雨のシンフォニーホールで「クロイツェル」を


誕生日の前日、チョン・キョンファさんのヴァイオリン・リサイタルを聞きにシンフォニーホールへ出かけることに。ベートーベンの「春」と、何よりも「クロイツェル」が聞きたくて、誕生日プレゼント?にと夫にねだって、二人分のチケットを今年初めに取って、この日を楽しみにしていました。
ここ数日お天気が続き、北側のチューリップも蕾が出そろいました。ところが、晴天は続かず、気温は暖かいものの雨の予報。
お昼に、夫は俳句教室に出かける母を千里まで送り、2時過ぎに、私は父をお茶に呼んで二人で三時のお茶に。その後、少し早目に梅田へ。

グランフロントへ未だ行ったことがないという私のために先ずそちらを目指して。
大阪駅の陸橋でグランフロントのビルへ通じる通路から梅田スカイビルが。こんな角度で見えるのは初めてという事で写真を。
渡ってしまうと時間がかかりそうなので、伊勢丹が撤退した後、専門店が入ったというルクアへ。
若向きばかりなので、シニアはと探すと、「アダルト」と表示。ザァ〜と眺めてから、大阪駅の時計台の広場から向い側の大丸へ。
コチラはまだ少し、大人し目で、落ち着いた感じですが、カジュアルファッションですね、全体に。カッコつけない格好が新しいんですね、な〜んて全く、お上りさんの見学みたいでした。
雨も激しくなってきたので、早めに環状線に乗って、先に食事を済ませてと駅に向かいました。帰りの切符も先に買って駅の外へ。適当なお店を探しながらホールへ向かって歩き出しました。シンフォニーホールのチケット持参の方は飲み物一杯無料サービスという魚料理を出す和食レストランへ入ることに。メニューに「福島本店」と書いてあって、福島県のお店? 福島のどこ? なんて思っていたら、夫が「大阪の、ここ、福島」と云うので、ハッとしました。そうだ、駅は「福島!」。4年前、読売新聞社に電話したとき、「大阪の線量が高いのは大阪にも福島があるから」と悪い冗談を言われたのを思い出しました。

そのメニューを見ながら、カンパチのお造り、桜エビのかき揚げ、白身の魚の焼き物、ハマグリとワカメの酒蒸しと、最後に炙りサバの棒寿司を注文。二人分で5000円に少しおつりが。お得感一杯で美味しい腹ごしらえが出来ました。6時開場なので、丁度良い時間に出ることに。外に出ると傘をさしてホールに向かう列が出来ていて、私たちも加わることに。
シンフォニーホールは経営者が変わってから初めてです。エスカレーター前にホールの小物を売るお店が出来たり、座ってお茶が飲めるテーブルが新たに増えていたり、トイレが少し変わっていたり、でした。
演奏は、休憩を挟んで後半がやはり盛り上がりました。ベートーヴェンの春は、オヤッと思うほどヴァイオリンが控え目でした。これが、指の故障で5年中断後の2010年の復帰で演奏スタイルが変わったという演奏なのか…とちょっと残念なくらい。ところが後半、ウェーベルンの演奏はとても面白く聞けました。プログラム(招へい元のプリマヴェーラ・アーツ社の)を読むと、200年以上前のべートーベンと現代を繋ぐ100年前の音楽が必要だったという考えです。
そしていよいよお目当てのクロイツェル。焦燥感溢れるリズムが刻まれて…切迫した情感の躍動する激しいクロイツェルです。テレビで偶々見たこの曲を描いた映像作品で初めてこの曲を知りました。20年以上前の海外作品だったと思います。ビゼーアルルの女とか、他にもあったようですが、音楽を理解するのに白黒の映像を借りて、というより、セリフのないドラマと音楽が、言葉以上に巧みにドラマの人物を描き出していました。後で知ったことですが、ドラマは、トルストイが音楽に触発されて書いたという「クロイツェル・ソナタ」でした。
リサイタルは、圧倒的な演奏で終わりました。拍手に応えてアンコール三曲。張り出してあった曲名によると、バッハのヴァイオリンソナタ4番からラルゴ、エルガーの愛のあいさつ、最後はブラームスハンガリー舞曲1番。良かったです! 
ピアノはケヴィン・ケナー。聞いた名前だと思ったら、ブーニンが優勝した次のショパンコンクールで最高位だった方です(11回のブーニン以降、2000年の14回まで優勝者なし)。背が高くて、少し猫背で、デビュー当時の老けたブーニンさんに少し似ていて、あの頃を思い出しました。贅沢な一夜でした。
さて今日から、71歳。
90代の両親が隣りにいますので、
まだまだ、子ども? の71歳。
一日一日を大切に過ごしたいと思っています。
昨日の母の俳句から。二句目は席題が「内」:


   耳たぶに触れゆく風のチューリップ
  
   ひと言が その内ふた言 つばめ来る