連帯する映画人(「しんゆり映画祭」)と「東京ドラマアウォード2019」

 先日、電話に出たら中学校の同窓生のKくんから。「元気か?」と聞かれたので、「何とか…」と答えたら、「スダチ持ってくけど要るか?」と聞かれて、「もう生ったの!欲しい」と返事。「ほな、今から行くから」と。

いつも庭で生ったレモンやゴーヤ、ユズやスダチを収穫して自転車で届けてくれます。チャイムが鳴って外へ。「ほら、これ」と差し出されたビニール袋の中には青々とした葉付きスダチがどっさり。一枝摘まみ上げたら棘にやられて「イタッ」と声を上げたら、「注意せな痛いで~」と。

 「どない?」と聞かれたので、「8月父の一周忌が終わった直後からダウン」と私。「疲れが出たんや、それが年取るということや」と。実はKくんも、今年初めて自転車で訪ねてきてくれた時、ずいぶん痩せていたので何かあったなと思っていました。元気?と聞いたら、ぼちぼちなと言っていましたが、今回も「元気でやってる?」と聞いたら「まあ、まあな」「お互い後期高齢者だからね無理はできないね」と二人で。

 「嫁さんが10年前に乳がんをやってる・・・置いて行かれたら男は何にもでけんからな」「そう、奥さん大事にしてあげて」と私からも。同い年だと本当にツーカーで分かり合えるのがしみじみと嬉しい。「ありがとう、奥さんによろしくね」「うん」で別れました。

 夕食の塩サバに4つ切りにしたスダチをタップリかけていただきましたが、母が、美味しい、美味しいと大喜びでした。少し小分けにして渡しましたが、レモン代わりにサラダにも使うのだとか。本当に実が充実していて、絞るとビックリするほどの量でたっぷりのジュースが出ます。スーパーで買ったものでは味わえない秋の味です。ありがとう!

◆ さて、川崎市の「しんゆり映画祭」が、慰安婦問題を扱った映画「主戦場」の上映を共催者の市が、「訴訟になっている作品を上映することで、市や映画祭も出演者から訴えられる可能性がある、市がかかわる映画祭で上映するのは難しいのではないか」という「懸念」を理由に、中止した件で、28日、映画祭で上映を予定していた作品を抗議のため中止するという発表がありました。上映中止の2作品の監督、脚本家、製作プロダクションの『声明文』の一部です:引用元は「shuueiのメモ」さん。

今回の上映取り止めに当たり、一番苦慮したことは、すでに前売り券を買い上映を楽しみにされている観客から映画鑑賞の機会を奪ってしまうということです。特に今回は「役者・井浦新の軌跡」という特集の中での上映です。我々にとって最も大切な俳優の一人であり、若松孝二監督という同じ師匠の薫陶を受けた井浦新氏の映画を見る機会を無くしてもいいものかと悩みました。ですが、井浦新氏は我々の抱く危機感に共鳴し、苦渋の決断に理解を示してくれました。

「声明文」の全文はこちらです:

 ◆翌日の29日には、抗議のため上映中止される2作品の監督、脚本家と、後半では急遽、会場にいた『主戦場』を配給している合同会社東風の代表も参加し、会見が開かれました。会見の記事から一部を: 

会見で白石監督は「あいちトリエンナーレ2019『表現の不自由展・その後』の中止や、(麻薬取締法違反で逮捕されたピエール瀧が出演していることから)映画『宮本から君へ』の文化庁の助成内定が取り消しと、今年に入って行政が“懸念”を示すことで表現の自由の場が失われつつある中、『主戦場』の問題が起こった。若松孝二監督ならどうするか? と考えた時、多分上映は取りやめずに映画祭に参加して苦言を呈したと思うが、亡くなって月日が経つ中、今の社会状況ならこういう判断をしたのではないか」。

会見の記事全文はコチラで:

◆ また29日の神奈川新聞が、映画監督の是枝裕和氏の舞台挨拶と報道陣に語った内容を記事にしています。

・5年前、韓国の釜山映画祭セウォル号の沈没を巡って制作された「ダイビング・ベル セウォル号の真実」というドキュメンタリー映画の上映を巡り、釜山市から圧力がかかった。上映を取り下げないなら助成金をカットすると脅しがかかった。だが、映画祭は突っぱねた。上映により予算がカットされ危機を迎えたが、事態を知った僕を含めて日本やアジア中の映画人が主催者への支持を表明するメッセージを送り、映画祭を支えた。映画祭の価値はそうやって高めていくものだ。今回しんゆり映画祭が取った判断は釜山映画祭とは真逆のものだ。なぜ釜山映画祭を教訓にできなかったのか、残念でならない。いまからでも遅くないので、どういう善後策が取れるのか主催者側は代表に任せるのではなくて、皆で考えてほしい。

主催者が行政の意向をくんで作品を選考していくようになったら映画祭は映画祭として独立しえない。そんな映画祭は尊敬されないあらゆる作品が上映されるべきだ。作品選びは映画祭側が主体性を持ってやり、尊重されるべきだ。面白いつまらないは見た人が批判すればいい。つまらなければ映画祭から人が去り、淘汰(とうた)されていくだけだ。

全文は「shuueiのメモ」さんのコチラで:

 ◎次は28日に行われた「東京ドラマアウォード2019」のニュース。

5月26日のブログでも「第100回ザテレビジョン ドラマアカデミー賞」を取り上げていて、この時の主演男優賞も菅田将暉さんで助演男優賞横浜流星さんでした。

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今回の「東京ドラマアウォード」は、『作品の質の高さだけではなく、海外発信も見据え“市場性”“商業性”を重視し、“世界に見せたい日本のドラマ”というコンセプトのもと2008年に創設。今年で12回目を迎えました。 今回は昨年7月から今年6月までに放送されたドラマの中から、日本映画テレビプロデューサー協会および、新聞、テレビ誌各社のドラマ担当、テレビ各局のプロデューサーによって選考されました。』

◎個人的に今年は横浜流星さん押しですので、こちらの記事から:
◎いつも90度以上の深々としたお辞儀をする横浜さん、今回も壇上で深いお辞儀、胸元の花が落ちて、拾って胸ポケットに差し直すという場面が。そのあとすぐトロフィーを授与されるのですが、相手は高市早苗総務大臣総務省が情報通信の管轄だからなんですね。 すぐ司会の石坂浩二さんがインタビュー。相手の目を見て緊張気味ながらまじめな受け答え。石坂さんから「時代劇をやって」と唐突なオファーも。これには「挑戦したいです」と笑顔で。いつ見ても礼儀正しくしっかりと自分の意見が言える謙虚で優しい好青年です。記事をコピーです:

  ドラマ「初めて恋をするときに読む話」("A Story to Read When You First Fall in Love")では髪を“無敵ピンク”に染め上げ、東大を目指す不良少年“ゆりゆり”こと由利匡平を演じ、大ブレイクを果たした横浜。「匡平はすごくまっすぐ。僕も学生時代は極真空手でまっすぐに突き進んでいたので、匡平の受験勉強と(主演の)深田恭子さん演じる順子への恋心のまっすぐさに共感できた」と親近感を抱いたそう。

 司会の俳優の石坂浩二から「挫折したこともある?」と尋ねられると「小さい挫折ですけど何回か」と苦労したことも明かしつつ、「戦国時代の時代劇に出てほしい」とオファーを受けると「僕もぜひ挑戦したい」と意欲的。「次は時代劇で帰ってきてほしい」と熱烈なリクエストに「はい」とぱっと花開いたような笑みをみせ、これには司会席に戻った石坂も思わず「かっこいいですね…」と惚れ惚れしていた

 この他、個人賞として主演男優賞は菅田将暉日本テレビ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』)、主演女優賞は清原果耶NHK『透明なゆりかご』)、助演女優賞黒木華日本テレビ『獣になれない私たち』)、脚本賞安達奈緒子氏(NHK透明なゆりかご』、テレビ東京きのう何食べた?』)演出賞は福田雄一氏(日本テレビ今日から俺は!!』)に決定した。

(真黒字は私が見た作品)

(写真はご本人のinstagramに投稿された写真、下の2枚も)

◎冬クールのこのドラマで発見(遭遇)!?した横浜流星さん、この由利恭平の役はオーディションで勝ち取ったもので、自分の今までの経験のすべてを出しきって演じたと言ってましたので、9~10月の間に過去の作品を見てみました。すると凄いキャリアの持ち主でした。

今年公開の映画だけで4本。それも役柄は、死期を知らされた青年を演じたかと思うと、アメリカ帰りの高校生で従弟と彼の同級生の女の子と同室で暮らし壁ドンするラブコメディ、もう一つは朝井リョウ原作の「チア男子」で柔道をやめてチア男子部結成に加わる大学1年生、そして4作目はミステリアスで控えめな高校生(この映画は未見)。全部撮影は昨年。今年のプライムタイムの連続ドラマは、冬、夏、秋と三クール出演、それも全く性格や境遇の異なるキャラクター:文科省のエリート官僚の父子家庭の一人っ子でピンク頭の不良で東大受験生、AIで犯人探しに加わる人付き合いの悪い大学院生、現在は「4分間のマリーゴールド」で家族の料理担当で学校ではいじめられている高校生。憑依型でもなくて、台本を読み込んで私生活含めて役の人物になりきる没入型のカメレオン俳優?

◎18年12月に公開された映画「青の帰り道」は、最近知ったのですが、監督があの「新聞記者」の藤井道人監督でした。16年に、出演していた、ある女優さんの息子が不祥事を起こした事件で一時は没になりかけたのを翌年、撮り直して、2年がかりで完成。群馬県前橋の高校生7人の2008年からの10年間の苦くて痛い青春を描いています。フランクフルトの映画祭にも出品されています。

この中で横浜流星さんはリョウというとんでもない青年をみずみずしく演じています。若者の自殺率増加の新聞記事がアップでとらえられたり、渋谷で政権交代のニュースが流れたり、11年の東北大震災の年に東京から前橋に帰るシーンがあったり、現実社会とリンクさせて青春群像が描かれています。

◎17年に公開された映画「キセキーあの日のソビトー」は、GReeeeNという覆面ヴォーカルグループの楽曲「キセキ」誕生秘話の映画化。医者の息子で親と対立して音楽の道を行く長男を松坂桃李、歯医者と音楽の両立をめざす弟を菅田将暉。ボーカルグループの歯医者を目指す学生仲間の一人を横浜流星さんが演じています。「グリーンボーイズ」としてタモリさんが司会する音楽番組に出演したこともあるそうです。

◎今年1月公開された「愛唄ー約束のナクヒトー」は、このGReeeeNの「愛唄」が題材の映画。「突然、自分の人生のタイムリミットを知った透(横浜流星)は、元バンドマンの旧友と透を変えた詩を書いた凪という白血病の少女(清原果耶)に出会う」。これも実話だそうですが・・・。

◎↑この共演者のお二人の菅田将暉さんと清原果耶がともにドラマの主演賞を受賞。映画の共演者3人が同じステージに並ぶというシーンが実現しました。最近の若手の男優さんは、ジャニーズ事務所ではなくて子供向けのテレビドラマシリーズ『戦隊もの』という共通の『スクール?』出身者が増えています。映画「新聞記者」やテレビの「この世界の片隅に」の松坂桃李、志尊淳、吉沢亮山崎賢人という人たちもそのようです。

2か月近く、最近の青春映画というジャンルの映画をいくつか見て、横浜流星という俳優さんがかなりのキャリアを持つ演技のしっかりした俳優さんだということがわかりました。10代のころから舞台経験もあって、前途有望。若い俳優さんたちの資質や交流関係を知ると次代を担う映画人が続々と育っているのがわかります。菅田将暉さんの受賞コメントや最近の映画「アルキメデスの大戦」の製作意図などでは、少し意識過剰なぐらいの社会と若い人への責任感?を語っていますが、悪いことではないので、あとは作品のレベルの向上が伴えば日本映画も楽しめるかな~と期待しています。

弱気になっていた私が少し元気を取り戻すきっかけに十分なってくれた2か月でした。