「理性へ 彼女は静かに訴える」(多和田葉子)と「メリケル首相の演説」と「満足しているワケ」

昨日は金曜デモの日、いつもの「特別な1日」さんによりますと、官邸前抗議デモは5月1日(金)まで当面お休みとのことです。今回のブログのタイトルは:

◆手元に今週火曜日の朝日新聞(14日)の「文化・文藝」欄の切り抜きがあります。

多和田葉子のベルリン通信」です。

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タイトルは「理性へ 彼女は静かに訴える」。

「彼女」とはドイツのメルケル首相のことです。多和田葉子さんは、この記事による紹介では:「1960年、東京生まれ。小説家、詩人。ベルリン在住。1月に朝日症受賞。5月に長編『星に仄めかされて』(講談社)を刊行予定。『地球にちりばめられて』に続く3部作の第2巻となる。」

◆最後の段落を写真で。「ポピュリストが支持を失い、メルケル首相が信頼を取り戻した」とあります:

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◆ドイツ版「緊急事態宣言 」ともいうべき演説をメルケル首相がテレビで行ったのは3月18日でした。この演説は『メルケル首相の15年間の任期の中で、最大の人気を集めた』具体的な経済支援対策の提案が行われる前に、あらゆる職種の人に、大きな信頼感を与えたと言えるのではないだろうか。』と言われています:

◆長い演説から一部を:

・まずこの場を借りて、医師、そして看護施設、病院などで働くすべての方にお礼を申し上げます。あなた方は最前線で戦っています。この感染の深刻な経過を最初に見ています。毎日、新しい感染者に奉仕し、人々のためにそこにいてくれるのです。あなた方の仕事は素晴らしいことであり、心から感謝します。

・また、普段、感謝の言葉を述べることのなかった人々に対しても、この場を借りてお礼を申し上げます。スーパーのレジを打つ方々、スーパーの棚に商品を補充される方々は、この時期、大変なお仕事を担われています。私たち国民のためにお店を開けていてくださって、ありがとうございます。

・私たちは民主国家にいます。強制されることなく、知識を共有し、協力しあって生活しています。これは歴史的な課題であり、協力なしでは達成できません。

・私たちがこの危機を克服できることは間違いありません。しかし、いったいどれほどの犠牲者となるのでしょう?どれだけの愛する人々を失うことになるのでしょう?それは大部分が今後の私たちにかかってきています。今、断固として対応しなければなりません。現在の制限を受け入れ、お互いに助け合いましょう。

・このような状況は初めてですが、私たちは心から理性を持って行動することで人命が助けられることを示さなければなりません。例外なしに、一人一人が私たちすべてに関わってくるのです。

メルケル首相はベルリンの壁が存在した時代の東ドイツ出身で、自由の有難味を人一倍解っている方です。演説の次のくだりは真に迫って聞く人の胸を打ったことでしょう:

旅行や移動の自由を苦労して勝ち取った私のような人間にとって(注※メルケル首相は東独出身)、そのような制限は絶対に必要な場合にのみ正当化されます。民主主義国家においては、そういった制限は簡単に行われるべきではなく、一時的なものでなくてはなりません今現在、人命を救うため、これは避けられないことなのです。

◆その後、メルケル首相の感染が疑われ3月22日から自宅隔離に入っていました。次のスピーチは復帰後のものです。クーリエジャポンの紹介文を後につけて: 

内田樹さんがリツイート

takagi.toshiyuki @takagi_toshi 4月10日

誰もこういうこと日本の政府では言わない

”私がみなさんにお約束できるのは、連邦政府を頼ってくださいということです。私も昼夜問わず、どうすればみなさんの健康を守りながら、元の生活を戻すことができるかを考えています。”

メルケル首相、自宅隔離から復活のスピーチ

 【全訳】メルケル首相、自宅隔離から復活のスピーチ「“その後”は必ず訪れます」 | 「おかえり!ドイツのおっかさん

『Text by COURRiER Japon

イギリスではボリス・ジョンソン首相が新型コロナウイルスに感染し、入院。リーダー不在の中、この危機を乗り切れるのか、英国国民は不安でいっぱいだ。

そんな中、あの人が自宅隔離を終了し戻って来たそう、“ドイツのおっかさん”アンゲラ・メルケル首相だ。3月22日、首相に予防接種をした医師の新型コロナウイルス感染が判明したため、自宅隔離に入ったが、検査で陰性となり戻ってきた。そして、テレビを通してイースター休暇を前にした国民に語りかけた。その全文をお届けする。』

  ◆4月16日の「東久留米日記」さん(https://higasi-kurumeda.hatenablog.com/)

もドイツを取り上げてトップ記事でした:

Sお @clarissabloom 4月14日

 今朝のニュースでドイツ在住音楽家の方が補償をすぐに受け取れた話をしてらして、よかったですなぁと思いましたが、ドイツがフリーランスや芸術家に手厚いのは「ストレス溜めた画学生が別の道を選んだらどうなるか結果を知ってるからでしょ」という身も蓋もないアメリカンジョークが頭から離れない

◆↑「ストレスを溜めた画学生」ってヒットラーのことですね。「東久留米日記」さんがそのあとの記事の中で紹介しているのがこの記事です。「結び」を引用して: 

 ドイツ
連立政権に対する満足度は、2017年10月に発足した今期の政権では最高の63%となった。また、コロナ禍の危機管理に対しては、満足している、非常に満足している、という答えが72%という結果になっている。」日本と対照的な、政府と市民の底力

全ての人を救う

「ドイツはすごい、それに比べて日本は……」というような、単純な比較は意味がないと思う。

こういった支援、対処が生まれる中には、感染の広がりや国境を接する国での惨状を見ての危機感の違い、政治制度や歴史、それぞれの産業の貢献度など、様々な背景がある。

ベルリンの即時支援を実際に目の当たりにし、メルケル首相の演説などを聞いていると、国を、州を率いる政治家たちが、「ドイツで暮らす人たち全て」を、可能な限り救おう」という姿勢が、あらゆる形でアピールされ、それが信頼を勝ち得ている大きな要因になっているという実感がある。

市民——あえて、国民ではなく、ドイツに暮らす全ての人という意味を込めて、メルケル首相がテレビ演説で使った言葉を選びたい——が、主権者として、政策を決める政治の仕組み、「民主主義」が、しっかりと機能している。これが、ドイツの満足度の高さの理由ではないだろうか。 

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箕面の山の中で咲くツバキとミツバツツジの写真は夫のカメラから)