玉川:”憲法がそこで死んだ”と言っても意味がよくわからないと思うんですけど。それってどういう意味なんですか?
矢部:そもそも、他国との約束である条約っていうのは国内法より上。日米安保条約のような条約を結んだら普通の法律は一部変更されたり特別法ができたりするんですけれども、そういう条約によって国民の人権が侵害されたら、その時は憲法が機能してこれ(人権侵害)に歯止めをかけないといけない。これが普通の法治国家なんです。
ところが、砂川事件の最高裁判決によって、安保に関する条約は憲法判断しないとしたわけですから、安保に関する条約は日本という国の憲法の体系よりも安保に関する法体系の方が強い(上位)という形がこれで確定してしまうわけです。
玉川:だから憲法はあるんだけど働いていない状態が・・・
矢部:機能不全に陥ってしまったということです。
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スタジオの玉川:これもなるほど、と思ったところです。
条約と国内法では、一般的に法学者の間では、条約の方が上。しかし、憲法は最高法規なのでトップに来る。だから、安保条約で民家の上を軍用機がバンバン飛ぶことは法律違反であっても、条約優先なのであり得る。しかし、人権侵害される時は憲法が守ってくれる、変えさせることができる、というのが一般的に言われる立憲主義。
ところが、日本では砂川裁判で裁判所が憲法判断しないと決めたわけです。ということは、(憲法が)無いのと一緒だから、国内法より安保条約が上となった。たとえ人権が侵害されたとしても、もう止める方法がない。これでは憲法が死んでいるのと一緒でしょ、というのが矢部さんの話。
憲法 > 安保を中心としたアメリカとの条約群(安保体系) > 日本の法律(憲法以外の国内法)
(上位法) ↓ (下位法)
(憲法判断なし>) 安保体系 > 日本の国内法(憲法を含む)
玉川:「でも私身近に関係ないわ」という人もいるかもしれない。今の状態で悪いんですか?
(ここで蛙の注)今日の項目:(大きな円形チャート)
1)ついに憲法改定の動きが。安倍首相「私たちは憲法について本気で考えている」
2)日本国憲法は本当に生きている? 憲法は機能停止状態。
3)憲法はいつ死んだ? 1959年12月16日です。
4)私たちの生活に影響はあるの?
(4つ目に行きます)
玉川:憲法が機能停止にいるとしか思えない今の状態でも、多くの日本人は「でも別に私たちの生活に影響ないわ」という人が結構多いと思うんですけど。
矢部:例えば沖縄を中心に基地による騒音被害はものすごくあるわけですよ。爆音は本当に健康に影響を与えるぐらい大きい音がしますから。それを裁判でやっても健康被害は認めますけれど米軍機の飛行差し止めはしないわけです。そういう矛盾した判決が出てしまう。
ナレーション:これまで在日米軍基地に於いて横田や厚木基地で騒音訴訟が繰り返されてきました。国は騒音による被害は認めたものの米軍機の夜間、早朝の飛行差し止めなどについては全ての訴えを却下してきた。その背後には砂川事件の判例があるのです。さらに矢部氏は”現状の日本は占領下となんら変わらない”と主張する。
玉川:国連軍はできなかったわけですよね。で、米軍に代わりにやってもらおううということになったんですが、それで「何か問題があるんですか?」という人もいると思うんですが。
矢部:一言で言うと、それによって占領状態が継続したわけですね、軍事的にね。
玉川:未だに占領状態と一緒だということですか。それはちょっと大げさじゃないですか?
矢部:それはちっとも大げさじゃないです。というのは、アメリカ側のものすごくしっかりした公文書というのがあって、
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ナレーション:戦後70年、日本は未だ占領下にあると矢部氏は指摘します。その”証拠”がアメリカの公文書に残されていると言います。
玉川:70年前に日本が戦争に負けて米軍に占領されるという状況があったわけですよね。本当に過去の話と言えるのか、これ如何ですか?
日米間に交わした公文書に詳しいジャーナリストの吉田敏浩氏:決して過去の話じゃないと思います。
米軍が自由に訓練をしたり基地を使っている、と、そうした事実上の治外法権と言える特権をずっと占領期と同じように保持している。
玉川:それはなぜわかるんですか?
吉田:アメリカで30年たって情報開示された解禁秘密文書の中に書かれているからです。
玉川:どいう風なことが書いてあるんですか?
吉田:それは1957年の在日アメリカ大使館からアメリカの国務省への報告なんですが、新しい基地を造る時にどのように使うかという要件はアメリカ側が決める、そしてアメリカは自由に日本の全国どこでも訓練ができるというようなことが保障されている内容が書かれているんですね。
写真:これが(1957年2月14日付)駐日米大使館から米国務省への”極秘”報告書「在日米軍基地に関する報告」(国際問題研究者・新原昭治氏、提供)
なかには、「安保条約の下では、日本政府と如何なる相談もなしに米軍を使うことができる」「行政協定の下では新しい基地について条件を決める権利も現在基地を保持し続ける権利も米国の判断にゆだねられている」と記されている。
更にこの約束は1960年の安保改定を越え今現在も生き残っていると言います。
吉田:60年安保改定の時は変えたんですが、その裏で当時の岸政権とアメリカの政権の間で、占領時代と同じ、旧安保条約とも同じアメリカ軍の基地の自由使用を=自由に活動するという特権を継続するという日米の密約が実は結ばれていたんですね。
ナレーション:日米間の密約の存在を示す、アメリカで公開されている”もう一つの秘密文書”とはーー
1960年に安保条約が改定された際、取り交わされたこの書類には、”これまでのアメリカの特権的地位は変わることなく続く”と占領期の権利を継続する密約が書かれている。つまり実質的には戦後すぐの占領下の状況と何も変わっていないことを表している。
玉川:憲法が今生きていないことは理解できたんですが、どういう不利益が日本人に今あり、これからあり得るんですか?
矢部:安保ですとか原子力ですとか、アメリカと条約を結んでいるジャンルに関しては、全く憲法が機能しないと。そのジャンルで国民の人権が侵害されても自分たちはそれをとどめる方法がもうないと。
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スタジオの玉川さんのまとめとゲストの方たちと
玉川:というのが現実だと。占領期と同じ状況が今でも権利的には続いていると。
えっ?という風に思われるかもしれないけど、どこの独立国の首都圏の上空の管制が他国の軍隊にすべて握られているという国がありますかって話なんですね。それ一つとってみても分かるんじゃないか、一番中枢ですよ、首都圏の、その上空は米軍が今でも管制やってるんですよ。
で、「今日のむすび」ですけど、憲法がないがしろにされているのは、憲法が生きていないからだったのではないか、と改めて思います。拡大解釈、拡大解釈と今までずっと安全保障分野でずっとしてきたわけです。さらに去年も拡大解釈が行われたわけですけれども、それは、結局、最高裁含めて憲法を要するに機能停止させてきたんだ、ま、国全体がそうやってるんじゃないかってことです。
宮田佳代子:VTRでもありましたけど、基地問題とか原発の問題についての国の対処の仕方を見てると、日本国憲法の大原則みたいなところは守られているのかな〜?と。国の暴走を止める機能が働いているのかなと疑問に思うところがあるんですね。だとすると、もしかしたら改憲という方法が日本人の手に憲法を取り戻すという方法があるのかもしれないと一寸思いました、けど、自民党の今改憲しようとしている理由にそれを感じたことは一回もないです。
赤江:憲法は、さっきから仰っているように為政者から自分たちの人権を守る最後の砦、武器っていう認識をもたないと、それを奪われたり、変えたり、どういう風に変えるかは、すごく重要。ところが、憲法は生まれたときから何となく”ある”ものと思ってしまうのは危ないな〜と。
羽鳥:最初・・・(聞き取れず)・・・過激かな〜と思ったんですが、完全に機能不全だな〜と今の見て分かりましたね。
松尾貴史:高度な政治判断をしないと最高裁が言ってしまったということが、このままOKという状態が続くとしたら、この先、何かとんでもないことがあっても、それすら許される、目をつぶりますよ、ということになりかねないですよね。
玉川:なので、今年は憲法の問題、それからまた、最高裁の問題も併せて取り上げて行こうと思う今日のそもそも総研でした。
むすび:「憲法が”生きていない”のが問題では?」 (おわり)