吉田秀和氏の遺言”そこに自分の考えはあるか”

朝のNHK気象予報士のおじさんのギャグ、「オリンピックは(ヘイ)ジュードで終わりましたが、日本は既に30度を超えています」、一寸間があって笑えました。(この件、後ほどツイッターで大盛り上がりだったそう。なかには、気象予報士の南さんが「ヘイ、30度!」と言ったなんてのも。)
朝起きてテレビを付けたらロンドン五輪の開会式のライブ中継中でした。
参加国の入場行進時に国名プラカードの横で子どもが抱えていた銅の花びらが参加国の数だけの炎になって、それが立ち上がって一つの聖火になるという演出でした。
先ほどのコーヒータイムで聞くと、母は5時前から起きて中継を見たんだそうです。私は今、テレビの再放送を見ながら、パソコン打ったり、戸棚を片付けたりです。開会宣言の壇上の背景に緑が見えるというのはなかなかいいものですね。

7月23日(月)のクローズアップ現代は先ごろ98歳で亡くなられた吉田秀和さんを取り上げた
「”そこに自分の考えはあるか" 音楽評論家・吉田秀和の遺言」
でした。
トップでホロヴィッツの次にショパンコンクールブーニンの映像に重なって初来日時の吉田氏の言葉「若いし、青臭いね」が出たのは、元ファンの一人としては一寸胸疼(うず)く?ショットでした。
ホロヴィッツの演奏に対する「傷のある骨董」発言やグールドのバッハの演奏の評価などは世の中の大勢に一石を投じ流れを変えるほどの力のある言葉でした。
私の吉田秀和氏との出会いは、1985年の年末からお正月にかけてブーニンショパンの演奏を聞いてから、家にあった吉田秀和氏の本を読み、「名曲の楽しみ」の録音テープを数か月聞きこんだ1986年の早春の頃でした。
吉田さんの本を読んで次はこれを聞いてみよう、今度はあれを聞いて同じように感じるか試してみようとか、そんな風にしてクラシック音楽を楽しむようになりました。私にとっては、吉田秀和氏は、豊かな知識で音楽鑑賞の楽しさを言葉で教えて下さった方でした。それは書き言葉でもあり、話し言葉でもあり、吉田秀和氏という人物そのものでした。

その吉田氏が、戦前内務省で検閲のようなお仕事をされていたことを初めて知りました。若き官僚として音楽に関する翻訳の仕事をしていた吉田氏は、昭和20年、戦況激化に伴って、内閣情報局に転属を命じられる。新聞・出版などの検閲を行い、戦争遂行への反対論を弾圧・統制する仕事です。戦後、自分の書きたいことを仕事にしたいと思われるバネのようなものが戦争中にあったのだということを初めて知りました。
ブーニンに関するファンとのやり取りを体験した私たちは、吉田秀和氏が自分の発した言葉に責任を持つ人だということを良く知っています。自分の発した言葉の与えた影響を知ったからには打っちゃっておけない人、そういうことに繊細な方、言葉の持つ力をよく御存知だし、発するからには責任を取るという方です(蛙ブログ「ブーニン吉田秀和氏」5月31〜6月1日)
その方が、3・11以後の日本の政府や東電や学者たちの言葉にショックを受けられて、「この国は病んでいる」と深く考え込まれたという。くり返される「想定外」という言葉に、「日本人にはまだ自分で考える力が備わっていなかった」と悔やみ続けたそうです。

吉田秀和氏には、もう少し長生きしていただいて、官邸前の金曜日のデモに集う人々のそれぞれの言葉を聞いていただきたかったと思います。
東大や有名私大出身のいわゆるエリートたち政治家や東電、関電の役員、原子力ムラの住人の学者たちの言葉の何という無責任極まりない言葉の数々。
責任逃れの中身のない言葉。責任など感じもしない、取る気もない人たちの右往左往する言葉。
それに引き替え、自分の日常の中でデモに参加する決意を固めた人たちの言葉は、吉田氏の求めた「自分の考え」の止むに止まれぬ表出です。

 吉田秀和氏の娘さんが父の言葉として仰った「いつも自分の考えを自分の言葉で言いなさい」。「そこに自分の考えはあるか」はそういうことだと思います。
これからも、「自分の考えはあるか?」「自分の言葉で言えるか?」を心がけていきたいと思います。

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◎お薦めブログ「ランスケダイアリー」(福島・広野=「原発作業の前線基地」)の今を伝えています:http://blog.goo.ne.jp/toshiaki1982/e/1193430641b407241d94e0f928e9ef35
◎もう一つのおススメはWBC不参加について乙武さんの意見です:http://news.livedoor.com/article/detail/6781076/

(縦四枚の写真は今日の「みのおまつり」の準備を整えた昨日の芦原公園です)