坂本龍一「脱原発」インタビュー(週刊文春)

政治の世界は毎日相変わらず何かしら菅首相と閣僚の間のチグハグが紙面を賑わして情けないことです。
その中で、22日の日経朝刊2面政治欄の囲み記事に<「脱原発依存」に海外も不信の目>と題して、海外の反応についてというより、書き出しのアメリカの反応が気になる様子。13日の記者会見での「脱原発依存」と、21日の参院予算委員会での原発の海外輸出見直し(転換示唆)について、「海外も不信を強めている」と書いています。<アメリカのナイズ国務副長官は20日、訪米中の高橋千秋外務副大臣に首相の「脱原発依存」発言の説明を求めた。 会談は「米側が真意を知りたがっていた」(日米外交筋)ことから急遽セット。副大臣は「時期を明示したのではなく、今すぐではない」と釈明に追われた>とか。
息子が買ってきた「週刊文春」、なでしこジャパン澤穂希さんの子供の頃の可愛い写真が載っていましたが、
読み甲斐のある記事は坂本龍一の「私はなぜ『脱原発』を訴えるのか」の独占インタビューです。
4頁に渡る記事です。横書きの見出しには「日本の政治家は官僚や財界の言いなりで原発を再開したい。だが、使用済み燃料を生産し続けるのは正常な人間のすることではない。狂っています。」
本文の見出しと取材記者(飯塚真紀子=在米ジャーナリスト。近著に「9・11の標的をつくった男」)のリードを並べると、
「経済至上主義に対する疑問」(音楽家の坂本がなぜ自然エネルギーについて語るのか。実は、坂本は20年近く環境問題に取組んでおり、その間、一貫して脱原発を訴えてきた。震災から4ヶ月。ニューヨークのオフィスで話を聞いた。)
「枝野長官のことは信じていない」(坂本が環境問題に興味を持ち始めたきっかけは、今から19年前にさかのぼる。92年、リオ・デ・ジャネイロで開かれた環境サミットでの温暖化の議論に刺激を受けたという=最後の注へ)
原発システムはフン詰まり」 (青森県下北半島にある六ヶ所村の再処理工場に足を運んだ坂本は、そこで忘れられない光景を目の当たりにした。)本文より:「六ヶ所村の再処理工場のそばには、工場の安全性を訴える広報目的の施設がありました。まるで市民を洗脳するためにあるような施設です。そこを訪れた僕は、何十台もの風力発電が再処理工場のすぐ隣に並んでいるのを目にしました。何とも皮肉な光景でした。原子力発電には大きな欠陥があります。トイレに喩えるなら、”放射能のゴミ”というウンコをうまく処理できず、フン詰まりを起こしているといえる。現状でさえ、どんどんゴミが溜まっている状態なので、いくら原発を推進しようとしても、このフン詰まりを解消しないかぎり、これ以上原発を増やせるはずがありません。」
最後の見出しは「『物言わぬ日本人』に疑問」です。その本文より:

 「今は、国民が自分の思いを声高に訴えるべき時だと思います。でも、現実には、どんな風に声をあげたらいいのか、わからない人が多いのも事実。国民性と関係があるのかもしれませんが、日本人はギリギリまで我慢を続け、もう限界だと感じた時に命を捨ててでも一揆を起こすような風土がある。
 それでも、僕が学生だった70年代までは、毎週のようにデモが起きていた。あの頃の日本は、若者が主張する社会でした。それがいつのまにか、管理された、誰も主張しようとしない社会になってしまった。
 今は、危機の時代なんですから、国民がそんなにおとなしくしていていいはずがない。何しろ自分たちの命がかかっているんです。
 母親や子供たちの命がかかっているんです。何十年も甘い汁を吸って来た原子力村の人たちにハッキリ「ノー」を突きつける最大の機会です。国民みんなで声を上げれば、日本のエネルギー政策を大きく変えることは絶対にできます。

面白いのは坂本インタビューの「つづき」があることです。
坂本氏は原発の致命的な欠陥を指摘し、政治家の「容認大合唱」を痛烈批判。そこで、国会議員に本音を聞いてみた。」とアンケート調査の結果が載っています。「衆議院(479名)、参議院(242名)の前国会議員にアンケート調査を行い、124名から回答を得た」(回答数は少ないようですが、何かの参考になるかも・・・党派別の回答数は民主52、自民34、社民9、みんな8、公明7、共産5、その他9・・・蛙の足し算)

「あなたは「原発」をどうしますか? 「衆参」国会議員721人・緊急アンケート

質問1<菅首相の「脱原発」会見をどう評価しますか?>
         全体のほぼ2/3の84人が「評価しない」。
         民主の17名が「評価する」、30名が「評価しない」。自民は全員が「評価しない」。
質問2<「脱原発」(日本で原発が1基も稼働していない状態)を目指すべきだと思いますか?>
         逆転してほぼ2/3の83名が「脱原発」を目指すべき。
         民主の36名が「目指すべき」、6名が「べきでない」。自民は、13名が「目指すべき」、14名が「べきでない」
         民主・自民以外の全ての党の全員が「目指すべき」。
質問3<「目指すべき」と答えた人は、何時ごろまでを目処(めど)にすべきだと思いますか?>
         「いますぐ」6%、「5年以内」5%、「10年以内」15%、「それ以外」42%、「その他」32%
質問4<「脱原発」解散についてどう思いますか?>
         全体の78%が「すべきではない」、「すべき」は7%。
         民主の44名が「すべきでない」、3名が「すべき」。
         自民は「すべきでない」が28名、「すべき」が2名。           「週刊文春」7月28日号より

坂本龍一氏が環境問題に興味を持つ切っ掛けになったという「92年のリオの環境サミット」とは、1月3日のブログで取り上げた(http://d.hatena.ne.jp/cangael/20110103/1294023215)カナダの少女セヴァンさんのスピーチがあったあの会議のことです。セヴァンさんの「あなたが世界を変える日」の帯にキャッチコピーを書いた一人が坂本龍一さんです。

あなたが世界を変える日―12歳の少女が環境サミットで語った伝説のスピーチ

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