちが張り切って、女の子だって…と思ったり。高校でも戦前の元女子高でも戦後は共学になり、できれば国立大学の合格者を出したいと先生たちや親が張り切って。そういう風潮の中で小中高時代を過ごした私自身も、男女平等は当たり前だと思い込んでいました。大学を出たら女だって働くのは当然と思っていました。そして、母親の頚木(くびき)から逃れる手立ては結婚。苦手の母親にまともに立ち向かうことなく逃げました。

このドラマの順子は、逃げないで親元にいながら、不意に現れた17歳の由利匡平という高校生の東大へ入れてくれという願いを引き受けて、もう一度受験から青春をやり直しながら、当時の母親の立場を自らトレースすることによって母親を理解し、自らの失敗を経験として生かせる予備校講師の仕事にやりがいを見出し、様々な葛藤を経て、”まっとうな大人”に成長していきます。

由利匡平も、大好きな順子先生を慕いながら、東大合格という目標に向かって猛勉強する過程で、成長します。家庭(母)を捨てたような父親の生き方を否定して、自分は必ず両方を手に入れると宣言します。しかし、受験当日、事故にあった順子の病院へ向かわず、試験を受けた自分は、結局、なにかを選択することは何かを捨てることになると言った父と同じではないかと悩みます。悩むということは、父を理解し始めることです。

合格発表を伝えて告白もと急ぐ匡平。順子の方は、あくまで受験までの予備校の先生。相手は2月3日に18歳になったばかり。ここは常識的な大人の対応を…と、つい口から出たのが雅志と結婚することになっているというウソ。

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受け入れられず意気消沈する匡平に、恋敵の元先生から電話が。「何やってんだ」「部屋の片づけ(恋愛指南本「初めて恋をした日に読む本」や受験の本の整理)です」「何してんだって言ってんだ!」という山下の叱責はとても面白かった。「18歳になって、いざ告白となったら、すべてが遠くなってしまったようで」と答える匡平。

山下からの電話で、順子が雅志と結婚するというのは嘘で、本当は雅志のプロポーズを順子が断ったことを教えられた由利君は、改めて順子のもとへ走ります。順子は、今度は、涙ながらに、年の差を理由に一緒にはなれないと飽くまで常識的な大人の対応。

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でも、最後は、「変な大人でいい」という登場人物全員からの後押しと励ましを受けて、順子は自分の出した回答の間違いに気づき、東大の階段教室へ向かいます。

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「本当に14歳も年上の私でいいの?」「いいに決まってる、何べん言わせるんだ」

大人だから、自由に選べるんだ・・・という順子の決断でした。

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檀ふみさん演じる順子の母親も、順子の問いかけに、東大一族の中に嫁いできた嫁として凄いプレッシャーを感じ、それを娘に押し付けていたことにやっと気づいたと話します。私の場合は、母に気づかれないで、母を傷つけないで、自分の側で克服する=母の言いなりではない自己主張ができるようになるのは、夫と子供二人で戻って隣に家を建ててからの30代から40代にかけてでした。

親と子。親を亡くした子はその喪失を乗り越えなければならないし、立ちはだかる親を子は乗り越えなければ大人になれない。その作業は幾つになっても乗り越えるまで子は課題として抱えることになる・・・と思いながら見ました。

今日も、中学生の女の子が、いじめを苦に自殺、3年もたってから真相がわかり、教員まで加担していたということがわかったり、中学生男子が別の男の子の頭にナイフを突き刺すという事件があったり。大人の世界は一層殺伐として噓が蔓延、強者の論理で弱者は声も上げられない世相。このドラマは、若い子たちが見るドラマとして、自己の内面の成長というとても良いテーマを扱っていたドラマだったと思います。

ヤンキー先生の山下、かっこいいですね。結局、山下がキューピッド役を買って出たわけで、匡平君にとってとても”いい先生”でした。

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四角関係の行方に視線が集まるなか、父親が汚職事件に巻き込まれてしまった匡平を救うため、山下は事件の当事者である元妻の父親に掛け合い、真実を明らかにしてもらう代わりに政治家に転身して元妻と再婚することを選択。恋のバトルは雅志と匡平の一騎打ちになるかと思われたところで、匡平の東大二次試験当日に順子が交通事故に遭うという衝撃の展開が訪れた。(引用元:news.livedoor.com/article/detail/16184479/  )

というわけで、ハッピーエンドなとてもいいドラマでした。

繊細な少年の揺れ動く感情を丁寧に演じた横浜流星さん、とても印象に残る演技でした。「同情するなら金をくれ」の子役から見ていた安達祐実さん、さすが。鶴見辰吾さんの父親もよかったです。山下の中村倫也、八雲雅志の永山絢斗、皆さん好演。そしてアラサーの主役の深田恭子さん、やはり、この方は現実にはあり得ない女性を自然に演じて普通に見せる特別な女優さんです。