◎「Various Topics」さんのブログでこの丸山真男の再放送と第4回の放送を知り、録画し、先に司馬遼太郎の回を見ました。
このお二人ちょっとした共通点があります。亡くなられた年が、司馬さんは1996年の2月12日、今は「菜の花忌」になっています。丸山真男さんが亡くなられたのが同じ年の敗戦の日・8月15日です。司馬さんは大正12年(1923年)生まれで享年72歳。丸山真男さんは大正3年(1914年)生まれで82歳。およそ10年の年齢差だったということです。
ところで、「知の巨人」シリーズ第四回「司馬遼太郎」の最後は司馬遼太郎さんの遺言書でもある「21世紀の君たちへ」が取り上げられました。
「いたわり」
「他人の痛みを感じること」
やさしさと言いかえてもいい
これらは似たようなことばである
この三つのことばは元々一つの根から出ているのである
根といっても本能ではない
だから 私たちは訓練をしてもそれを身につけねばならないのである
いつの時代になっても人間が生きていく上で
欠かすことができない心がまえというものである
「国際社会の中で明治以後、よくここまでやってきた。だけど太平洋戦争、ものすごいミスがありました。アジアの諸国にずいぶん迷惑をかけて、結局は後々まで、日本人は、ものを考える日本人は、少しずつ引け目を持って生きていかなければいけない。それだけのことをやってしまった。
相手の痛み、相手の国の文化・歴史をよく知って、自分がその国で生まれたがごとく、いろんな事情を自分に身につまされて感じる神経、そういう神経の人々がたくさん日本人に出てくることによってしか、日本は生きていけないんじゃないか。」
◎これはまるで丸山真男の「他者感覚」そのものではありませんか。
二人の大正生まれの作家と学者が軍隊経験を通して敗戦を経験。そこからあるべき日本の姿を考え思索を深めて多数の著作を生み出しながら到達した考えが、「他者感覚」であり「他人の痛みを感じる神経」を、意識して日々、不断の努力と訓練で獲得していくしかないという結論です。
◎同じく「Various Topics」さんで教えていただいたのですが、NHKでこの番組を担当した渡辺考氏(日本放送協会大型企画センター)が、阪南大学のあべのハルカスキャンパスで講演した時の記録があります。演題は「ドキュメンタリーの役割―マスメディアの社会的責任」です。その中で渡辺氏が「他者感覚」について語った内容が紹介されています。
渡辺氏は「これまで、ETV特集やNHKスペシャルで、田中正造、大西巨人、(火野葦平も)、韓国・朝鮮人BC級戦犯、東京電力福島第一原発爆破事故後の放射能汚染などを取りあげた、すぐれたドキュメンタリー番組を手がけてこられました」と紹介されています。
敗戦直後、丸山は、日本社会の持つ一局面を「無責任の体系」(『現代政治の思想と行動』)と呼びましたが、彼が一貫して民主主義の重要性を説いたことについて、現在進行中の取材で気づいたことがあるそうです。東京大学で教鞭を執る丸山が、地方の「庶民大学」でも講師を務め、横につながることの重要さを一般市民に教えるとともに、丸山もそこで学びながら、「生きたシステム」としての草の根の民主化に関わっていたのです。「無責任の体系」を放置することなく、民主主義を多数派の暴力にしないため少数者の声に耳を傾ける「他者感覚」を重視する議論も、そうした関わりのなかから生まれたといえるでしょう。
☆全文は阪南大学のコチラで:http://www.hannan-u.ac.jp/gakujutsu/copy_of_copy_of_st9plj000000jyku.html
◎さて、最後に、この番組を知らせてくださったブログ「Various Topics」さんの7月20日の記事についてです。この日のタイトルは「『NHK知の巨人たちー丸山真男と政治学者たち』と民主主義」:http://afternoon-tea-club.blog.ocn.ne.jp/blog/2014/07/nhk_9936.html)でした。おかげさまで見逃さずに済みました。ありがとうございました。