「BPO委員長、首相らの批判に反論 政治介入にNO」

(「写真の額装と光明寺イチョウ」に次いで2つ目です)

◎NHK「クローズアップ現代」の過剰演出(やらせ)問題に対する意見書で、放送倫理・番組向上機構BPO)の放送倫理検証委員会は、高市早苗総務相がNHKに文書による厳重注意をしたことなどについて「政府が個別番組の内容に介入することは許されない」などと厳しく批判しましたが、これに対して安倍首相はじめ、菅官房長官、谷垣幹事長までが反論しています。
(参照:「安倍首相、菅官房長官、谷垣幹事長、こぞってBPOに反論」http://jxd12569and.cocolog-nifty.com/raihu/2015/11/bop-aa8d.html
今回はNHKに対する総務大臣の文書による露骨な介入ですが、それまでにも、こんなことがありました。以下朝日デジタルの記事から引用です:

 報道を巡る権力側の「威圧」ともとれる言動が続いている
昨年11月には自民党筆頭副幹事長らが在京テレビ局に選挙報道の「公平中立」を要請
今年3月には衆院予算委員会安倍晋三首相が自らの発言について「圧力と考える人は世の中にいない」と語った。

4月には自民党の情報通信戦略調査会がNHKとテレビ朝日の幹部から事情聴取。終了後、同調査会の川崎二郎会長は「BPOはきちんと動いて欲しい」「(政府には)テレビ局に対する停波(放送停止)の権限まである」と発言した。

6月にあった自民党議員の勉強会「文化芸術懇話会」でも参加した議員による「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番」などの発言が問題視された。
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 〈放送倫理・番組向上機構BPO)〉 放送に関わる問題を放送界で自主的に解決するため、NHKと民放が設立した第三者機関。放送における言論・表現の自由を確保しながら、視聴者からの苦情や意見を受けて番組内容を審査し放送局に注文を伝える。番組の向上や虚偽の疑いのある放送に関して議論する放送倫理検証委員会、苦情申し立てを受けて審理をする放送人権委員会、青少年に対する放送や番組のあり方を審議する青少年委員会で構成される。

 放送倫理検証委員会には川端委員長のほか、委員長代行に映画監督の是枝裕和氏ら、委員に精神科医香山リカ氏、ジャーナリストの斎藤貴男氏らがいる。
(引用元:http://digital.asahi.com/articles/ASHC66F9PHC6UCLV00M.html?rm=572

●今週の12日(木)、BPOの川端委員長が朝日新聞のインタビューに答えた内容が記事になりました。政府側の反論を受けて改めて「政治介入は許されない」と明確に。内容をコピーしました。(引用元:http://digital.asahi.com/articles/ASHCD5J3KHCDUTIL02P.html?rm=580


BPO委員長、首相らの批判に反論 政治介入に「NO」



 放送倫理・番組向上機構BPO放送倫理検証委員会の川端和治(よしはる)委員長は12日、朝日新聞のインタビューに応じ、「放送法を根拠にした放送への政治介入は認められない」と改めて主張した。NHK「クローズアップ現代」の放送倫理違反を指摘した委員会の意見書で、政府や自民党を批判したことに対し、安倍晋三首相や高市早苗総務相らから反論が相次いでいた。


 安倍首相や高市総務相放送法の規定行政処分の根拠になる「法規範」だとして、BPOの意見書を批判した。一方、BPOは、放送法は放送事業者が自らを律する「倫理規範だとして対立している。


 川端委員長は「放送法が倫理規範であるということは、ほとんどの法律学者が認めている」と説明。一方で、「元々(放送免許の許認可権を持つ)総務省、旧郵政省が行政指導をしてきたのは放送法に法規範性があるという考え方からだから、立場の違いがあることは十分承知していた」とした。


 「倫理規範」と解釈する理由について、法が成立した経緯をあげる。「戦前の日本の言論統制に対する反省から、政治権力が直接規制を加えることがあれば、表現の自由を保障する日本の憲法のもとでは問題があるという意識は皆持っていた」。1950年に放送法が国会に上程された際の趣旨説明をあげ、「『放送番組に対する検閲、監督等は一切行わないと述べていた」と説明する。


 その後、放送法は改正されたが、基本構造は変わっていないという。2004年の最高裁判決で4条について「放送の自律性の保障の理念を踏まえた上で、真実性の保障の理念を具体化するための規定」と示されていると指摘した。



 BPOは2009年、総務省BPOの結論を待たずにTBSの番組に厳重注意したことに対し、委員長談話で「懸念」を表明した。その後6年間は行政指導が「パタッと止まった」という。今回の行政指導に「談話を境に出なくなったのに、また出たので非常に懸念を持った。BPOに任せて見守ろうという立場に戻ってほしい」と話す。


 一方、総務相の厳重注意は4月。即座に反論しなかったことについては「委員会の役割は、あくまでも具体的な放送番組について意見を述べること」と答えた。


 自民党の事情聴取について安倍首相が「(NHKの)予算を国会で承認する国会議員が事実を議論するのは当然」と反論したことには、「私がコメントする問題ではない」としつつも、「番組の内容によって予算変えるんですかね」と皮肉った。さらに、政府・自民党が介入する場合の問題点を「放送の現場の意欲をそぎ、萎縮させてしまう」と改めて主張した。


 自民党BPOも呼ばれたらどうするのか。「実際に起きた時にならないと決められない。ただ我々は、政党にいちいち説明をして回るような機関ではないと基本的に考えている」


 BPOは、法律家、ルポライター、漫画家など専門性を持った委員が集まる。川端委員長は弁護士で企業コンプライアンスなどに詳しく、07年の放送倫理検証委員会発足以来委員長を務めてきた。「委員に共通するのは、日本の表現の自由を守ろうという思い辛口の評論家としての意見を述べて、放送倫理を向上させる総務省の代行をしているわけではない。政治権力からの事実上の圧力で放送局が萎縮して、国民が本当に知りたい情報が伝わらなくならないように、と考えている」と語った。


■法解釈、政府や自民と対立



 BPOが政府・自民党を批判したことについて、上智大の音好宏教授(メディア論)は「放送の自主自律を守るBPOとしては当然のこと」と話す。


 BPOと政府・自民党放送法をどう位置づけるかで意見が対立しているが、「放送法の4条にある『報道は事実をまげないですること』などの放送番組基準は倫理規範だというのが定説」と説明する。もし放送の内容を制約する定めだとすると、表現の自由を保障する憲法21条に違反することになるからだ


 一方で国も、放送法を根拠に行政処分ができるとの立場をとりつつ、番組内容への介入には慎重だった。1972年、当時の広瀬正雄郵政相は参院逓信委員会で番組への行政指導について「効果の少ないものであり、またいろいろ弊害を伴う」と答弁している


 政治の介入が強まるきっかけとなったのが93年の「椿(つばき)問題」。テレビ朝日の報道局長が非自民政権が生まれる報道をするよう指示したとされ、放送免許の不交付が検討された。以後、厳重注意など放送局への行政処分が増えていった。


 NHKと民放は2003年、政治介入を避けるため放送倫理上の問題に自主的に取り組むBPOを設立07年には放送局への「調査権」などを付与した放送倫理検証委員会を新設し、機能を強化した。



 ただ、BPO頼みでいいのかという声もある。青山学院大の大石泰彦教授(メディア倫理)は「意見書の指摘は評価できるが、表現の自由の主体であるはずのテレビ局自体が、不当な介入に対し抵抗しているのか疑問が残る。BPOという用心棒の陰に隠れてしまってはいないか。表現の自由を守る役割までBPOに外注されては困る」と指摘する。(星賀亨弘、佐藤美鈴)

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 〈放送法〉 テレビ・ラジオ放送の事業者や番組などについて定めた法律で、1950年にできた。第1条で「不偏不党」「自律」「表現の自由」「健全な民主主義の発達に資する」という基本原則をうたう。第4条では「放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない」として、「公安及び善良な風俗を害しないこと」「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」の4点を定めている。

(写真は12日、京都へ行った日の紫紺ノボタンの花、鴨川の紅葉、京都国立博物館琳派展ポスター、そして能勢の畑と刈り取りの済んだ田んぼがひこばえが生えてもう緑色。)