天覧演奏会

18日(木)、夜7時開演の演奏会で6時半開場。少し前にホール前に到着。[
久しぶりのサントリーホールです。3年前の「バラの騎士」は渋谷のオーチャードホールでした。
遅い昼食だったので夕食はとらず、ホールでクッキーとコーヒーを。座席は右ウィングの奥の前列、真ん中より壁よりです。
サントリーは一階席しか経験がなくて、2階席は初めて、それも袖ですが、大阪のシンフォニーホールと違って上下の違和感が余り無くアリーナ風で見渡せますのでいい感じです。開演時間直前に舞台の上から客席に向かって一条のライトが光りだしました。おかしいな〜と思っているとざわめきが。隣のEさんが、ヒョットして皇族のどなたか…と、サスガ!! 美智子皇后天皇陛下がご鑑賞です。私の席からは前に乗り出されてご挨拶される美智子様の姿が少し見えます。
拍手とざわめきが沈んでから内田光子さんとウエルザーメスト氏が登場。お二人を見上げて胸に手を当ててのお辞儀。内田さんは深々と。初めて見る内田さん、華奢な姿でしたが、演奏は違います。ベートーヴェンの4番のピアノ協奏曲。その演奏は、繊細でも強靭、音色も美しく素晴らしい。出だしはピアノの弱音でオーケストラをリードする曲ですが、ソロのピアノの聞かせどころがタップリあります。
あとで手渡されたプログラムの解説で知ったのですが、この曲は1808年12月22日、ベートーヴェンのピアノでウィーンで初演されたとか。耳の疾患が進みだして、花形ピアニストのキャリアにこの曲で終止符を打ち、以後作曲に専心するという転換点の曲。存分にピアノの技術をアピールするベートーヴェン白鳥の歌・ピアニストとしてのお別れの挨拶の曲だと思うと納得できます。指揮者のメストさんはじめオケの全員が内田さんの演奏をじっと聞いている、モチロン聴衆の私たちも息を飲むような思いで聞き込んでいるという時間が何度もありました。付け上手、乗せ上手のメストさんらしいオケの演奏も、付かず離れず、影になり、日向になり、と、なかなか楽しい協奏曲でした。 長〜い拍手が続いて何回も指揮者のメスト氏を従えて内田さんが現れます。拍手が収まるとアナウンスがあって、天皇陛下と皇后様はここでお帰りになるとか。私は休憩時間に入るので席から立って前に出ていましたのでお二人が立ち上がって客席に手を振っておられるのがよく見えました。右手の白い壁の向こうがお二人の席でした。
いよいよ後半、ベートーヴェン交響曲第3番変ホ長調「英雄」の演奏です。
聞きなれたメインテーマのメロディーが流れます。始まりました! 
「運命」がメスト氏のベートーヴェン初体験でしたので、あれから18年。少し老成された音楽かな・・・とか思っていましたが、いい意味で変わらぬベートーヴェンでした。爽快で疾走する音楽。第2楽章の葬送の有名な旋律は胸に染み入るようですし、弦の感触と管楽器の響きが糾われて多彩! 
この「英雄」は絶対王政を倒したナポレオンを称えたもの、ところがナポレオン自身が皇帝に即位し人民の支配者となってしまった結末にベートーヴェンは激怒し、ナポレオンへの献辞を破り捨てたという逸話があります。プログラムの解説を書いている藤田茂さんは「だからこそ《英雄》交響曲は特定の個人を英雄視しない普遍的なメッセージなりえたのではなかったか」と書いています。
この辺りの事までは私には汲み取れませんが、充分楽しめた2曲の演奏会でした。終わって隣のホテルで遅い夕食を。
いい音楽に美味しい食事、思いがけない天覧の演奏会ともなって、
贅沢な時間を過ごしました。(休憩時間に)