連ドラと「あなたの番です」最終回を見て

夏クールの連続ドラマが次々と最終章を迎えています。ブログをお休みしていた分、テレビでドラマを見る機会が増えました(録画で見たりリアルタイムだったり抜けたりですが)。ドラマやバラエティー番組だけを見ていると世の中何が起こっているのか全く分からないだろうとつくづく。だから余計に政治的関心は意識して持たなきゃと思ったりでした。平熱に戻ったらまた政治についてブログで取り上げたいと思っています。

◎月曜日の「監察医 朝顔」。東北大震災の津波で母を失った娘(上野樹里)と警察勤めの父(時任三郎)と夫(風間俊介)も同居することになり子供も生まれて。死体解剖の職場の様子、どうやってドラマになるのか…興味があります。

◎火曜日の「TWO WEEKS」、韓国ドラマのリメイクというだけあってすごい極限状態の設定がスリリングです。検事を演じている芳根京子さんがいいです。

◎金曜日はNHKのドラマ10「これは経費で落ちません」。多部未華子さんの珍しくコミカルな演技が楽しいし、石鹸会社の経理部が舞台という内容もユニーク。吹越さんの上司ぶり、営業部の重岡大毅さんの恋のアタックも楽しいです。

◎同じく金曜日の10時から「凪のお暇」。「空気は読むものではなくて吸うもの」と偽りの自分と仕事とマンション暮らしを捨てて一昔前の田舎の長屋のアパート暮らしを始めた凪を「日日是好日」で典子を演じた黒木華さんがチリチリパーマ頭で演じています。隣に住む癒しのゴンを中村倫也、元恋人で人格否定の言動の裏で実はありのままの凪を愛していた職場の上司を高橋一生。アパートの謎のお婆さんを三田佳子。凪は北海道に住む母が苦手。現代人のストレスといつの世も変わらぬ母娘の葛藤を描いていて一寸おしゃれで面白いドラマになっています。

◎7回で最終話を迎えたNHKBS時代劇「蛍草 菜々の剣」。主役の菜々を演じた清原果耶さんを見たくて。原作は葉室麟。武士の娘の菜々が両親を亡くし身分を隠して女中奉公する風早家、当主風早市之進(町田啓太)は勘定方の仕事を通して突き止めた不正を暴こうとして父の敵と同じ轟(北村有起哉)の手で江戸送りの捕らわれの身。病気で亡くなった奥様(谷村美月)との約束通り二人の幼子を野菜の行商で育てている。江戸にいる風早が罪を認めたのは、菜々の命と引き換えの轟の罠だったと知り、菜々は代替わりの午前試合に決死の仇討ちを願い出る。真剣で轟と切り結ぶなか、すきを見て父が残した不正の証拠の証文を若殿に見てほしいと直訴。家老(イッセイ尾形)のとりなしもあって若殿に受け取ってもらい長年の不正が正されることに。疑い晴れて江戸から戻った風早は、出世を断り一勘定方として子どもたちと一緒に菜々を妻に迎えて暮らしたいと・・・いいお話でした。こんな正義のお役人さんが今でてきてほしい。

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◎日曜日に最終回を迎え、自己最高視聴率を得たという「あなたの番です」。これは、春と夏2クール、半年の連ドラ。春のスタートの時点で田中圭原田知世主演というので見始めました。田中圭さんは、何年か前のNHK土曜ドラマスペシャル「負けて、勝つ ~戦後を創った男・吉田茂~」で、息子の健一を演じていました。難しい立場の息子がとても印象に残る演技でいい俳優さんだなと思っていました。最近はテレビの「おっさんずラブ」でブレイク。さもありなんと思っていましたので、楽しみにしていたのですが、内容がマンションでの交換殺人という連続殺人事件。悪趣味な内容…とすぐ見るのをやめてしまいました。

ところが、春クールの最終話でダブル主演の菜奈さん(原田知世)が殺されて、後半からはAIを駆使する大学院生二階堂忍(横浜流星)が手塚翔太(田中圭)の反撃の相棒(バディ)として投入されると聞いて俄然興味がわきました。横浜さんは、冬クールの「初めて恋をした日に読む本」、ピンク頭の不良高校生がアラサーの塾講師に「東大へ入れてくんない」と言って始まるドラマで、繊細な感情表現が的確にできる素敵な俳優さんだと思っていましたので期待大です。今、主演の青春映画「いなくなれ、群青」も公開されています。NHKあさイチのゲストで出演した時、19歳で戦隊芝居から抜け出せなくて落ち込み悩んで学んだワークショップの先生が取材に答えて「やっとみんなが流星をみつけてくれた」と。これからも良い作品に出会って多様な青年像を見せてもらえるのが楽しみです。

さて、その後半の最終回、一室での主役三人+(AI菜奈の声とスマホで写される菜奈の最期)の4人のお芝居は見ごたえがありました。それ以外の部分や『衝撃の』車いすのエンディングは消化不良を起こすような後味の悪さでしたが、あの手この手で視聴率稼ぎの工夫に精を出している番組のようなので、その辺は無視です。

AIに膨大な情報を打ち込んで得た結論では、一連の快楽殺人の犯人(黒幕)は大学生黒島沙和(西野七瀬)。どうしても信じられない二階堂は自分で直接本人に確かめに行く。このストレートさは意外。連続殺人が騒がれている怪しいマンションに家賃が安いからと引っ越してきた二階堂は人とのコミュニケーションはまるでダメ、栄養ゼリーを口にして人の作った料理は食べないという機械オタクでしたが、AIで犯人捜しを手伝ってほしいと手塚に相棒扱いされ、無理やり鍋料理をふるまわれたり、人と接すること、人を愛することや愛し方を教わって徐々に人間性を獲得。犯人捜しですぐ感情的になる手塚の暴走を止めるためAI菜奈を作って手塚に渡したり、黒島を愛し始めた二階堂の人間としての成長ぶりが表れています。すべてを受け入れると約束して話を聞いた結果、黒島には自首してほしいが追い詰めると自殺しかねないと考えて、手塚を殺すという黒島の罠に偽装協力? なんで?二階堂自身の言葉でその理由を「AIが人の感情や思い込みを排除して客観的に分析すればするほど、僕は僕の人としての感情を優先したくなって…すみません」。二階堂の本心はどちらにも殺させたくないし死なせたくない。というわけで、黒島の「私を殺してほしい」にも顔をゆがめて塩化カリウムの投与を「無理だよ」と拒否、怒り狂う手塚に「黒島さんは殺されたいから挑発してるんです!」と押し止めるも振り払われて、あとは呆然と。。。

西野さんの抑揚のない人形のようなセリフ回しに、本当はサイコパスの殺人鬼ってこんなかもしれないと思ったり、手塚の愛と自分の殺人愛は『同じじゃん!』と主張する黒島に哀れを感じたり。まっすぐな手塚は「同じじゃない!  愛ってのはそんなもんじゃない。本当の愛は愛する人の命を奪ったりはしない!」と言い切ります。淡々と時には嬉々として過去の殺人を語る黒島に、おぞましさと絶望の涙を流し、怒りに狂う手塚の「こんなやつでも殺さないっでって言うの?」に「はい、初めて愛した人なんです」と涙ながらに答える二階堂。

AI菜奈ちゃんの「怒ってるの?」という問いかけに「怒っってるよっ!」と答えた手塚は縛られた両手で握ったダーツを振りかざし振り下ろす。恐る恐る目を開けた二階堂が見たのは・・・両腕の中に黒島を抱え、ダーツの代わりに握ったスマホのAI菜奈ちゃんの『怒っても抱きしめる手塚翔太』という囁きに「さすが菜奈ちゃん、ブル(当たり )だよ、ブル」と答える手塚でした。

「ごめんね、黒島ちゃんをハグしちゃった。このまま警察へ連れていくね」と出ていこうとする手塚。我に返った二階堂が思わず「黒島さん」と呼びかけると、黒島は「二人でひまわり畑にいるときは一瞬このまま普通になれるかと思った、ありがとう」。首を横に振りむせび泣いて見送る二階堂。

人間とAIの関係。冷静で感情抜きの判断を下すAIと、その結果、感情のやり場に戸惑う人間。激情にかられる凶行を思いとどまらせるAI菜奈ちゃん。「怒っても抱きしめる」という情報をAIに与えたのも人間。こんな人間とAIの関係が現実になる日がくるのかしら・・・。一人白いタキシードに身を包み教会で結婚式を挙げる手塚に、顕われた二階堂が「ご結婚おめでとうございます」と声をかける。それぞれ愛する人を失った翔太とどーやんの二人が鍋をつつくシーンで終わればよかったのですが・・・重い扉一枚閉じてしまえば隣で殺人事件があっても凶暴なワニを飼っていても分からないマンションライフの恐怖も描かれていました。

◎半年のドラマと言えばNHKの朝ドラ「なつぞら」。日本のアニメーションの歴史をたどるような内容ですが、重なるように京都アニメーションの火災事件が起こったのは不思議な偶然。戦後の「鐘の鳴る丘」のような戦災孤児のは三兄妹(岡田将生、清原果耶)の一人なつ(広瀬すず)が北海道で暮らすことから始まったドラマですが、なつの幼馴染で早世した画家であり農民でもある山田天陽(吉沢亮)には実在のモデルがいたと知りました。どんな絵だったのか見てみたいと思ったら詳しく紹介されていました:

◎お昼の連ドラ、「安らぎの刻~道」。倉本聰脚本の「安らぎの郷」の続きですが、菊村(石坂浩二)が遺作の脚本として書き綴る根来公平(風間俊介)一家としの(清野菜名)の挿入ドラマが戦争(戦前、戦中、戦後も?)を真正面に描いていて素晴らしい。こちらは1年間。

◎最後に、こちらも一年間の長丁場、連続ドラマの王様、NHK大河ドラマ「いだてん~オリムピック噺~」は、いよいよ佳境。前回の東京五輪招致運動の裏話(ムッソリーニへの直談判)や”おもてなし”など、見ていて私も黒島さんみたいに「今も同じじゃん!」と思いました。おそらくは来年の東京五輪を控えて国民みんなでオリンピックを寿ぐ意図で発注されたであろう脚本をこんなに見事に歴史と問題を暴いて見せてドラマに仕立て上げる宮藤官九郎、さすがです。面白いドラマを作り上げるテクニックと志はダントツ異次元。

ナショナリズムや政治とどうしても切り離せない日本のオリンピック。日系移民の問題をアメリカの人種問題や移民問題の一部として描いてしまう客観性。前回では日韓併合の時代を表すようにベルリンで金メダルを取ったマラソン孫基禎氏(柳美里さんの祖父の親友)の写真も出ていましたね。2・26事件を経て、これからいよいよ戦争へまっしぐらです。落語の部分はいらないよねなんて言っていましたが、こうなっては許せますというか必要だったんですね、この構造が。どうやって着地するのかワクワクして見届けたいと思っています。