「春を背負って」

沖縄から帰っても相変わらず風邪の症状と微熱が続いている状態。それでも結核や肺炎の心配がなく食欲はあるというので気にしないことにしました。今週になってやっと体温計に平熱が出るようになりました。水曜日、一カ月ぶりのヨーガに。冷房除けに長袖シャツを用意して出かけました。出がけに夫がお昼はみんなと一緒でいいよ、と言ってくれましたので、ランチについていくことに。
いつものように話題はいっぱい。箕面の火事のニュースの原因はわかったのかしら、知りたいね〜という話も。宝塚から修学旅行のお土産を仲良しのおばあちゃんに届けに来て一泊したお孫さんとおばあちゃんが亡くなった民家全焼のニュース。その後、出火原因についてのニュースがありません。80歳の若さ?(92歳の母はそう言います)で、直火の昔と違って電気の世の中でどうして火事になったんだろう?とみんな不思議に思っています。中には、「80のおばあちゃんはいいよ〜孫が可哀想や〜」という人がいて、私は隣の80歳に近い70代の先輩に、「80歳はいいんだって〜一寸ひどいよね〜」と言いましたら、その先輩、「私ら、消えなあかんは〜」でした。言った方、いつも年長者には優しい方なんですが……。
ところで、私は、焼身自殺のこととNHKが放送しなかったことを話題にしました。どなたか、焼身自殺は原発に反対してだと思っておられたようでした。その前に、水素自動車の話が出て、環境に配慮した製品がどんどん開発されていくのに、どうしていまだに原発にしがみつくのか、電気会社は…という話になりました。一人の方が、これくらいの進み方でみんなの理解が深まっていくのが良いという意見でしたので、私は、政治がリーダーシップをとって方向を示していけば、脱原発の方向が加速できるのに…と言ったのですが、いや、みんなが理解するには時間がかかる。一度には無理とおっしゃるので、「あきらめたらアカンね」で引き下がりました。
それで、集団的自衛権の話なんですが、話がそれて新聞の話に。朝日から毎日、今度は産経にしたという方が。一同ビックリ! 広告に載る週刊誌の内容がまず違うという話から、とにかく、新聞を鵜呑みにしてはイケナイという話になり、私は「NHKもよ」と。60代から70代7人のお喋りでした。ウエイターさんが足しげく来てテーブルを片付け始めたのに気づいた隣の先輩さんが、そろそろかな…とおっしゃるので、帰り支度をすることに。
ところで、沖縄から帰ってすぐの先週、夫が映画に行こうと。さすがにまだ疲れが残っているし微熱も高めで、その日は夫が一人で行くことに。昨日、もう一度同じ映画を見に行く夫と「春を背負って」を見てきました。
いい映画でした。描かれているのは美しい山々と厳しい自然と温かな人間ドラマと、見終わるまで濃密で目の離せない時間でした。
立山は夫が加賀市の実家を経由して車で何度も出かけた山です。ケーブルのところに車を置いて登ります。一度、私も一緒に行って、加賀市の夫の母(80代後半だった)を誘って室堂の山小屋で泊まったことがありました。夜は山小屋を抜け出して三人で仰向けに寝転んで夜空を見上げて金銀砂子の天の川の美しいのに見とれました。涼しい山小屋で鍋料理がでて、その時写した義母の笑顔の写真があります。その後すぐ認知症が進み、施設に入って数年。義母が亡くなった時、義弟があの時の写真を遺影に使わせてもらうと電話がありました。お葬式に使われた遺影と同じ写真のミニサイズを私がもらって、今は仏壇のない我が家のタンスの飾り棚の中、義父の写真の隣に置いています。
その立山、隣の両親とも夫の車で4人で出かけています。同じようにケーブル下に車を置いて、ケーブルとバスで終点まで行き、室堂のホテルに泊まりました。閉山になる直前の季節でした。義母といったときは夏毛のオコジョのぬいぐるみを買ったので、両親と一緒の時には冬毛の白いオコジョを手に入れて、今、飾り棚には2匹のオコジョが並んでいます。
映画を見た私が思い出したのは、2回の室堂での宿泊でした。夫は小さい声で、鹿島槍、とか剣(つるぎ)とか教えてくれました。登った人には格別の思いがある山々のはずで、その立山を舞台にした「ホームドラマ」(木村監督の言葉)でした。観終わった後、珍しく夫がパンフレットを買いましたので、その中の写真と好演だった3人の主役のインタビュー記事の一部を書き移してみます。


松山ケンイチ:「人間にはいろいろな生き方がありますけれども、この映画はどんな生き方をしている人の背中も押してくれるような温かさがあると思います。劇中に”徒労”という言葉が出てきますが、その無駄な骨折りもネガティブに捉えず、ポジティブに受け止めればいいんだと。僕自身これまでへこんだり失敗したこともありますけれど、それも全部宝物になると考えればポジティブに生きていける。そういう生きる勇気を与えてくれる映画だと思います。」
蒼井優:「私は監督の脳の中を少し覗かせてもらえるような作品が好きなんです。この映画は木村さんしかできない映画だと思ったし、私自身もやっていて最初から最後まで木村さんを信じ切ることができたので、大好きな作品です。また私たちが現場で感じていた映画を作っていることの充実感や幸福感が、そのまま映っている作品だと思います。」
豊川悦司:「僕らが言うセリフに、木村監督が言いたいことが全部含まれていると思います。しかもそのメッセージはすごくシンプルなことだと思うんですよ。人が生きることの辛さや苦しさは、自分が考えているよりも実はちっぽけなことなんだよって。そう思えば、また生きることを頑張れるでしょうというね。僕にはゴロさんがいう『「人生は徒労の連続だ』という想いがよくわかるし、ではどうすればいいかというと、一歩一歩自分のペースで歩いていけばいいんだよという。そういう監督の人生哲学を作品を観て感じました。」
木村大作監督:「人の温かさや爽やかさに触れながら、自分の居場所を求めて生きてほしい」(右上の監督さんの写真の言葉)